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| □ 沢井写真館・台所(朝) | |
| 志乃が鼻唄まじりに朝食の用意をしている。 | |
| 大根を千切りにして、味噌汁を作る。 | |
| 志乃、まな板に残った大根の切れ端を齧る。 | |
| 志 乃 | 「……美味しい」 |
| 思わず笑みが零れる。 | |
| □ フラッシュ | |
| ――圭吾の畑。 | |
| 圭吾、志乃に大根を差し出す。 | |
| 圭 吾 | 「今年最初に収穫した大根や」 |
| 志 乃 | 「(微笑で)おおきに」 |
| □ 元の居間 | |
| 志乃、楽しげに食卓に料理を並べている。 | |
| 晶と耕造が不思議そうに見ている。 | |
| 志 乃 | 「(二人の視線に気づき)へ?」 |
| 晶 | 「ママ、今年になってからなんか楽しそうやなあ」 |
| 志 乃 | 「うん、ちょっとな……」 |
| 晶 | 「(突然大仰な言葉づかいで)もう行かはるの? 朝はまだまだ来ぃひん。あれはナイチンゲール、ヒバリやないか……」 |
| 志 乃 | 「(ビックリ)なんやの?」 |
| 晶 | 「学芸会の稽古。結局『ロミオとジュリエット』をやることになったんや」 |
| と、台本を見せる。 | |
| 耕 造 | 「京言葉でかいな」 |
| 晶 | 「そのほうが判りやすいやろ? で、うちがジュリエット」 |
| 志 乃 | 「主役やないの」 |
| 晶 | 「(胸を張って)そうや」 |
| 耕 造 | 「コメディなんか?」 |
| 晶 | 「おじいちゃん(と、睨む)。美貌で選ばれたんや」 |
| 耕 造 | 「ほう」 |
| 晶 | 「ほんまやで」 |
| 志 乃 | 「ラブストーリーはええなあ」 |
| 晶 | 「けどなァ、相手のロミオが問題なんや」 |
| □ 秀輝の生意気そうな顔 | |
| ――沢井写真館の玄関に立っている。 | |
| 志乃と耕造、晶を送りに出てくる。 | |
| 秀 輝 | 「(ニコッと表情を変え)お早うございまーす」 |
| 晶 | 「(ため息混じりに)こいつ。テンション下がるやろ?」 |
| 耕 造 | 「ほんまは好きなんやないか?」 |
| 晶 | 「あほくさ!」 |
| と 、ランドセルを秀輝に押しつけて出て行く。 | |
| 秀輝、志乃たちに会釈して晶を追う。 | |
| □ 沢井写真館・表 | |
| 志乃、晶たちを送って出てくる。 | |
| 隣の中井漬け物店から、作業着姿の秀輝の母・良美が出てきて―― | |
| 良 美 | 「秀輝! 忘れもんや」 |
| と、リコーダーを見せる。 | |
| 秀輝、Uターンして受け取ると、晶と一緒に駈けてゆく。 | |
| 志 乃 | 「(微笑で)お早うざいます」 |
| 良 美 | 「(会釈して)ほんま、あわてんぼうで困るわ」 |
| 志 乃 | 「元気でええやないですか」 |
| 良 美 | 「それしか取り柄あらしません」 |
| と、笑顔で頭を下げ、店へ戻ってゆく。 | |
| 志 乃 | 「(微笑で)……」 |
| N | 「隣の秀輝の家はお漬け物屋さんです」 |
| □ 中井漬け物店・作業場 | |
| エプロン姿の秀輝の祖母が千枚漬けの漬け込み作業をしている。 | |
| 良美、戻ってきて作業に加わる。 | |
| 聖護院かぶらをスライスし塩で下漬けしたものを一枚ずつ昆布と交互に重ねていく。 | |
| 良美の吐く息が白い。 | |
| N | 「京都の冬の寒さは半端やありません。千枚漬けは、底冷えの始まる立冬より後に漬けたものが一番美味しいそうです」 |
| 良美の手、寒さに赤くなっている。 | |
| 良美、時々手に息を吹きかけながら作業を続ける。 | |
| □ タイトル | |
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