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●恋のパラダイス 第1回 (1)

□ 七海津波の顔
――大人の美しさがある。
息を弾ませ、爽やかな汗を流している。
ジョギングしているのだ。
その、軽快なフットワーク。
そして――
津波と並んで走っている、萌子。
――津波の妹。整った顔立ちをしている。
二人の後ろから、自転車に乗り、毛むくじゃらの大きな犬を連れて走ってくる、栞。
――津波の一番下の妹。少女ではないが、無垢な可愛らしさがある。
栞、二人を抜いてゆく。
萌子、負けじとスピードを上げてゆく。
津波は、マイペースで走ってゆく。
そこは――
□ 湘南
――海沿いの道路。
朝日に波頭がキラキラと輝いている。
三人姉妹が、潮の匂いの中を駈け抜けてゆく。
□ 江ノ電が踏切を通過してゆく
遮断器が上がり――
走り出す津波と萌子、急な坂を駈け上がってゆく。
栞、犬(ポパイ)に引っ張り上げられるように自転車を押してゆく。
□ 七海家・表
――古い一軒家である。ガレージがあり、小型車と自転車が一台、停めてある。
栞、ポパイを連れてガレージの横を抜けてゆく。
□ 同・庭
“ポパイの家”の表札のある、立派な犬小屋がある。
――七海家は高台にあり、春霞の中、江ノ島が近くに見えている。
□ 同・食堂
バスローブ姿の津波が髪の毛を乾かしながらやってくる。
津波と同じスタイルの萌子が、朝刊をチェックしながらフルーツ(例えばパパイヤ)を食べている。
津 波「(顔をしかめて)萌子ォ、またそんなもン食べてる」
萌子、無視して新聞を読んでいる。
台所から、栞が津波の朝食を運んでくる。
――こちらは、御飯に味噌汁、焼魚に納豆という純和風である。
津 波「ホラ、萌子、こっち」
と、栞が置いた焼魚などを萌子の前へ――
萌 子「(ウンザリ顔で)もう、いちいちウルサイなあ」
津 波「あんたの体心配して言ってンのよ。最近残業多いでしょ? ちゃんと栄養とらないと、バテちゃうわよ」
萌 子「判ってるって」
津 波「判ってないじゃない」
萌 子「ったくお姉ちゃんはお節介なんだから........」
津 波「(ムッと何か言おうとする)........」
栞  「(遮って)いいじゃない、お姉ちゃん。それより、洗濯機、買い換えていい? ガタガタうるさいの」
津 波「(萌子を気にするが)いちいち相談しなくていいよ、家の中のことは栞に任せてるんだから」
栞  「でも、お金がない」
津 波「萌子、出しなさい」
栞  「あッ、萌子姉ちゃん、今月分まだもらってない」
萌 子「(一転媚びて)結婚式続いてピンチなんだ。見逃して」
津 波「ダメよ」
栞  「ちゃんと入れてくれないと困る」
萌 子「だって........」
栞  「困るッ」
津 波「(同時に)萌子」
萌 子「(ブスッと)........判った」
津 波「(ニコッと)いただきまーす」
と、食べ始める。
□ 江ノ電・□□駅ホーム
電車が到着する。
ラフな服装の津波と、ビシッとしたスーツの萌子、通勤客に混じって乗り込む。
□ 七海家・洗面所
栞、洗濯機に汚れ物を放り込み、スイッチを入れる。
ガタガタと物凄い音を立てて動き始める洗濯機。
□ 鎌倉駅・横須賀線快速ホーム
待っている津波と萌子。
通勤客の数、増えてゆく。
□ 走る快速電車
――多摩川を渡ってゆく。
□ 丸の内・オフィス街
東京駅から吐き出されるサラリーマン、OLの群れ。
その中に、萌子がいる。
平河商事――のビルに入ってゆく。
□ 平河商事・□□課フロア
「お早うございます」
と、入ってゆく萌子。
――課長、同僚の斉藤敦、OLの広瀬早紀他数名の部署。
萌子、自分のデスクにつき、仕事の準備を始める。
□ 山手線・大崎駅(例えば)
津波、駅前のオフィスビルに入ってゆく。
□ オフィスビル・あるフロア
エレベーターを降りた津波、ドアを押して、中へ。
――ドアに、“宮田歯科”の文字。
□ 七海家・玄関
栞がいそいそと出てくる。
自転車に跨がると、坂道を滑るように降りてゆく。
□ 鎌倉駅前
自転車に乗った栞がやってくる。
ビルの上部階の窓ガラスに、“□□調理師専門学校”の文字。
栞、眩しそうに見上げる。
□ 宮田歯科・受付
え? と、振り返る津波。
――白衣姿が色っぽい。
受 付
真奈美
「七海先生に是非診ていただきたいって........」
津 波「誰の紹介?」
真奈美「飛び込みです」
津 波「(怪訝に予約票を見て)伊達正人........どういう人?」
真奈美「(ニコニコと)あたし、タイプ」
津 波「(ジロッと)........」
□ 同・診療室
――診療台が十台ほどある規模である。
マスクをした津波、やってくると――
目指す診療台に腰掛けていた男が振り返る。
一見冷たい印象の男だが、津波を認め、笑顔を作る。屈託のない笑顔だ。
津波、しかし会った覚えはない。
男  「(嬉しそうに)今日は」
津 波「........今日は」
男、口を開ける。
津波、口内鏡で見る。
津 波「(感心して)綺麗な歯ですねえ」
男  「歯には自信あるんです」
津 波「え?」
男  「あ、いや........歯石を取ってもらおうかな、と思って」
津 波「(準備しながら)前にどこかでお会いしました?」
男  「いえ、初対面です」
津 波「........」
男  「七海って、珍しい苗字ですね。津波........名前も素敵です」
津 波「(ちょっと気味悪く)どうして私の名前を........」
男  「名札........」
津波の胸に名札がある。
津 波「あ、そうですね、失礼しました」
と、治療にかかる。
男、じっと津波を瞶めている。
二人の顔は数センチ以内にある。
津波、男の視線に緊張しながら治療を続ける。
□ 平河商事・廊下
書類を抱えた萌子が歩いてゆく。
その肩が叩かれる。
背広の似合うすっきりとした顔立ちの青年の笑顔がある。
――柴崎天。
萌子、自然に顔が綻びかけるが、真顔を保つ。
天、萌子と歩調を合わせ、前を向いたまま――
天  「(さり気なく)今夜八時、いつものとこで」
萌子が何か言おうとした時――
天の肩が叩かれる。
斉藤だ。
斉 藤「(親しげに)よお、柴崎」
天  「斉藤........忙しそうだな」
斉 藤「お互い様。たまには飲もうぜ」
天  「ああ。誘ってくれよ」
と、斉藤の背中をポンと叩くと、チラと萌子に視線を送り、角を曲がってゆく。
萌 子「(振り返らず)........」
□ ビストロ“ロンディーノ”・表
――海沿いにある、小さなビストロ。
栞が自転車でやってくる。
ドアに“準備中”の札。
□ 同・店内
マダムの中上久子と、夫でシェフの慶三が開店準備に忙しい。
栞  「(元気に)今日は」
と、入ってくる。
慶 三「(気風よく)お早う!」
久 子「ご苦労さん」
幼稚園の制服姿の娘・綾が遊んでいる。
栞  「(笑顔で頭を撫でて)今日は、綾ちゃん」
久 子「調理師学校、申し込んできた?」
栞  「(笑顔で)あ、はい」
久 子「頑張ってね」
栞  「(心配げに)あのう、姉さんたちには内緒に........」
久 子「(ニコッと)判ってるって」
栞  「お願いします」
ペコリと頭を下げる。
電話が鳴る。
栞  「(出て、テキパキ)お電話ありがとうございます、ビストロ“ロンディーノ”でございます」
□ 都心の繁華街
――夜の賑わい。
□ バー“シャコンヌ”・店内(夜)
天、ポツリ、カウンターにいる。
時計を見る。
――約束の8時はとっくに過ぎている。
天、首をひねっている。
□ ゴルフ練習場
――打ちっぱなしを楽しむサラリーマンやOLたち。
その中に、萌子もいる。
萌子は、ストレスをぶつけるようにゴルフボールを引っぱたいている。
□ ビストロ“ロンディーノ”・店内
――閉店間近。
津波が食欲旺盛に食事をしている。
「ありがとうございました」
久子と栞がアベックを送り出す。
客は津波だけになった。
久子、津波のテーブルにやってくる。
久 子「ねえ、津波。今度の日曜日、ヒマ?」
津 波「まあね」
久 子「オトコ、いないの?」
津 波「(首をすくめ)食事友だち、ゴルフ友だちなんかはたくさんいるけど、日曜日にわざわざ会うほどの男はね」
久 子「最近、しゃっくり出ないんだ」
津 波「え?」
久 子「判りやすいじゃない、七海家の三姉妹の場合。一目惚れするとしゃっくり」
津 波「忘れてた。(しみじみため息で)最近全然だわ。いい男、どっかにいない?」
久 子「(ニッと)いる」
津 波「どこよ?」
久 子「日曜日に会わせてあげる」
津 波「??」
久 子「どこかで津波を見初めたらしいのよ。ボクの理想の人だ、嫁さんにしたい、って」
津 波「ちょっと待って。じゃ、見合いってこと?」
久 子「そう」
津 波「パス! 結婚する気なんかないよ」
久 子「いい人よ」
津 波「あ、じゃあ萌子。あの子も今年25だし、そろそろちゃんと考えてやらないと........」
久 子「お姉ちゃんが世話焼かなくても結婚相手ぐらい見つけるわよ。それよりあんた」
津 波「私は、もう........(結婚は結構)」
久 子「(ニッと)まだ悠作さんに未練があるんだ」
津 波「――(口を尖らせて)バカ言わないで」
久 子「フフ。ね」
と、栞と微笑み合う。
津 波「(ムキになって)違うってば」
久子、フフ。
津 波「(自棄で)判ったわよ、会えばいいんでしょ、会えば」
久 子「そうよ、会えばいいのよ」
津 波「(気乗りせず)でもねえ........」
□ 七海家・津波の部屋(朝)
津波、外出の準備をしている。
萌子と栞が入ってくる。
萌 子「あれ?(着ている洋服)買ったの?」
津 波「(ポーズを取って)素敵でしょ?」
萌 子「ホントは見合いにノッてるんだ」
津 波「みだしなみ」
栞  「相手、どういう人?」
津 波「綾ちゃんが行ってる幼稚園の跡取り息子ですって」
萌 子「オイシーじゃない」
津 波「男は金じゃないわ」
萌 子「(受けて)顔よ」
津 波「心よ、心」
萌 子「それが目に見えないから、悲劇は尽きないのよねえ」
津 波「(ジロッと)........誰のこと言ってンの?」
萌子、首を竦める。
表で、車のクラクション。
□ 同・表
三人が出てくると――
玄関前に高級外車が停まっている。
萌 子
「(笑顔で)お義兄さん」
運転席にいるのは、細面のいい男・牧原悠作。
悠 作「(微笑で)久し振り」
津 波「(突慳貪に)何か用?」
悠 作「仕事でね、近くに来たから........」
萌 子「お姉ちゃん、これから見合いなの」
津 波「!(萌子をつついて)余計なこと、言わないの」
悠 作「!(動揺あるが、皮肉な笑いで)へえ........どういう気紛れかね」
津 波「(ムッと)本気。本気で再婚考えることにしたの」
悠 作「キミには幸せになって欲しいな」
津 波「(ツンケン)なってやるわよ」
□ 走る悠作の車の中
津波が助手席にいる。
津 波「(ブスッと)冗談じゃないわよ、別れた亭主の車で見合いに行くなんて........」
萌 子「(悠作に)どーいう仕事してるとこんな車乗れるワケ?」
悠 作「これが仕事なんだ。外車専門の中古車ディーラー。車を売りたいというお客さんがいると買い付けに行き、買いたいというお客さんがいると、こうやって届けに行く」
津 波「(フン、と)やくざな仕事」
悠 作「ちゃんとした会社員だよ」
と、津波に名刺を渡す。
津 波「(関心なさそう眺めて)どうせ長続きしないんでしょ」
悠 作「いや、結構性に合ってるみたい」
萌 子「(津波に)車、買い換えようよ」
栞  「洗濯機が先」
萌 子「車が先」
津 波「今の車で充分よ」
悠 作「何ツンケンしてンの?」
津 波「別に」
悠 作「見合いだろ? スマイルスマイル」
津波、ますますムッ。
□ ホテル・正面玄関
津波たちを下ろした悠作の車が発車する。
津波たち、見送る。
萌 子「残念ね、お姉ちゃん」
津 波「何が」
萌 子「見合いなんかやめろ、俺ともう一度やりなおそう........なーんて言って欲しかったんでしょ」
津 波「――。バカなこと言わないで」
と、ホテルに入ってゆく。
□ 同・ティールーム
津波たちが入ってくると――
窓際の席で立ち上がる男がいる。
栞  「あの人?」
津波、首を傾げる。
津波たち、男の席へ行く。
男  「(緊張して)先日は失礼しました」
津 波「(キョトンと)は?」
男  「歯」
と、口を開け、歯を見せる。
津 波「(思い出し)あ!」
男  「今日まで待ち切れなくて、会いに行ったんです」
津 波「そうだったんですか(悪い気はしない)」
萌子と栞には、二人のやりとりは、??
男  「伊達正人です、よろしく」
と、改まって挨拶する。
津 波「七海津波です。すいません、妹たち、勝手について来ちゃって........」
正 人「とんでもありません」
萌 子「(淑やかに)次女の萌子です」
栞  「三女の栞です」
と、言った途端、しゃっくりをする。
津波、萌子、驚いて栞を見る。
栞、口を押さえ、赤面する。
正 人「? じゃあ、お昼食べに行きましょうか」
津 波「はあ。じゃ、萌子たちは........(言いかけると)」
正 人「一緒にいいじゃないですか」
萌 子「え........でもォ」
と、遠慮がちに栞と顔を見合わせる。
□ 同・レストラン
萌子と栞、食欲旺盛に食べている。
津波、ったく........という顔で見ている。
栞、正人の様子をチラチラ窺っている。
正人、ぎこちない。
津 波「(その様子に)どうかなさったんですか?」
正 人「いえ、噂には聞いてましたけど、揃いも揃って美人なので........緊張してます」
津 波「(照れて)またァ」
正 人「津波さんはとてもお医者さんには見えません。初めて会った時、女優さんかモデルだと思いましたよ」
津 波「(嬉しく)またまたァ」
栞  「伊達さん、姉の性格、よくご存知ですね」
萌 子「年増もおだてりゃ木に登る」
津 波「栞、萌子!」
正 人「いえ、ホントにそう思います」
津 波「(ジロッ)木に登る、ですか」
正 人「ち、違います。女優さんかモデルだって........」
津 波「(ニコニコ)ありがとうございます」
正 人「津波さん、ご趣味は?」
津 波「そうですねえ。これと言ったものは........」
正 人「休みの日はどうされてるんですか?」
津 波「もっぱらストレス解消ですね」
正 人「スポーツですか?」
津 波「ええ。一日中座りっぱなしで患者さんの口の中を覗いてるので、運動不足になりがちで........。毎朝ジョギングをしてるんですけど、休みの日にはゴルフをしたり、テニスをしたり........」
正 人「あ、そうですか。実はボクも最近ゴルフ始めたんです。今度教えて下さい」
津 波「そんな、それほどの腕前じゃありませんわ」
正 人「とにかく是非、ご一緒に........」
津 波「ええ」
なかなかいい雰囲気の津波と正人である。
萌子と栞、そんな二人を見ながら食べている。
□ 同・庭園内の噴水
□ 同・ティールーム
萌子と栞がお茶を飲んでいる。
萌子、フフ、と笑う。
栞  「........なあに?」
萌 子「栞さんのご趣味ですか? ああいうタイプ」
栞  「(動揺して)え、えーッ」
萌 子「自分の見合いのように緊張なさって」
栞  「変なこと言わないで」
萌 子「しゃっくりしてたし」
栞  「――。そういうんじゃないもん」
萌 子「久し振りじゃない? 栞がしゃっくりしたの」
栞  「違うもん」
萌 子「しかし、肝心のお姉ちゃんは出なかったなあ」
栞  「私のは違うって」
萌 子「栞のことはいいの」
栞  「よくない」
萌 子「(根負けして)判った判った。それより、お姉ちゃん、本気で再婚、考えてンのかな」
栞  「(考え込んで)........」
萌 子「ま、いいけどね」
栞  「(ポツリ)お義兄さんとやり直せばいいのに」
萌子、! 栞を見る。
栞  「萌子姉ちゃんも好きでしょ? お義兄さんのこと」
萌 子「(微妙に)........」
栞  「楽しかったよね、お義兄さんが一緒に住んでた頃」
萌 子「そういう問題じゃないでしょ。お姉ちゃんがイヤなんだから」
栞  「........」
萌 子「........お姉ちゃんの結婚なんだから」
□ 同・庭園
津波と正人が散歩している。
正 人「不思議だなあ、津波さんのような素敵な人が今まで独りだったなんて........」
津 波「!(表情が曇る)」
正 人「(キザに)ひょっとして、それはボクと会うため?」
津 波「――」
正 人「(照れて)なんちゃって。似合わないですね、こんな科白」
津 波「あのう........今は、独身ですけど」
正 人「(言ってる意味が判らず、ニコニコ)はい」
津 波「ええ、ですから........今は」
正 人「(ピンと来ず)今は?」
津 波「(言いにくそうに)つまり、昔一度........」
正 人「?」
津 波「バツ一なんです」
正 人「あ........(ようやく判った)」
津 波「........久子、何も言ってませんでした?」
正 人「(ショックで)はあ........」
津 波「(恐縮して)御存知だと思っていたので、(見合い)お受けしたんですが........」
正人、考え込んでしまう。
津 波「(心から)申し訳ありません........」
正人、顔を上げ――
正 人「かまいません」
津 波「は?」
正 人「離婚歴なんて気にしません。(改まって)津波さん」
津 波「........はい」
正 人「(キッパリ)結婚を前提に付き合って下さい」
津波、戸惑う。
その時――
「お話し中すいません」
と、声。
津波、!
悠作が遠慮がちに声をかけてきたのだ。
悠作、目が合った正人に軽く会釈をし、津波を手招きする。
悠 作「津波さん、ちょっと」
津波、ムッ。
正 人「(怪訝に)........どなたですか?」
津波、困る。
悠 作「(遠慮がちに寄ってきて)牧原です。こいつの元亭主の........」
正 人「――!」
津 波「(カッとなって)ちょっと........」
と、悠作を離れたところへ連れていこうとする。
悠 作「(正人に)あ、誤解しないでください、もうなんでもないんですから。ちょっと気が強いですけど、いい女ですよ、津波は」
正 人「........」
津波、無理矢理悠作を引っ張ってゆく。
悠 作「痛いなあ」
津 波「邪魔しにきたの!?」
悠 作「へえ、気に入ったの」
津 波「大きなお世話。帰って」
悠 作「(言いにくそうに)いや、ちょっと頼みがあるんだ」
津 波「(不機嫌)何よ」
悠 作「実はね、車の買い付けに行ったんだけど、金額が折り合わなくて、手持ちじゃ足りないんだ。........五万円、貸してくれないか?」
津 波「会社に取りに行けばいいでしょ」
悠 作「時間があったらそうしたいんだけど........頼む」
津 波「........」
正人、胡散臭そうに悠作を見ている。
悠 作「(カワイク手を合わせて)三万円でもいい」
津波、ブ然と財布から三万円を出して渡す。
正人、!
悠 作「(大袈裟に)助かったァ。今度、倍にして返すから。愛してるよ」
無造作にズボンのポケットに札を突っ込むと、正人に丁寧に頭を下げて去ってゆく。
津 波「何が愛してるよ、よ。........ウソツキ」
ため息で見送る。
□ ――C・M――

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