NAVI

●恋のパラダイス 第2回 (1)

□ 湘南・海沿いの道路(夜)
だて幼稚園の送迎バスが走ってゆく。
□ 走るだて幼稚園の送迎バスの中
正人、上機嫌で運転している。
正 人「大島、行かれたこと、あります?」
後部座席----硬い表情の津波と天が乗っている。
正人、返事がないので怪訝に振り返る。
津 波「……いえ」
正 人「ボク、ちょくちょく遊びに行くんですけどね、ホラ、5年ぐらい前かなあ、三原山の噴火。あの時もいたんですよ。凄かったなあ。もう目の前に火柱が迫って、島全体が吹っ飛びそうで。あれですよ、あれ、ゴジラ。怪獣映画の世界。ホントにゴジラが出てきそうでしたよ」
と、津波たちを振り返るが----
津 波「……」
天  「……」
正 人「(咳払いして)ところで、そちら(天のこと)は?」
津 波「あ、失礼しました。柴崎さんです。(天に)この前見合いした伊達さん」
天、会釈する。
正 人「(ジロッと)津波さんとはどういうご関係ですか?」
津 波「妹の恋人です。萌子の……」
正 人「(ホッと)ということは、ボクの弟になる人かも知れないんだ」
津 波
「……」
----交差点が近づく。
津 波「すいません。駅の方へお願いします」
正 人「あれ? ドライブ……」
津 波「ごめんなさい。ちょっと用事があって。駅前だとタクシー拾えると思いますから……」
正 人「(二人の様子に)……何かあったんですか?」
津 波「(答えにくい)……ちょっと」
正 人「送りますよ」
津 波「でも……」
正 人「遠慮しないで下さい。どちらへ?」
と、運転を続ける。
津 波「(恐縮して)……」
天、押し黙っている。
□ 悠作のマンション・表
だて幼稚園の送迎バスが到着する。
降りる津波と天。
津 波「ありがとうございました」
正 人「待ってますよ」
津 波「でも……」
正 人「帰りの足が大変でしょ?」
津 波「(恐縮して)ホントに……」
正 人「いえいえ」
津 波「(困って)……」
□ 同・玄関
津波、チャイムを鳴らす。
天、緊張して立っている。
ドアが開き、顔を出す----悠作。
微笑で迎える。
悠 作「栞ちゃんから電話もらったよ」
津 波「……」
天  「……」
津 波「萌子(いなくなった?)……」
悠 作「(首を振り)中にいる」
と、道を開ける。
天  「……」
津波と天、入ってゆく。
□ 同・中
萌子、入ってきた津波と天を強い目でみむかえる。
萌 子「信じられない、こんなとこまで……」
津 波「こっちの科白」
天  「萌子……」
ソッポを向く萌子。
悠作、ドアに凭れて三人を見ている。
津 波「柴崎さんに謝りなさいよ」
萌 子「(ムッと)何も悪いことしてない」
津 波「彼が話があるっていうのに……」
萌 子「私は話したくないって言った。それでいいでしょ?」
津 波「よくないわよ。せっかく来てくれたのに」
萌 子「せっかく? 押し掛けてきたんじゃないの。(何か言おうとする津波を制して)お姉ちゃんが首を突っ込むことじゃないって言ってるでしょ!」
天  「(萌子を見据えて)この人か、萌子が好きだって言うのは」
萌 子「(キョトンと)好き? 何のこと?」
悠作も、?
天  「俺以外に好きな人が出来た、って聞いた」
萌 子「あ……(思い出した)」
天  「(瞶めて)……」
萌子、天を瞶めて、キッパリと----
萌 子「そうよ」
天、!
津波、!
悠作、ちょっと困った顔。
萌 子「(天に)おあいこでしょ? あなたは広瀬と楽しくやってるわけだし」
天  「誤解だって言ってるだろ」
萌 子「(ソッポを向いて)……」
津 波「(ショックで)……」
電話が鳴る。
悠 作「(出て)もしもし……ちょっと待って」
と、受話器を津波に差し出す。
津 波「(それどころではなく)……もしもし」
□ 七海家・リビング
栞  「栞。ねえねえ、どうなってンの?」
□ 悠作のマンション・中
津 波「----」
栞の声「お姉ちゃん」
津 波「取り込んでるから……」
と、切ってしまう。
□ 七海家・リビング
栞、切れた電話をムッと見る。
□ 悠作のマンション・中
天、萌子の腕を取り、引っ張っていこうとする。
萌 子「!?(抵抗して)やめてよ」
天、離さない。
萌 子「あんたなんか大ッ嫌い!」
揉み合う天と萌子。
津波、ハラハラ見ている。
悠 作「やめろよ、みっともないな」
天、キッ。悠作を睨む。
悠作も睨み返す。
その時、玄関のチャイムが鳴る。
悠作がドアを開けると----
モジモジ立っていた正人。
正 人「(ア然と)……あなたの家だったんですか」
悠 作「……(覚えてない)誰?」
正 人「津波さんと見合いした……」
悠 作「(思い出し)ああ」
正 人「すいません! トイレ、貸して下さい」
と、我慢しきれない様子で飛び込んでゆく。
悠作、!?
天  「(悠作を見据えて)あなたはどう思ってるんですか、萌子のことを」
悠 作「(あっさり)好きだよ」
天、!
津波、!
萌 子「……」
天  「萌子と、付き合ってる、ってことですか」
萌 子「(悠作に寄り添い)だったら何も問題ないでしょ?」
津 波「(思わず)ダメよ」
萌 子「何がダメなの」
津 波「(動揺して)外泊なんて……」
萌 子「私25よ。まだお姉ちゃんの許可取らないといけないの!? それで怒って飛んで来たわけ?」
津 波「……」
正人がすっきりした顔でトイレから出てくる。
萌 子「違うでしょ、ここだからでしょ? お義兄さんのところに泊まるって言ったから、お姉ちゃん、慌てて飛んできたんでしょ?」
津 波「(動揺して)ち、違うわよ」
正人、!? 聞き耳を立てる。
萌 子「じゃあどうして」
津 波「天くんに悪いし、萌子が心配だから……」
萌 子「ウソウソ。お姉ちゃん、嫉妬してンのよ。お義兄さんに未練あるから……」
正人、ア然。
津 波「(必死に笑って)バカなこと言わないで」
正 人「(ショックの中で)ホントですか、津波さん」
津 波「----。違います」
電話が鳴る。
悠 作「(出て)もしもし……ちょっと待って(と、津波に受話器を差し出し)栞ちゃん」
津波、受話器を受け取るが、そのまま切ってしまう。
津 波「(萌子に)天くんがいるのに、どうして悠作なの」
萌 子「どうしてって……」
天  「(見て)……」
萌 子「理屈じゃないでしょ?」
津 波「----」
萌 子「それに。かまわないでしょ? お姉ちゃんたちが結婚してる時だったらともかく」
悠 作「……」
津 波「誰と付き合おうと自由。でも、姉として忠告させていただくわ。悠作みたいな男は萌子に相応しくない」
萌 子「悠作みたいな、って……」
津 波「(キッパリ)クダらない男って意味よ」
悠 作「(苦笑して)ズイブンだなあ」
萌 子「お義兄ちゃんのどこがクダらないの」
津 波「全部よ、全部」
天、じっと萌子を瞶めている。
正 人「……」
悠 作「(ブ然と)いい加減にしてくれないかなあ。夜中に人の家に来てゴチャゴチャ……」
津 波「……」
悠 作「その通り、俺はクダらない男だ。認めます。津波、早く俺のことなんか忘れてその男と幸せにやってくれ」
津 波「(ムカッと)とっくに忘れてるわよ」
正 人「(もムカッと)あなたねえ、そういう言い方はないんじゃないですか」
悠 作「(正人は無視して天に)いいか、キミは萌子に嫌われたんだ。とっとと帰って枕を抱えて寝てろ」
天、カッ! 悠作に向かって行こうとする。
萌子、!
悠 作「(挑発して)離れた心を腕ずくで取り戻せるかな」
天、悠作を見据えて拳を握りしめる。
萌 子「(天を見て)……」
正 人「!(二人の間に割って入り)ぼ、暴力はいけません、暴力は」
悠 作「みんな帰ってくれ。早く二人っきりになりたいんだ」
と、萌子を抱き寄せる。
天、! 正人を押し退け、悠作を殴ろうとする。
正人、なんとかやめさせようと割り込む。
天の拳が----悠作ではなく、正人の頬に炸裂した。津波、萌子、悠作、そして正人、ア然!
アッとなる天。
正人、痛そうに顔を歪めて頬を押さえる。
ポロッと、折れた歯がこぼれた。
津波たち、再びア然となって----
□ 七海家・洗面所(朝)
バスローブ姿の津波、歯を磨いている。
栞、訊ねる。
栞  「昨夜どうだったの?」
津 波「ウルサイわね」
栞  「教えてくれたっていいでしょ!?」
津波、無視して歯を磨いている。
□ 同・食堂
津波と萌子、お互いに無視して黙々と食べている。
栞  「(フクれて)もう、二人とも帰ってきてから、一言も口聞いてないよ」
津 波「……」
萌 子「……」
津波、黙ってお茶碗を栞に差し出す。
栞、ムッとなるが、受け取る。
□ 大崎デンタルクリニック・診察室
津波が正人の治療をしている。
一段落して----
津 波「はい、漱いで下さい」
嗽をする正人、顔をしかめる。
津 波「痛いですか?」
正 人「いへ、へーひへす(いえ、平気です)」
ちゃんと発音出来ない。
正 人「あへ?」
津 波「麻酔のせいですよ」
正 人「ああ」
津 波「(心から)すみませんでした。変なことに巻き込んで、自慢の歯を……」
正 人「いへいへ。ひははへへす(いえいえ。幸せです)」
津 波「幸せ?」
正 人「まはほうひへふなひはんほひひょうほふへはへふんへすはは」
津 波「……またこうして津波さんの治療を受けられるんですから……(恐縮しきって)すみません、ホントに……」
津波、再び正人の口を覗く。
正人、至近距離で津波を見上げている。
津 波「(やりにくいが)応急の差し歯ですから、ちょっと窮屈に感じるかもしれませんけど……(などと、差し歯ということが判るような医学的アドバイスを)」
正 人「あえ(はい)」
津 波「(治療に専念して)……」
正 人「ひほふはへひひへひひへふは?」
津 波「一つだけ聞いていいですか、ですか?」
正 人「(頷き)ほうひへひほんははっはんへふか?」
津 波「どうして離婚……」
言いかけてやめる。
正人、返事を待って津波を見上げている。
津 波「……」
津波、答えず治療を続ける。
□ 平河商事・社員食堂
天と斉藤が並んで食事をしている。
天、苛立ちのため息。
斉 藤「(その様子に)悩んでるのね」
天  「……判ンないな、女って」
斉 藤「彼女のことか?」
と、視線を食堂の入口へ----
早紀たちが入ってくる。
天  「斉藤、言っとくけど、広瀬とは何でもないぞ」
斉 藤「(ニッと)この前の飲み会の……」
天  「あれは弾みだ。言いふらすな」
斉 藤「言いふらしちゃいないさ」
天  「とにかく、広瀬は関係ない」
斉 藤「じゃあ誰だよ、ため息の原因は」
天  「お喋り男には言えないよ」
斉 藤「喋ンないから教えろよ」
天  「(無視して)……」
そこへ、早紀たちがやって来る。
早紀の同僚1「(斉藤に色目で)ここ、いいですか?」
斉 藤「どうぞどうぞ」
早紀、当然のように天の隣に座る。
天、ブ然。
□ 七海家・洗面所
栞が洗濯をしている。
----相変わらずガタガタとウルサイ洗濯機。
ポパイの激しく吠える声が聞こえてくる。
栞、?
□ 同・表
栞が出てくると----
正人がポパイに吠えられ、ガレージの奥に追い詰められている。
正 人「(ビビりつつ)今日は」
栞、笑顔で会釈した途端----しゃっくりが出る。
栞  「(赤面して)ヤダ……」
正 人「は?」
栞  「いえ……姉は仕事に行ってますけど……」
正 人「判ってます。栞ちゃん……でしたよね」
栞  「はい」
正 人「ちょっと、話を聞きたいんだけど……」
栞、?
正 人「(ポパイに脅えて)来るな。あっち行け。(栞に)取敢えずこの犬、何とかしてくれません?」
栞  「ポパイ!」
ポパイ、ウソみたいにおとなしくなる。
正 人「……」
□ 同・リビング
正人が恐縮している。
正 人「あ、いや、そういうつもりじゃなかったんだけど……」
栞  「(ニコニコ)一人より二人の方がおいしいから……」
と、台所から軽食(うどん?)を運んでくる。
栞  「どうぞ」
正 人「すいません。いただきます」
と、食べ始める。
心配そうに見守る栞。
正人、歯に滲みてハフハフ。しかし----
正 人「うまい!」
栞  「(ニコッ)……」
正 人「栞ちゃん、いいお嫁さんになるよ」
栞  「(照れて)ありがとうございます」
正人、食欲旺盛に食べる食べる。
栞、そんな正人の様子に、思わず----
栞  「カワユい!」
正 人「(聞こえず)は?」
栞  「いえ(なんでもありません)」
正 人「七海家は栞ちゃんが主婦やってるんだ」
栞  「姉たちは仕事が忙しいから……」
正 人「もったいないなあ。栞ちゃんみたいに若くて可愛い子が家の中に閉じ籠もってるなんて……」
栞  「(頬を染め)でも、料理作ったりするの、好きですから」
正 人「外で働こうとは思わないの?」
栞  「自分が何をやりたいのか判らなくて……。一応、短大には行ったんですけど、やめました」
正 人「そう……」
と、食べる。
栞  「(嫉妬まじりに)姉のこと、好きですか」
正 人「(力強く頷き)会った瞬間、ボクはこの人と巡り合うために独身で……いや、生まれてきたって確信したんだ」
栞  「(ブスッと)……」
正 人「……お姉さん、ボクのこと、どう思ってるかな」
栞  「いい人だ、とは言ってましたけど」
正 人「(ブツブツ)いつもそうなんだよな、俺のバアイ。あ、そうそう、栞ちゃんに聞きたいことがあったんだ」
栞  「その前に聞いていいですか?」
正 人「?」
栞  「(興味津々で)昨日、何があったんですか? お義兄さんのマンションで……」
正 人「……」
正人、真顔に戻る。
□ 大崎デンタルクリニック・控室
----津波の同僚数人が食事をしている。
津波、電話をしている。
電話の声「はい、BUBU(会社名)です」
津 波「もしもし。営業の牧原さん、お願いします」
□ 街道沿いにある中古車ディーラー
事務員が電話に出ている。
事務員「ただいま外に出ておりますが……」
津波の声「何時頃戻られます?」
事務員「ちょっと判らないんですが」
□ 大崎デンタルクリニック・控室
津 波「(ため息で)……どうも」
と、受話器を置く。
□ 七海家・リビング
正人、話し終わった。
栞  「ふうーん。でも、信じられない。萌子姉ちゃんとお義兄さんがそういう関係なんて……」
正 人「それより、津波さん、まだ未練があるのかなァ。だから、ボクと結婚を前提に交際するのを断ったんじゃないのかな」
栞  「(考えて)……そうかも知れない」
正 人「(ショックで)……そう」
栞  「……」
正 人「お姉さんたちの離婚の原因は?」
栞  「よく判らないんです。姉たち、結婚してもここで暮らしてたんですけど……」
正 人「この家で?」
栞  「(頷き)ある日急に、姉が泣いて怒ってお義兄さんを追い出したんです」
正 人「どうして?」
栞  「(首を振り)理由、教えてくれなかった」
正 人「……」
栞  「お金絡みのことだとは思うんです。お義兄さん、色々あったから」
正 人「……それまでは仲良かったの?」
栞  「(頷き)兄妹みたいに」
正 人「……」
栞  「熱愛だったんですよ。医者と患者ってありきたりの知り合い方だったらしいけど」
□ 患者の治療をする津波
----色っぽい白衣姿で,テキパキと処置してゆく。
栞の声「その頃お義兄さんは工作機械の会社に勤めていたんですけど、アメリカに転勤することになって……。姉はついて行こうとしたんです。でも、私たちを放っておけなくて、泣く泣く諦めたんです」
□ 元のリビング
正 人「……」
栞  「そしたら、お義兄さん、転勤を断りました。姉と別れたくないから、って。それで結婚したんです」
正 人「……」
栞  「……こんな話聞いて平気ですか?」
正 人「(内心穏やかではないが)過去のことだったら……」
栞  「お義兄さん、会社に居づらくなってやめて……」
□ 客の応対をする悠作
----セールスマン特有の,腰の低さと笑顔。
悠作にキャッシュで払う客。
悠作、札束を数える。
栞の声「(続いて)友だちと会社を作ったりしたんですけど、何をやってもダメ、人がいいからすぐ騙されて……それに、もともとお金にだらし無いところがあって……」
□ 元のリビング
栞  「お義兄さん、なにかというと姉に頼ってばかりで……だんだん嫌になったんだと思います」
正 人「……」
栞  「でも、決定的なことは……(私、知らない)」
正 人「……離婚したの、一年前?」
栞  「(頷くが)お義兄さんが出ていったの、ついこの間って感じがして……」
正 人「(考えて)……」
□ ビストロ“ロンディーノ”・店内(夜)
津波が料理を待っている。
----他に客はいない。
津波のテーブルの前に、ブスッと突ッ立っている栞。
津 波「(憤慨して)ったくお喋りなんだから」
栞  「(口を尖らせ)だって……聞かれたんだもん」
津 波「聞かれたら何でも答えるの? え? 栞、今体重何キロ。言ってみなさいよ」
栞  「(フクれて)……」
津 波「いい加減にしなさいよ」
久 子「(やって来て)栞ちゃんも悪気はないんだから……」
栞  「私はお姉ちゃんに幸せになってもらいたいの。お義兄さんとやり直すにしても……」
津 波「(遮って)ないない」
栞  「(続けて)伊達さんと再婚するにしても、そこらへんのことははっきりしなくちゃいけないでしょ?」
久 子「そりゃそうね」
津 波「(栞に)話す必要のある時は自分から話す。子供じゃないんだから」
久 子「そりゃそうだわ(と、調子いい)」
栞  「だったら栞たちに話して。お義兄さんと離婚したワケ」
津 波「(突慳貪に)言いたくない」
栞  「どうして」
津 波「(あくまで突っぱね)あんたたちには関係ない」
栞  「ちゃこさん、知ってます?」
久子、首を振る。
津 波「(たしなめて)栞」
慶三が料理を運んでくる。
慶 三「お待たせ」
津 波「(ムスッと)他にお客さんいないのに時間かかるわね」
慶 三「申し訳ない」
栞  「(ブツブツ)八当りしちゃって」
津波、ジロッ。
慶 三「(津波に)ホントなの? 萌子ちゃんが悠作さんと付き合ってるって」
津 波「----」
栞、マズいマズい……と慶三を調理場へ引っ張ってゆく。
久 子「(呆れて見送り、津波に)ゴメンね」
津 波「(強がって)そんな、気にしないで」
久 子「動揺しない方がおかしいわよね、妹が別れた亭主と付き合ってる、なんて判ったら」
津 波「……」
久 子「でも、違うと思うよ」
津 波「(久子を見る)……」
久 子「普段の二人見ててそう思う。兄妹(きょうだい)みたいじゃない。男と女のそれじゃないよ」
津 波「……」
久 子「萌子ちゃん、ムキになる性格でしょ? 恋人の気を惹こうと思って言ったのよ」
津 波「(そうあってほしいが)どうかしら」
客が入ってくる。
「いらっしゃいませ!」
久子、津波のテーブルから離れてゆく。
一人残った津波、ため息で----
□ ――C・M――

番組データへ

(2)へ続く

(C)Copyright 2001 Kazuhiko Ban. All rights reserved.