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| □ 横浜の街(夜) | |
| 聖也たちの声 | 「いただきまーす」 |
| □ あるレストラン・店内 | |
| 例によってテーブル一杯に並んだ料理の数々。 | |
| 聖也、涼介、京子、金田一少年が食べている。 | |
| 聖 也 | 「(満足そうに)美味しい!」 |
| 涼 介 | 「うん、美味しい美味しい。最近ずっと京子ちゃんの手作りだったから余計……」 |
| 京子、ジロッ。 | |
| 涼 介 | 「あ、いや、京子ちゃん毎日ご苦労さまだからたまには美味しいものを……」 |
| 京 子 | 「どーせ美味しくないですよ」 |
| 涼 介 | 「そ、そうじゃなくて、家事から解放されるために……」 |
| 京 子 | 「私がご飯を作ってるのは、お金がないからです」 |
| 聖 也 | 「稼いで下さいよ、涼介くん。(店員に)すみません、オムライス三つ追加で」 |
| 京 子 | 「(ムカッ)高野さんもです! 働かざるもの食うべからず! ご存じですか? ことわざ」 |
| 聖 也 | 「腹が減っては戦が出来ぬということわざもあります」 |
| 京 子 | 「お腹が一杯になっても戦う戦がないんです」 |
| 金田一少年 | 「今日は僕が奢ります。日頃お世話になってるし」 |
| 涼 介 | 「(思わず)ご馳走さまです」 |
| 聖 也 | 「一くんが自分で稼ぐようになったらご馳走して下さい」 |
| 京 子 | 「(涼介に)小学生にたかるなんてサイテー」 |
| 涼 介 | 「いや、誤解だよ、京子ちゃん……」 |
| 隣のテーブルで食事をしている初老の紳士が声をかけてくる。 | |
| 初老の紳士 | 「お食事中に大変失礼なのですが……あなたが、“喰いタン”ですか?」 |
| 京 子 | 「!? ご存じなんですか?」 |
| 初老の紳士 | 「やはりそうですか。先程から拝見していたのですが、見事な健啖ぶり」 |
| 涼 介 | 「何、ケンタンって」 |
| 金田一少年 | 「たくさん食べること」 |
| 聖 也 | 「ありがとうございます。もしかして、何かお困りですか?」 |
| 初老の紳士 | 「……ええ」 |
| 京 子 | 「あの、この喰いタン、高野聖也は、“まかせて安心・各種調査からトラブル解決いたします”、ホームズ・エージェンシー所属の探偵です」 |
| と、名刺を差し出す。 | |
| □ ホームズ・エージェンシー・表(翌日) | |
| 聖也、涼介、京子、金田一少年、表に立っている。 | |
| 京 子 | 「嬉しい! 私もご一緒に、だって」 |
| 涼 介 | 「なんで金田一も?」 |
| 金田一少年 | 「僕もホームズ・エージェンシーの一員です」 |
| 聖 也 | 「(ワクワク)何をご馳走してくれるんでしょう」 |
| 涼 介 | 「ていうか、誰なの、あの太っ腹なオジさん」 |
| 京 子 | 「(名刺を見て)野々村重蔵さん。野々村フードチェーン会長、だって」 |
| 金田一少年 | 「昨日のレストランも系列ですね」 |
| 涼 介 | 「へえ」 |
| そこへ、車体がとんでもなく長いリムジンがやってくる。 | |
| みんな、ビックリ。 | |
| リムジン、4人の前に停車。執事が降りてきて―― | |
| 執 事 | 「ホームズ・エージェンシーのみなさま、お迎えにあがりました」 |
| □ 走るリムジン・車内 | |
| 豪華な内装設備。 | |
| 涼 介 | 「(圧倒されていて)……どういう金持ちよ」 |
| 京 子 | 「……」 |
| 聖也と金田一少年は、備えつけのミニバーのつまみを食べている。 | |
| リムジンは高級住宅街の坂を上がってゆく。 | |
| □ 豪邸・邸内 | |
| 豪華な門扉が開き、入ってゆくリムジン。 | |
| しばらく走り、玄関の車寄せに到着する。 | |
| 待機していたメイドたちが聖也たちを迎える。 | |
| メイドたち | 「いらっしゃいませ、お客様」 |
| 涼 介 | 「(ワクワク)本物のメイドだあ」 |
| □ 同・廊下 | |
| 聖也たち、歩いてゆく。 | |
| 涼 介 | 「(期待に胸を膨らませ)久々の豪華料理だね」 |
| 京 子 | 「(もワクワク)フォアグラ、トリュフ、キャビア……フカヒレもいいなあ」 |
| 廊下の向こうから、服装はちゃんとしているが眼光鋭い男(須藤守)がやってくる。 | |
| 聖也たち、軽く会釈するが、ブ然とした表情の須藤は無視してすれ違う。 | |
| が、立ち止まり、フト、振り返る。 | |
| □ 同・ダイニング | |
| 弦楽四重奏団が演奏している。 | |
| 豪華な内装。巨大なテーブル。 | |
| 聖也たち、それぞれの席につく。 | |
| が、セッティングされているのは、1枚の皿とナイフ・フォーク一セットだけである。 | |
| みんな、? | |
| そこへ、初老の紳士(野々村重蔵)が現れる。 | |
| 野々村 | 「ようこそいらっしゃいました」 |
| 聖 也 | 「お招きいただき、ありがとうございます」 |
| 野々村 | 「では、早速……」 |
| 給仕に合図する。 | |
| 調理場から、給仕たちが銀のクロッシュ(ドーム型の蓋)をした皿を運んでくる。 | |
| それぞれの前に置かれる皿。 | |
| みんな、ワクワク。 | |
| 聖也、シャキーン! と、マイ箸を取り出す。 | |
| 涼介、京子、金田一少年、ナイフフォークを構えて待ち構える。 | |
| 野々村 | 「お召し上がり下さい」 |
| 給仕たち、一斉にクロッシュを開ける。 | |
| いざ食べようとした聖也たち、あれ? となる。 | |
| 皿の上には、シンプルな小判型のコロッケ一個。 | |
| 涼 介 | 「……これって、コロッケ?」 |
| 野々村 | 「そうです」 |
| 京 子 | 「もしかして、フォアグラ入り?」 |
| 金田一少年 | 「フカヒレ入りかも」 |
| 野々村 | 「いえ、中身はじゃがいもと挽肉です」 |
| 京 子 | 「挽肉が年代ものとか」 |
| 涼 介 | 「なんだよ、それ。ワインじゃないんだから」 |
| 京 子 | 「あのう、なにが特別なんですか?」 |
| 野々村 | 「まあ、お召し上がりください」 |
| みんな、食べる。 | |
| 聖 也 | 「(ニコニコ)美味しい!」 |
| 涼 介 | 「普通の……コロッケだよね?」 |
| 野々村 | 「私の専属シェフに作らせた中では一番の出来です」 |
| 聖 也 | 「すみません、お代わりいただけますか?」 |
| と、空になった皿を給仕に差し出す。 | |
| 野々村 | 「(給仕に)全部持ってきなさい。実は、これによく似たコロッケを探し出してほしい。それが私の依頼です」 |
| 涼 介 | 「コロッケ探し!?(京子に)探偵の仕事じゃないでしょ。断わろ」 |
| 聖 也 | 「(興味津々で)涼介くん、話は最後まで聞きましょう」 |
| 給仕が大皿に山盛りのコロッケを運んで来る。 | |
| 聖 也 | 「改めて、いただきます」 |
| と、手を合わせて食欲旺盛に食べ始める。 | |
| 執 事 | 「(やってきて)あのう、須藤様がもう一度会っていただきたいそうですが……」 |
| 野々村 | 「(ムッと)今大事な話をしてるんだ。帰ってもらえ」 |
| 執 事 | 「かしこまりました(と、下がる)」 |
| みんな | 「……」 |
| 野々村 | 「中断して申し訳ありません。実は、20年前に食べたコロッケが忘れられないのです。もう一度食べたくて随分探し歩きました。でも見つからない。うちの優秀なシェフたちに再現させたのですが、どうにもダメで……」 |
| 聖 也 | 「今どきの荒いパン粉のついたコロッケではなく、細かいパン粉で、外側が固めに揚げてある」 |
| 野々村 | 「(頷き)中のじゃがいもは柔らかめ。合い挽き肉が絶妙のバランスで入っている」 |
| 京 子 | 「味付けはごく普通」 |
| 聖 也 | 「刻んだパセリがほんの少し入ってますよね?」 |
| 野々村 | 「さすが喰いタン!」 |
| 涼 介 | 「え? 入ってた?」 |
| と、コロッケの断面を見る。 | |
| 金田一少年 | 「(首を傾げて)どこかで食べたような気が……」 |
| 聖也、? | |
| 野々村 | 「このコロッケには判りやすく入っています。私が探し求めているコロッケは、パセリが入っているとは気づかせないのです。それが独特の旨味になっている。1個でやめておこうと思っても、2個3個と手が伸びてしまう。そんなコロッケなんです」 |
| 聖 也 | 「(涎を垂らさんばかりに)た、食べたい!」 |
| 野々村 | 「私は世界中旅をし、グルメを究めたつもりです。その私が死ぬ前に、最後の晩餐で食べたいのは、そのコロッケなんです」 |
| 聖 也 | 「ますます食べたい! 探しましょう! 全力で!」 |
| □ タイトル | |
| □ 高層ビルが立ち並ぶ場所 | |
| 聖也と涼介がやってくる。 | |
| 聖 也 | 「どこですか? 狸橋商店街は」 |
| 涼 介 | 「ここ」 |
| 聖 也 | 「何もないじゃないですか」 |
| 涼 介 | 「野々村さんの説明聞いてました? 野々村さんが狸橋商店街の亀屋ってコロッケ屋に通っていたのは、20年前。再開発でこうなっちゃったんです」 |
| 聖 也 | 「商店街のみなさんはどこに行ったんですかね」 |
| 涼 介 | 「どこか別の土地に移って商売してるか、転業、廃業、ってとこじゃないですか?」 |
| 聖也、鼻をクンクンさせ、歩き始める。 | |
| 聖 也 | 「コロッケの匂いがします」 |
| □ 同・近くの商店街 | |
| 涼介、聖也を追いかけてやってくる。 | |
| 涼 介 | 「へえ、すぐ近くに商店街があったんだ」 |
| 先行した聖也、肉屋の店先で紙に包んでもらったコロッケを食べている。 | |
| 聖 也 | 「美味しい! 涼介くんの分」 |
| と、コロッケを差し出す。 | |
| 涼 介 | 「(受け取り)どうも」 |
| 聖 也 | 「お金よろしく」 |
| 涼 介 | 「え……(肉屋に)いくらですか?」 |
| 肉 屋 | 「二つで160円」 |
| 涼 介 | 「160円くらい出せよ(と、ブチブチ言いながら金を払う)」 |
| 聖 也 | 「(肉屋に)じゃあ、狸橋商店街のみなさんとは、今は全く交流ないんですか」 |
| 肉屋 | 「10年一昔、20年二昔だからね、みんなどこに行ったのか……」 |
| 聖 也 | 「判りました。コロッケあと3つ下さい」 |
| 涼 介 | 「違うんだから食べなくたっていいでしょ」 |
| 聖 也 | 「ここはここで美味しいです」 |
| 聖也、コロッケを受け取ると、一つを頬張りつつ歩き出す。 | |
| 涼介、240円を払って聖也を追いかける。 | |
| 聖 也 | 「(口ずさむ)♪今日もコロッケ、明日もコロッケ……♪」 |
| 涼 介 | 「?」 |
| 聖 也 | 「大正時代に流行った歌ですよ」 |
| 涼 介 | 「なんでそんなもん知ってるんですか?」 |
| 聖 也 | 「(首を竦め)その頃からコロッケは一般的にも食べられるようになったんです」 |
| 涼 介 | 「どうでもいいけど、食べながら歩くのってお行儀悪くないですか?」 |
| 聖 也 | 「でも、これが楽しいんですよ。懐かしいなあ、学校帰りに友だちとコロッケを食べながら歩きました。涼介くんはそんなことしませんでしたか?」 |
| 涼 介 | 「俺たちが学校の帰りに寄るのはハンバーガー屋。ポテトつまみながら語り合ってたけど」 |
| 聖也、肉屋を見つけ―― | |
| 聖 也 | 「あったあった。(と駈け寄り)すみません、コロッケ3個下さい。(涼介に)1個は涼介くんのですからね」 |
| 涼 介 | 「俺、別の商店街行ってコロッケ買ってきます。一緒に行動するより効率的でしょ?」 |
| 聖也、フト、振り返る。 | |
| 涼 介 | 「どうしたんですか?」 |
| 聖 也 | 「……誰かが僕のコロッケを狙っている」 |
| と、辺りを見回す。 | |
| 涼 介 | 「誰も狙いませんって。じゃ……」 |
| と、去ってゆく。 | |
| 聖也、まだ辺りを気にしている。 | |
| × × | |
| ――少し離れた物陰。 | |
| 聖也の視線を避けて身を隠した人物がいる。 | |
| その足許。 | |
| □ ホームズ・エージェンシー・社内 | |
| 京子、パソコンに向かい、ネットの掲示板に書き込んでいる。 | |
| “狸橋商店街にあった亀屋というコロッケ屋さんの情報求む!” | |
| 電話が鳴る。 | |
| 京 子 | 「(出て)はい、ホームズ・エージェンシーです」 |
| 電話の声 | 「(ありがちな電気処理した声)……手を引け」 |
| 京 子 | 「はい?」 |
| 電話の声 | 「コロッケ探しをやめるんだ」 |
| 京 子 | 「あのう、どうしてコロッケを探しちゃいけないんですか?」 |
| 電話の声 | 「やめないと後悔することになるぞ」 |
| 京 子 | 「後悔? あの、仰言ってることが判りません。失礼します」 |
| と、切ってしまう。 | |
| 京子、気にせず、ネットの書き込み作業に戻る。 | |
| □ また別の商店街 | |
| 涼介、肉屋を見つけ、入っていく。 | |
| 涼 介 | 「すいませーん」 |
| と、先客がいた。五十嵐刑事である。 | |
| × × | |
| 二人、歩きながら―― | |
| 五十嵐刑事 | 「(食べながら)聞き込み張り込みの時の定番なんだよ」 |
| 涼 介 | 「! じゃ、詳しいですよね? 横浜のコロッケ」 |
| 五十嵐刑事 | 「まあね」 |
| 涼 介 | 「狸橋商店街ってありましたよね?」 |
| 五十嵐刑事 | 「狸橋……懐かしい名前だな」 |
| 涼 介 | 「そこの亀屋ってコロッケ屋さん、知ってます?」 |
| 五十嵐刑事 | 「ああ、あそこは旨かったなあ」 |
| 涼 介 | 「商店街がなくなってどうなったか知りませんか?」 |
| 五十嵐刑事 | 「いや……(と、考える)」 |
| 涼 介 | 「(その様子に)どうしたんですか?」 |
| 五十嵐刑事 | 「ン……」 |
| × × | |
| 少し離れた場所から2人を窺っている男の足。 | |
| □ ホームズ・エージェンシー・社内 | |
| 涼介、京子、金田一少年が買ってきたコロッケを皿に並べながら―― | |
| 京 子 | 「ふうん、コロッケ、五十嵐さんにも思い出の味なんだ」 |
| 涼 介 | 「京子ちゃんも買い食いした?」 |
| 金田一少年 | 「僕はベーカリーのイート・インで……」 |
| 涼 介 | 「お前に聞いてない」 |
| 京 子 | 「クレープ! 御徒町に美味しい店があったの! あそこのクレープもう一回食べてみたい」 |
| 涼 介 | 「なんで御徒町? 原宿じゃないの?」 |
| 聖也が帰ってくる。 | |
| 聖 也 | 「ただいま」 |
| 京 子 | 「お帰りなさい。見つかました?」 |
| 聖 也 | 「(ため息で)20年……時間の壁は厚いですね」 |
| テーブルの上には、小皿に乗ったコロッケが沢山並んでいる。 | |
| 聖 也 | 「(笑顔)おお、買い集めてくれたんですね」 |
| 京 子 | 「一くんも頑張ってくれました」 |
| 涼 介 | 「俺も頑張ったよ」 |
| 金田一少年 | 「コロッケってどれも同じかと思ってたけど、並べて見るとかなり違う」 |
| 聖 也 | 「そうですね。一くんも食べて下さい」 |
| 金田一少年 | 「僕はいいです」 |
| 聖 也 | 「頼りにしてるんです。パセリ入りが判ったのは一くんだけですからね」 |
| 涼介・京子 | 「すいません、判らなくて」 |
| 金田一少年 | 「栄養が偏りそうで……」 |
| 聖 也 | 「京子ちゃん、野菜ありますか?」 |
| 京 子 | 「はい。さっき必死にカットしましたよ」 |
| と、大皿に山盛りのキャベツの千切りを持ってくる。 | |
| 聖 也 | 「いいですねぇ、コロッケやトンカツにはキャベツが相性ぴったり。いただきます」 |
| と、食べ始める。 | |
| 金田一少年も食べる。 | |
| 玄関のチャイムが鳴り、「お待たせしました!」と入ってきたのは、蕎麦屋の出前。 | |
| 蕎麦屋の出前 | 「力うどん10個ですね。8000円になります」 |
| 京 子 | 「頼んでませんけど」 |
| 再びチャイムが鳴り、「□□ピザでーす!」と、ピザの配達員が入ってくる。 | |
| 京 子 | 「ピザも頼んでませ!ん」 |
| 蕎麦屋の出前・ピザの配達員 | 「えーッ、高野聖也さんって方から注文受けたんですけど」 |
| 京子たち、聖也を見る。 | |
| 聖 也 | 「頼んでませんよ。でも、ピザコロッケ力うどん……食べると美味しいかも」 |
| × × | |
| 京子、ため息で―― | |
| 京 子 | 「……また無駄なお金が出ちゃった」 |
| 涼 介 | 「やっぱり自分で頼んだんだよ。見てよ、あの食べっぷり」 |
| 聖也、うどん、ピザをおかずに(?)コロッケを食べている。 | |
| 京 子 | 「……昼間、脅迫電話みたいなのがあったの」 |
| 涼 介 | 「脅迫?」 |
| 京 子 | 「コロッケ探しから手を引け、って」 |
| 涼 介 | 「じゃ、嫌がらせで出前を……」 |
| 京 子 | 「全然嫌がらせになってないみたいだけど」 |
| 聖 也 | 「(ニコニコ)そうですね」 |
| 涼 介 | 「(考え)そいつ、なんでコロッケ探して欲しくないわけ?」 |
| 京 子 | 「判ンない」 |
| 聖 也 | 「きっと独り占めしたいんですよ。どれだけ美味しいんでしょ、幻のコロッケ(と、ワクワク)」 |
| 京 子 | 「……なんかイヤなことが起こりそう」 |
| □ 横浜みなと署・刑事課フロア | |
| 五十嵐刑事、ある事件の捜査記録を読んでいる。 | |
| 五十嵐刑事 | 「(真顔で)……」 |
| 桃がやってくる。 | |
| 桃 | 「五十嵐、何をやってるんだ」 |
| 五十嵐刑事 | 「ちょっと昔のことを思い出しまして……」 |
| 桃 | 「(資料の日付を見て)20年前の事件じゃないか。行くぞ」 |
| 五十嵐刑事 | 「はい」 |
| 桃と五十嵐刑事、出て行く。 | |
| 五十嵐刑事のデスクの上に置かれた捜査資料。 | |
| □ また別の商店街 | |
| 聖也、ホクホク揚げたてのコロッケに齧りつき―― | |
| 聖 也 | 「美味しい!」 |
| 涼 介 | 「(呆れ顔で)今日も元気ですねえ」 |
| 聖 也 | 「はい(と、食べる)次に行く商店街調べて下さい」 |
| 涼 介 | 「了解!」 |
| 涼介、少し離れたところに停めたバイクのところへやってくる。 | |
| 地図帳を取り出かけ、あれ? となる。 | |
| しゃがんで、顔を歪めて悲鳴を上げる。 | |
| 聖也、何事かとやってくる。 | |
| 聖 也 | 「どうしました?」 |
| 見ると、両方のタイヤが鋭利な刃物で切り裂かれている。 | |
| 涼 介 | 「(怒り心頭で)ふざけんなよ! ローンいくら残ってると思ってンだよ!」 |
| 聖 也 | 「いくらなんですか?」 |
| 涼 介 | 「そうじゃなくて! 誰がやったんだよ!」 |
| と、辺りを見回す。 | |
| 聖 也 | 「……これもコロッケ絡みの嫌がらせなんでしょうか?」 |
| 涼介、泣いている。 | |
| ――C・M―― | |
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