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□ 日本医科歯科大学付属病院・小児外科病棟・ナースステーション | |
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「え!? ホントに?」 美代子、顔が綻ぶ。 フテくされた康子が頷く。 | |
| 美代子 | 「ホントに代わってくれるの!?」 |
| 康 子 | 「(ブスッと)だって、相手がいなくなっちゃったんだもん」 |
| 美代子 | 「(ニコニコと)そっか、康子ちゃん、フラれちゃったのか」 |
| 康 子 | 「人の不幸を喜ばないで下さい!」 |
| 美代子 | 「ゴメンゴメン。康子ちゃんフるなんてサイテーね!」 |
| 康 子 | 「サイテーサイアク!」 |
| 美代子 | 「早くいい彼見つけなさい」 |
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と言いつつ、どうしても顔が綻んでしまう。 | |
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□ 同・廊下 | |
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美代子、公衆電話で電話している。 | |
| 電話の声 | 「はい、お電話代わりました、野口ですが」 |
| 美代子 | 「(ニコニコ)私」 |
| 雄介の声 | 「! はい。どう言ったご用件でしょう」 |
| 美代子 | 「ゴメンね、会社に電話して........」 |
| 雄介の声 | 「いえ、かまいませんが」 |
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婦長が通りかかる。 美代子、ペコッと頭を下げて背中を向ける。 婦長、ジロッと美代子を一瞥して通り過ぎてゆく。 | |
| 雄介の声 | 「もしもし?」 |
| 美代子 | 「(ニコニコ)14日の勤務、代わってもらえた!」 |
| 雄介の声 | 「........」 |
| 美代子 | 「ねえ、13日の夜はどうする? ホテルに泊まるの?」 |
| 雄介の声 | 「(曖昧に)そうですね........」 |
| 美代子 | 「予約してるの?」 |
| 雄介の声 | 「いや、その........」 |
| 美代子 | 「今から取れるかなあ。最近はバレンタインデーも盛り上がっちゃってるから。調べてみるね」 |
| 雄介の声 | 「........」 |
| 美代子 | 「もしもし?」 |
| 雄介の声 | 「申し訳ありません。その件につきましては後ほど」 |
| 美代子 | 「あ、ゴメン。夜電話するから」 |
| 雄介の声 | 「こちらからもいたしますので........」 |
| 美代子 | 「じゃあね。楽しみィ」 |
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□ 同・ナースステーション | |
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美代子、ニコニコと戻ってくる。 | |
| あゆみ | 「大木さん、電話」 |
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と、受話器を差し出す。 婦長、ジロッと美代子を一瞥。 | |
| 美代子 | 「(気にしつつ、小声で)私だけど、ねえ、あのホテルにしない? 名前何だっけ、ホラ去年........」 |
| 電話の声 | 「もしもーし、誰かと間違えてない?」 |
| 美代子 | 「え?」 |
| 電話の声 | 「中西だよ」 |
| 美代子 | 「あ........どうも(と、赤面する)」 |
| 中西の声 | 「実はさ........」 |
| 美代子 | 「(婦長の目が気になって)あのう、今会社ですか?」 |
| 中西の声 | 「そうだけど」 |
| 美代子 | 「こちらから掛け直します。失礼します」 |
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と、電話を切る。 | |
| 婦 長 | 「電話ばかりしてないで仕事して下さい」 |
| 美代子 | 「(小さくなって)........はい」 |
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□ 札幌・昭和乳業・営業部フロア | |
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雄介、ため息をついている。 電話が鳴る。 | |
| 雄 介 | 「(出て)はい、昭和乳業です」 |
| 電話の声 | 「野口さん、いらっしゃいますか?」 |
| 雄 介 | 「(怪訝に)私ですが」 |
| 電話の声 | 「古川です。ホクエーの受付の」 |
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と、言いつつ、有本をチラッ。 | |
| 梢の声 | 「今日、お会い出来ませんか?」 |
| 雄 介 | 「え?」 |
| 梢の声 | 「ご相談があるんです」 |
| 雄 介 | 「(怪訝に)........はあ」 |
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□ 東京・喫茶店・店内 | |
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美代子が楽しそうにお茶を飲んでいる。 中西が入って来て美代子を見つける。 美代子、笑顔で会釈する。 | |
| 中 西 | 「遅くなってゴメン」 |
| 美代子 | 「いえ........」 |
| 中 西 | 「(その笑顔に)いいこと、あった?」 |
| 美代子 | 「会えるんです、久し振りに。14日、じゃなくて13日の夜に........」 |
| 中 西 | 「それでホテルか、去年行った........」 |
| 美代子 | 「(真ッ赤になって)........」 |
| 中 西 | 「彼、わざわざ会社休んで来るんだ」 |
| 美代子 | 「........はい」 |
| 中 西 | 「バレンタインデーだったら美代子ちゃんがチョコレート持って北海道に行った方がいいんじゃない?」 |
| 美代子 | 「私の誕生日なんです」 |
| 中 西 | 「あ、だから彼が」 |
| 美代子 | 「はい」 |
| 中 西 | 「いくつになるの?」 |
| 美代子 | 「22です」 |
| 中 西 | 「“22歳の別れ”って歌、あったね」 |
| 美代子 | 「(睨んで)ちょっと中西さん」 |
| 中 西 | 「ゴメンゴメン」 |
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美代子、機嫌がよくすぐニコニコ。 | |
| 中 西 | 「(そんな美代子を見て)........」 |
| 美代子 | 「あ........この前千秋に会ったんですけど、どっちなんですか? 私たちがうまく行かないって賭けたのは........」 |
| 中 西 | 「それによって左右されるわけ?」 |
| 美代子 | 「そういうわけじゃないですけど」 |
| 中 西 | 「(曖昧に)さあ、どっちでしょうねえ」 |
| 美代子 | 「(首を竦め)ま、いいですけど」 |
| 中 西 | 「じゃ、食事に行こう」 |
| 美代子 | 「あのう........何か相談があったんじゃないんですか?」 |
| 中 西 | 「いや、別に」 |
| 美代子 | 「だって、千秋のことで話があるって........」 |
| 中 西 | 「美代子ちゃんを呼び出す口実だよ」 |
| 美代子 | 「ひどい。心配して飛んできたのに」 |
| 中 西 | 「心は北海道に飛んでるように見えるけど」 |
| 美代子 | 「それはともかく。食事なら食事って誘ってくれれば」 |
| 中 西 | 「来てくれた?」 |
| 美代子 | 「ごめんなさい、今日はちょっと........」 |
| 中 西 | 「そういうと思ったから千秋ちゃんの名前を出したんだ」 |
| 美代子 | 「また今度誘って下さい」 |
| 中 西 | 「ま、食事はどうでもいいんだけど」 |
| 美代子 | 「?」 |
| 中 西 | 「(瞶めて)ボクの用事は、キミを口説くことだから」 |
| 美代子 | 「−−。からかうのはやめて下さい」 |
| 中 西 | 「(瞶めて)本気だよ。キミに初めて会った時に恋の予感を感じた」 |
| 美代子 | 「私は感じませんでした」 |
| 中 西 | 「(瞶めて)感じたことに気付いてないだけなんだ」 |
| 美代子 | 「(苦笑して)強引な展開ですね」 |
| 中 西 | 「(瞶めて)そのうち、きっと気付く」 |
| 美代子 | 「無理だと思いますけど」 |
| 中 西 | 「(瞶めて)気付いたら電話をほしい」 |
| 美代子 | 「(ちょっとドキドキ)やめて下さいよ。中西さんに電話できなくなっちゃう」 |
| 中 西 | 「(瞶めて)電話したいって気持ちがあるってことは、何かを感じたってことだよ」 |
| 美代子 | 「ち、違いますよ、中西さん、千秋の友だちだから........」 |
| 中 西 | 「(微笑で瞶めている)........」 |
| 美代子 | 「(その視線から逃れるように)じゃあもう電話しません」 |
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と、席を立ち、店を出てゆく。 中西、動じず、微笑で見送っている。 | |
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□ 札幌・バー“ハーフダイム”・店内 | |
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雄介と梢が会っている。 梢、深刻な表情である。 | |
| 雄 介 | 「(戸惑っていて)何? 相談って........」 |
| 梢 | 「(迷うが、意を決して)あのう........有本さんのことなんですけど........どう思いますか?」 |
| 雄 介 | 「........どう、って?」 |
| 梢 | 「私に色々言ってたこと........」 |
| 雄 介 | 「........俺、まだ有本さんのことよく知らないから無責任なこと言えないけど、古川さんのことを好きなのはたしかだよね」 |
| 梢 | 「........迷惑なんです」 |
| 雄 介 | 「−−!」 |
| 梢 | 「私、有本さんとお付き合いする気、ないんです」 |
| 雄 介 | 「........有本さんが本気だったら?」 |
| 梢 | 「(首を振る)........」 |
| 雄 介 | 「他に好きな人がいるんだ」 |
| 梢 | 「いえ、今は........」 |
| 雄 介 | 「だったら........」 |
| 梢 | 「(首を振り)転勤で札幌に来た人はダメなんです」 |
| 雄 介 | 「........?」 |
| 梢 | 「........」 |
| 雄 介 | 「........」 |
| 梢 | 「........私が前に付き合ってた人、東京から来た人でした」 |
| 雄 介 | 「........」 |
| 梢 | 「私、本気でその人のこと、好きになりました。その人も私のこと、本気で........そう思ってたんですけど、東京の本社に戻ることになったら突然別れようって........それで色々調べてみたら、結婚を前提に付き合ってる彼女がいたんです。私のことは最初から遊びだったんです」 |
| 雄 介 | 「........ひどい奴だな」 |
| 梢 | 「ですから、もう........」 |
| 雄 介 | 「........判った。有本さんにはうまく言っとくよ」 |
| 梢 | 「お願いします」 |
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と、頭を下げる。 | |
| 雄 介 | 「........前の奴とはちゃんと別れたの?」 |
| 梢 | 「(一瞬躊躇があり)........はい」 |
| 雄 介 | 「(気持ち、察して)........」 |
| 梢 | 「(なるべく明るく)野口さんは札幌で浮気なんかしないで、東京の彼女のこと、大切にしてあげて下さいね」 |
| 雄 介 | 「........ウ、ウン」 |
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梢の淋しそうな微笑。 | |
| 雄 介 | 「........」 |
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□ 看護婦寮・美代子の部屋 | |
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壁に、カレンダー兼スケジュール表が貼ってある。2月14日に○印が、7日まで×印が付けられている。 美代子、鼻唄混じりに楽しそうにマジックを取り、8日に×印を書き込む。 テーブルの上に、チョコレートの包みが置いてある。 | |
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□ 昭和乳業・札幌支社・営業部フロア | |
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若林部長が顔をしかめて−− 「なんだって?」 | |
| 雄 介 | 「ですから、来週の出張、メンバーから外して下さい」 |
| 若林部長 | 「で、有給とるってか?」 |
| 雄 介 | 「........はい」 |
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有本、浩子たち、二人のやりとりを見ている。 | |
| 若林部長 | 「で? 東京に帰りたい」 |
| 雄 介 | 「前からの約束がありますので........」 |
| 若林部長 | 「女か」 |
| 雄 介 | 「(迷うが)........はい」 |
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若林部長、ビックリ。 | |
| 浩 子 | 「(軽蔑の笑いで)恋人に会うために仕事をキャンセルする気なの?」 |
| 雄 介 | 「........」 |
| 若林部長 | 「(雄介に)バレンタインデーってそんなに大事か?」 |
| 雄 介 | 「それだけじゃないんです」 |
| 若林部長 | 「野口くんの売り込みも目的の一つなんだよ、今度の工場行きは」 |
| 有 本 | 「........」 |
| 若林部長 | 「キミには期待してるんだ。これ以上失望させないでくれ」 |
| 雄 介 | 「........」 |
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□ 看護婦寮・玄関ロビー | |
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「え!?」 電話に出ていた美代子が絶句する。 | |
| 美代子 | 「(驚きの中で)帰れないって........飛行機の切符、取れなかったの?」 |
| 雄介の声 | 「(苦しそうに)得意先連れて、□□の工場に行かなくちゃいけないんだ」 |
| 美代子 | 「(泣きそうに)........楽しみにしてたのに」 |
| 雄介の声 | 「........ゴメン」 |
| 美代子 | 「(落胆して)........」 |
| 雄介の声 | 「もしもし?」 |
| 美代子 | 「........淋しい」 |
| 雄介の声 | 「美代子........」 |
| 美代子 | 「(涙が溢れて)淋しくて死んじゃうから........」 |
| 雄介の声 | 「困らせないでよ。俺だって帰りたいんだから........」 |
| 美代子 | 「(泣いて)........」 |
| 雄介の声 | 「泣くなよ」 |
| 美代子 | 「(フクれて)勝手でしょ」 |
| 雄介の声 | 「美代子」 |
| 美代子 | 「(泣いて)........」 |
| 雄介の声 | 「いい気持ちしないだろ? 電話口で泣かれたら」 |
| 美代子 | 「笑えばいいの? 雄介が帰ってこなくたって平気、って笑ってれば満足!?」 |
| 雄介の声 | 「近いうちになんとか時間作って帰るから」 |
| 美代子 | 「........いつ?」 |
| 雄介の声 | 「........まだ判らないけど、4月になったら必ず........」 |
| 美代子 | 「(ア然と)4月!?」 |
| 雄介の声 | 「年度末の決算で忙しくなると思うんだ。もちろん、それまでに時間が取れたら........」 |
| 美代子 | 「知らない!」 |
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ガチャン! と電話を切ってしまう。 | |
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□ 東京の街 | |
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冷たい風が吹いている。 通勤のサラリーマンたちがコートの襟を立てて歩いてゆく。 | |
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□ 看護婦寮・美代子の部屋 | |
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−−朝。 美代子、ベッドでゴロゴロしている。 | |
| 美代子 | 「........最悪」 |
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壁のスケジュール表、13日まで×印が付けられている。 美代子、起き上がる気力がない。 | |
| 美代子 | 「(呟く)........来ない........なんて言って........突然来て驚かそうなんて........」 |
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ドアを見る。 | |
| 美代子 | 「(ため息で)........来るわけないか」 |
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と−−ドアにノックの音。 美代子、! | |
| 声 | 「大木さん、電話ですよ!」 |
| 美代子 | 「はい!」 |
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弾かれたように起き上がる。 | |
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□ 同・玄関ロビー | |
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美代子、階段を駈け降りてきて、受話器を取る。 | |
| 美代子 | 「もしもし!」 |
| 電話の声 | 「あ、お母さん」 |
| 美代子 | 「(ガクッ!)........なんだ」 |
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□ 美代子の実家・居間 | |
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瑞穂が電話している。 | |
| 瑞 穂 | 「あら、随分なご挨拶ね。せっかく電話したのに」 |
| 美代子の声 | 「ごめんなさい」 |
| 瑞 穂 | 「(優しく)美代子、誕生日、おめでとう」 |
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□ 看護婦寮・玄関ロビー | |
| 美代子 | 「........ありがとう」 |
| 瑞穂の声 | 「ヒマがあったら帰ってらっしゃい」 |
| 美代子 | 「........ウン」 |
| 瑞穂の声 | 「プレゼント、用意して待ってるわ」 |
| 美代子 | 「........ウン。帰る時は電話するから........じゃあね」 |
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と、電話を切る。 | |
| 美代子 | 「(呟く)........“どこでもドア”が欲しい」 |
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美代子、受話器を取り上げ、ダイヤルする。 0、1、1........。 | |
| 電話の声 | 「はい、昭和乳業です」 |
| 美代子 | 「あのう、野口さん、いらっしゃいますか?」 |
| 電話の声 | 「野口は出張中で、明日出社の予定ですが」 |
| 美代子 | 「休みを取ってるわけじゃないんですね」 |
| 女子社員の声 | 「はい、出張ですが」 |
| 美代子 | 「........どうも」 |
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と、切る。 | |
| 美代子 | 「(ため息で)........」 |
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再びダイヤルする。 | |
| 電話の声 | 「はい、□□です」 |
| 美代子 | 「すいません、浅川さんをお願いします」 |
| 電話の声 | 「浅川は本日お休みをいただいておりますが」 |
| 美代子 | 「........休みですか?」 |
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□ 雅子のマンション・中 | |
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雅子、出掛ける準備をしながら−− | |
| 雅 子 | 「(ウキウキと)そうなのよ、今から大阪に行くの」 |
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普段着の美代子が羨ましそうに膝小僧を抱えて見ている。 | |
| 雅 子 | 「こんな日に働いてるの、バカバカしいよね」 |
| 美代子 | 「........いいなあ、簡単に休めて」 |
| 雅 子 | 「美代子も休んでるじゃない」 |
| 美代子 | 「........」 |
| 雅 子 | 「やっぱり、バレンタインデーに独りでいるのって淋しすぎるよね。野口さんによろしく。もうすぐ来ンでしょ?」 |
| 雅 子 | 「........」 |
| 雅 子 | 「なるべく早い新幹線に乗りたいから........」 |
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と、美代子を追い立てるようにして玄関へ向かう。 | |
| 美代子 | 「........」 |
| 雅 子 | 「あ、これを忘れちゃ........」 |
|
と、台所に戻ってテーブルの上から手作りらしきチョコレートの包みを抱える。 | |
| 美代子 | 「........」 |
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□ 同・近くの駅前 | |
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美代子がブラブラ来る。 所在なく喫茶店に入ろうとして、立ち止まる。 店頭でバレンタインデー用のチョコレートやケーキを販売しており、アベックや女の子たちが群がっている。 | |
| 美代子 | 「(ムッ)........」 |
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□ 同・近くの電話BOX | |
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受話器を取り上げた美代子、ダイヤルしようとして、躊躇する。 が、ダイヤルする。 呼び出し音、途切れて−− | |
| 電話の声 | 「はい、日本旅行!」 |
| 美代子 | 「........中西さん、ですか?」 |
| 中西の声 | 「その声は美代子ちゃんだな」 |
| 美代子 | 「........はい」 |
| 中西の声 | 「どうしたの」 |
| 美代子 | 「........(どうしたんだろ、私)」 |
| 中西の声 | 「........彼は?」 |
| 美代子 | 「........」 |
| 中西の声 | 「(察して)........そうか。俺、6時まで会社にいなくちゃいけないんだ。その後ならOKだから、食事しよう」 |
| 美代子 | 「........(どうしよう)」 |
| 中西の声 | 「えーと、どうすりゃいいかな」 |
| 美代子 | 「........(どうしよう)」 |
| 中西の声 | 「美代子ちゃん、今どこにいるの?」 |
| 美代子 | 「........寮の近くです」 |
| 中西の声 | 「じゃあ、寮に戻ってて。決めたら電話するから」 |
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と、電話、切れてしまう。 | |
| 美代子 | 「........」 |
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□ 看護婦寮・玄関ロビー | |
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美代子、帰ってくる。 | |
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□ 同・廊下 | |
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やって来た美代子、!? 美代子の部屋の前に、花の籠が置いてある。 −−籠から溢れそうな花、花、花。 美代子、ア然と花々を眺める。 その前にしゃがみ込み、陶然と匂いを嗅ぐ。 そして、メッセージカードを発見する。 −−美代子が淋しい時は、俺も淋しい。美代子が会いたい時は、俺も会いたい−− | |
| 美代子 | 「(胸に詰まり)........雄介」 |
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□ 同・玄関ロビー | |
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美代子が階段を降りてきて、はずしてある受話器を取る。 | |
| 美代子 | 「もしもし、大木です」 |
| 中西の声 | 「中西だけど、じゃあ6時に........(と、喋りかける)」 |
| 美代子 | 「........ごめんなさい」 |
| 中西の声 | 「え?」 |
| 美代子 | 「........行けなくなりました」 |
| 中西の声 | 「!」 |
| 美代子 | 「........」 |
| 中西の声 | 「........彼、来てくれたんだ」 |
| 美代子 | 「........」 |
| 中西の声 | 「判った。じゃ、また」 |
| 美代子 | 「........ごめんなさい」 |
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電話、切れる。 | |
| 美代子 | 「........」 |
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美代子、再びダイヤルする。 呼び出し音、途切れて−− | |
| 電話の声 | 「はい、野口です。ただいま留守にしております。ご用のあるかたは留守番電話にどうぞ」 |
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信号音が鳴る。 | |
| 美代子 | 「美代子です........」 |
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美代子、言葉が胸につかえ、絶句してしまう。 | |
| 美代子のM | 「また言葉が出なくなっちゃった。ありがとう........一言、そう言いたかったのに........」 |
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受話器を握りしめている美代子で−− | |
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□ −−TO BE CONTINUED−− |
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