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1999/11/30


【感想メール】

「砂恋」の感想メールを下さったみなさん、本当にありがとうございます。
NOW!にも書きましたが、全部、ちゃんと読んでおります。
返事も書いていますが、まだな方、ごめんなさい。もう少し待ってください。
また、機会を見てみなさんのメールを紹介していきたいと思います。

今日紹介するメールは、【京都・40代・英語屋兼主婦】さんからのものです。

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伴 一彦様、および「砂の上の恋人たち」のためにお仕事をなさっておられるみなさま

 毎回高校生の息子と夢中になって拝見しています。現在、やっかいな仕事を抱えておりましてはかどりも悪く、このドラマを観るのが唯一の楽しみと言っても過言ではありません。いや、もう生きる希望です(これは、真っ赤な嘘です。でも、そんなものかな)。

 今期は各局とも大作が多く、グランドミステリーともいうべき作品が数多く見られて、視聴率を競っているようですが、私の今期のベストはこの「砂の上の恋人たち」です。主演のみなさんが年齢層が若く、その分演技も「青い」(決してヘタだといっているのではありません)とも言えるのですが、その「青い」部分が、このドラマによく合っていてとても好感が持てます。登場人物の3人が10代なら、事件への対応が大騒ぎするわりに結局は第三者的なものになるかもしれないし、20代後半ならもっと大人の分別で世慣れた態度をとるかもしれない。20代を少し越えた辺りの人間は、責任感も強く、潔癖で、世間ずれしていない分苦しむことが多い。そんなところが、とてもよく出ています。

 絵里花の場合、損な役まわりなのですが、今、彼女は自分が絶対的に被害者側に立っていると考えているので、ひとみへの追慕、朗への恋心、黎子への嫉妬など、さまざまな感情をすべて、黎子への敵愾心にまとめて表面に、しかも強く出せるのです。朗と黎子の感情の重さをやがは気づくのでしょうが(友田のかあさんあたりにじっくりと諭されて。真世さん、おかあさん役なんて気の毒かな、と思ったのですが、これはいい役ですよね。世間の荒波を一人で乗り切って生きてきて、割り切っているようで、どこか人が好い。どの台詞とっても首をたてにふれます。)、その時、自分が被害者意識の上にあぐらをかいて、自分の感情を吐き出すばかりで、二人の繊細な葛藤を見て見ぬ振りをしていた、と気づく。この時の微妙な心理が出せれば、奥菜 恵さん、もう満点です。毎回、本当によくやっておられるなあ、と感心しています(お声が高くて苦手なのですが、それでも、です)。光っています。

 長瀬智也くん、お顔が彫りが深すぎて、私としてはもう少ししょうゆ顔がよいのですが、この際もうどうでもよろしい。以前フジテレビの「ディズ」という、「ラブ・ジェネレーション」だったか、ものすごい視聴率のわりにガタガタの出来だった(これには未だに言いたいことがある)ドラマの後番組だったと記憶しています、まま、そのドラマに出ておられて、そのドラマが長瀬君はもとより、出演者がみな生き生きとしていて拾いものだったのです。何より奇をてらわない脚本が良く、おなじみの青春群像ながら、切ない想いが書けていて、毎回楽しみに見ていました。視聴率をとれる役者になることが、テレビの世界では何より大切で、長瀬くんも若い人に人気があるから気にしないではいられないでしょう。でも、もっと大切なのは、納得のいく、人間の心理をていねいに描いた脚本に出会うことです。「ディズ」や「砂の上の恋人たち」のような、ね。これは、他の役者さんにも言えることですが、うまくバランスをとって仕事をこなしてください、なあんてね。
 また、この「ディズ」で、菅野美穂さんという女優さんは、良くも悪しくも「軽さ」を媒介にしないと人とつきあえない女の子(軽い女の子ではなくて)をやらせたらピカ一だな、とも感じました。

 本上まなみさんは、以前「毒猿」に台湾人だかの女の子の役で出演していらして、かぼそい身体に不幸で陰惨な過去を背負ったような立ち姿は実に実に印象的で、よく記憶しています。深夜放送の「京都案内」などを、息子がファンなので観ておりまして、私もファンになって観ています。なんだか、風の吹くまま気の向くまま、という風情がとてもよく、ベンチにつまづいたりして、面白い人だなあ、と、完璧な容貌とのギャップに笑ってしまいます。この、のんびり、あせらず、でもこだわって、という独特の雰囲気をうまく生かせるようなドラマを、伴さん、書いてあげてください。

 今回は、ほんとうに難しい役で、いつも姿を消してしまうのは、自分に自信がまったくないからなんですね。子供の時にいじめにあっていたり、普通なら頼りにする母親を亡くしていたり、自分に自信をつけるべく留学すれば、なんと加害者になってしまう。あの事故も、バギーの調子が悪かったこともあるのでしょうが、黎子の今までの生き方が起こした事故と言えなくもありません。で、今回初めて自分自身の責任をとるべく、まあ、ボロボロになって苦しんでいるわけですね。ほんとうに、毎回ズタズタの精神状態で、ドラマながら心が痛くなってきます。この黎子の償いが終わったら、必ずや彼女の生き方が報われ、彼女の魂も救済されるような場面を、伴一彦さん、よろしくお願いします。

 このドラマは、人の気持ちの細かい部分まで入り込んだ、納得のいく台詞が多く、また最小限に台詞を抑えて、少ない言葉で何倍もの感情をあらわす、といったヨーロッパ映画を思わせるような雰囲気があります。朗と黎子が、公園で会って、お互いの気持ちを確かめて途方に暮れ、二度と会わない、と別れるところなど何度もビデオを繰り返し観てしまいます(仕事しなければならないのに、どうしよう)。また、朗と、精神科医の先生との対話もとても好きな場面です。傷ついた者の心が少しずつ解きほぐされていくからなんですね。ここの長瀬くんの演技も素直でリアルで、先生も、朗の心臓の鼓動にまで耳を傾けているようで、こちらまで癒されます。
 被害者と加害者とが愛し合うという、一見、あり得ないような設定になっていますが、決して奇をてらった内容ではなく、悩み、傷つき、それでも人が人を求めずにはいられない、ほんとうに切ない想いがいっぱいに込められた良いドラマに仕上がっていると感じ入っています。
 人生は謎だと言い切るならば、このドラマこそ、実にスリリングな、最大のミステリーではありませんか。

 タイトルは、朗の心理状態をあらわしているんですね。水の流れや、動物たちが頃合いよく挿入され、シュールで、官能的で、音楽が、また良くてぴったりです。CD買って、毎日聴いています(仕事、どうしよう)。



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