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●喰いタン 第8回 (1)

□ ホームズ・エージェンシー・全景
□ 同・社内
金田一少年がよそいきの恰好をして立っている。
横には、旅行鞄。
京 子「羨ましいなあ、サンフランシスコかあ」
聖也、美雪を抱いている。
涼 介「金田一、一人で飛行機乗るのか?」
金田一少年「もちろんです。涼介くんは一人で飛行機乗ったことないんでしょ」
涼 介「――(図星)。ウルサイよ」
聖 也「私たちも行きましょう。冬の北海道グルメツアーなんてどうですか?」
涼 介「いいっすねぇ! 雪見ながら温泉浸かって……」
聖 也「海老、蟹、鮭、ジンギスカン……(と、涎を垂らしそう)」
京 子「そんなお金ありません!」
聖也、涼介、ガックリ。
京 子「(金田一少年に)成田まではどうやって行くの?」
金田一少年「電車で行きます」
京 子「送ってってあげるよ。どうせヒマだし」
金田一少年「ホントですか? ありがとうございます」
京 子「じゃ、行こう」
金田一少年「(聖也に)美雪、よろしくお願いします」
聖 也「(微笑で)行ってらっしゃい」
京 子「留守番お願いします」
と、金田一少年と一緒に出て行く。
涼 介「京子ちゃん……」
聖 也「京子ちゃんも気分転換したいんでしょう。ずっとここに籠もって、来る宛のない依頼の電話を待ってるか、私たちの食事を作るかですからね」
涼 介「(ため息で)だけど、なんでこう依頼が少ないのかなあ。結構活躍して感謝状も増えてるんだけど」
――和室の壁に飾られた感謝状。
聖 也「どうしてですかねぇ」
涼 介「誰かが来る前のほうが依頼が多かった気がする」
聖 也「そろそろお腹が空きましたね。涼介くん、京子ちゃんの代わりに何か作って下さい」
涼 介「俺が!?」
聖 也「涼介くん、独身生活が長くなりそうだから、料理勉強しておいたほうがいいですよ」
涼 介「(ムッと)どういう意味だよ」
聖也、冷蔵庫の中を覗き込んでいる。
聖 也「何もありませんねぇ」
事務所の電話が鳴る。
涼 介「(出て)はい、ホームズ・エージェンシー……あ、京子ちゃん……」
聖也、?
涼 介「……判った、すぐに行く。京子ちゃんは金田一送ってやって。(と、電話を切り、聖也に)すぐ裏で事件が発生してるみたいだって」
と、飛び出してゆく。
聖 也「(美雪を撫でながら)食べ物絡みなんでしょうか?」
□ □□公園・外
パトカーが数台停車し、制服警官たちが野次馬を整理している。
聖也と涼介がやってくる。
聖 也「(制服警官に)高野だ」
制服警官、敬礼して二人を通す。
涼 介「おー、顔パスOKになりましたねぇ」
□ 同・内
腹部から出血している中年男の死体。
桃、五十嵐刑事が手を合わせている。
やってきた聖也と涼介も手を合わせる。
桃、気づき、ムッ。
聖 也「どういった殺人なんですか?」
桃  「残念ながら食事絡みではない。帰れ」
涼 介「そんなこと言わずに。協力しますよ。いや、させて下さい!(と、頭を下げる)」
桃  「五十嵐」
五十嵐刑事「被害者は今野茂。これは持っていた免許証で確認。鋭利な刃物で刺され、死亡。あの女子高生が発見した時にはまだ息があった」
離れたところで新海刑事が女子高生に話を聞いている。
五十嵐刑事「被害者は、『ユタカ』と言い残して絶命したそうだ」
涼 介「ユタカ!?」
聖 也「ふむ、ダイニングメッセージですね」
涼 介「ダイニングじゃなくて、ダイイングでしょ」
聖 也「冗談です」
男の死体が担架に乗せられる。
桃  「(救急隊員に)待って下さい」
桃、死体を観察する。
聖也、涼介も同じように観察する。
聖也、ン? となり、死体の顔に鼻を近づける。
聖 也「甘い匂いがします」
五十嵐刑事、! 死体の口の匂いを嗅ぐ。
五十嵐刑事「緒方警部、これは麻薬の匂いです」
桃  「五十嵐ぃ! いつから喰いタンになった!」
五十嵐刑事「(思わず)すみません……あ、いやホントです」
聖 也「(も匂いを嗅ぎ)たしかに麻薬常習者の匂いですね」
涼 介「(驚いて)そんなことなんで知ってるの!?」
桃  「確かなのか? 五十嵐」
五十嵐刑事「はい。私もキャリア長いですから、この程度の知識は……」
桃  「……」
聖也、死体の衣服についた白い染みが気になり、匂いを嗅ぐ。
桃  「どうした?」
聖也、その染みを舐める。
涼 介「ちょっと! 何やってンの」
聖 也「(考えて)……」
□ お好み焼き屋・店内
巨大な鉄板の上で焼ける何枚もの大阪風お好み焼き。
聖 也「(手を合わせて)いただきまーす」
と、マイ箸で食べようとするが――
店 員「お預け!」
聖也、動きが止まる。
店 員「最後の仕上げが残ってます」
と、マヨネーズやソースを鮮やかな手付きでお好み焼きに振りかけてゆく。
聖 也「うーん、ますます美味しそうだ」
店 員「はい、どうぞ」
聖 也「いただきます」
と、食べ始める。
その前に座る涼介、呆れ顔で見ている。
聖 也「(熱くて)はふはふ、あふいへふ」
涼 介「ね、なんでお好み焼き食べてるの」
聖 也「ほうはへす(捜査です)」
涼 介「なんでお好み焼き食べるのが捜査になるわけ? 俺たちも“ユタカ”探しをしたほうがいいんじゃない?」
聖 也「人探しは桃ちゃんたちに任せておけばいいでしょ?」
涼 介「じゃ、何探すの」
聖 也「折角だから涼介くんも食べて下さい」
と、また口に頬張り、熱チチ。
涼介、ウンザリ顔で食べ始めるが、
涼 介「熱ッ!」
聖 也「(満足そうに)熱ウマー!」
□ 別のお好み焼き屋“粉まみれ”・店内
聖也、鉄板の上の最後の一切れを食べる。
聖 也「美味しい!」
胸に【手塚】の名札をつけた店員、控えていて――
手 塚「次、焼きますか?」
涼 介「いや、もういいんじゃないですか?」
聖 也「お願いします」
涼 介「あの、もう10軒目なんですけど」
聖 也「まだまだ大丈夫です」
涼 介「お金の心配してるんです。最近京子ちゃんがウルサくて……」
聖 也「(手塚に)どんどん焼いちゃって下さい」
涼 介「無視かよ」
手 塚「じゃ、広島風行きましょう」
と、水に溶いた生地だけを鉄板に広げようとする。
聖 也「あ、ちょっと待って……」
と、水で溶いた生地に指を入れ、舐める。
聖 也「……ふむ」
手塚を見て、ニコッ。
□ 同・表
聖 也「ごちそうさま!」
聖也と涼介が出てくる。
聖 也「涼介くん、桃ちゃんに電話して下さい。あの人、犯人です」
と、店を振り返る。
涼 介「え!?」
聖也、手塚を見ている。
その時、涼介の携帯が鳴る。
涼 介「(出て)五十嵐さん、今電話しようと……え!? 犯人が捕まった!?」
聖也、?
□ ある団地・全景
□ 同・今野家・室内
桃と五十嵐刑事他、家宅捜索中。
聖也と涼介がやってくる。
涼 介「奥さんが犯人って本当ですか?」
桃  「裏付け捜査をしているところだ」
奥にいた、絵に描いたようなイケメンの男がやってくる。
聖 也「あの、こちらは?」
五十嵐刑事「ああ、麻薬取締官の結城さんだ」
涼 介「麻薬取締官!?」
イケメン(結城寛)、麻薬取締官証を見せ――
結 城「結城です」
涼 介「なんか、カッコいいんですけど……」
結 城「(五十嵐刑事に)こちらは?」
五十嵐刑事「ホームズ・エージェンシーという探偵事務所の人間です」
聖 也「高野聖也です」
涼 介「野田涼介です」
結 城「!? どうして探偵が現場に……」
桃  「なりゆきです。気にしないで下さい」
結 城「……」
桃  「(聖也たちに)麻薬取締官は厚生労働省の所属だ。我々同様拳銃の携行も認められている。殺された今野さんは麻薬中毒だった」
結 城「麻薬取引に絡んだ殺人だと思ったのですが、夫婦喧嘩の延長だったとは。私は引き上げることに……」
聖 也「奥さんは犯人じゃありません」
桃、五十嵐刑事、結城、!
聖也、台所へ行く。
ホットプレートを見つけ、頷くと、収納庫を覗き、中から小麦粉を取り出す。
桃  「何してるんだ」
聖 也「被害者は殺される前にお好み焼きを食べてたんじゃないですか?」
桃  「(驚き)その通りだ。何故判った」
聖 也「被害者の洋服に小麦粉がついていました」
□ フラッシュ
――公園。
死体の洋服に、白い染み。
桃の声「ああ、確かについていた」
□ 元の室内
聖 也「お好み焼きを作る時に溶いた小麦粉のはずです」
冷蔵庫を覗き、中から肉や野菜を取り出す。
五十嵐刑事「解剖の結果、確かに被害者は殺される前にお好み焼きを食べていた。奥さんも自宅でお好み焼きをやっている時に口論になり、出かける夫の後を追って公園で刺したと自白した」
聖 也「涼介くん、他に小麦粉がないか探してもらえますか?」
涼 介「(あちこちの棚を開けて)ないみたい」
聖 也「桃ちゃん、ここにある材料では被害者が食べたお好み焼きを再現出来ません。だから、奥さんは犯人じゃありません」
結 城「……」
桃  「材料は揃ってるじゃないか」
五十嵐刑事「そりゃ、具材は全部食べちゃったんでしょ」
聖 也「ユタカがないんです」
桃  「ユタカ?」
聖 也「はい、被害者がダイニングメッセージに残した……」
涼 介「ダイインクメッセージ」
聖 也「ユタカは、小麦粉の品種の名前、ハルユタカのことです」
みんな、!
桃  「……小麦粉が違うというのか?」
聖 也「被害者の洋服についていたのは、薄力粉に強力粉のハルユタカをブレンドしたものでした」
結 城「(驚いていて)……キミは、舐めただけで小麦粉の種類が判るのか?」
聖 也「はい」
五十嵐刑事「それが彼が喰いタンと呼ばれてる所以(ゆえん)でして……」
桃  「五十嵐、余計なことはいい。鑑識にもっと詳しく分析させろ」
五十嵐刑事「判りました!」
結 城「じゃあ、犯人は……」
□ お好み焼き屋“粉まみれ”・店内
聖也、涼介、桃、五十嵐刑事、結城。
店 長「手塚ですか? さっきまでいたんですが、電話がかかってきて急に帰るって言い出して……」
桃  「家は!」
店 長「ちょっと待って下さい」
と、事務室へ引っ込む。
結 城「しかし、彼が犯人だという証拠は? ハルユタカを使ってる店で働いてるだけで疑うのは……」
聖 也「彼、甘い匂いがしました」
五十嵐刑事「麻薬か!」
桃  「……急に姿を消したのも怪しい」
結 城「……」
店長が事務室から出てくる。
□ ホームズ・エージェンシー・全景
□ 同・社内
テーブルには、ホットプレートが用意され、広島風お好み焼きが出来上がりかけている。
聖也、ワクワク待っている。
京 子「これが、ハルユタカ……これが、春よ恋」
と、買ってきた小麦粉の袋を並べて見せる。
涼 介「春よ恋!? なんか、楽しくなる名前だね」
京 子「南のめぐみ、麦のなごみ」
涼 介「(見てて)へえ……色々あるんだ」
京 子「薄力粉にハルユタカのような強力粉をブレンドすると、粘りがあってふっくらとしたお好み焼きが出来るんですって」
涼 介「へえ……」
京 子「涼介くん、薄力粉、強力粉の違いって判ってる?」
涼 介「全然」
京 子「小麦粉に含まれてるグルテンの量によって分けられるの」
涼 介「質問。グルテンって?」
京 子「粘りけのあるタンパク質。薄力粉はサラサラしていて、ケーキやお菓子、お好み焼きに向いてるの。強力粉は粘りけがあって、パンとか中華麺。あと中力粉っていうのがあって、うどんとか餃子の皮とかに向いてるの」
涼 介「なるほどぉ」
聖 也「京子ちゃん、もう出来たんじゃないですか!?」
京 子「ホントだ。じゃ、仕上げに……(と、ソースをかける)」
聖 也「オタフクソースですね。広島風お好み焼きと言えばこれですね」
京 子「はい、出来上がり」
ソースが鉄板でジュージュー跳ねる。
聖也・涼介「(手を合わせて)いただきます!」
と、食べ始める。
聖也・涼介「美味しい!」
京子、ニコニコ。
涼 介「でも、何でお好み焼きって判ったの?」
聖 也「はい?」
涼 介「だって、パン屋とか手打ちうどん屋でも小麦粉がつく可能性はあるじゃない」
聖 也「パンもうどんも、つくとすれば粉のままじゃないですか? 被害者はそれを職業にしている人じゃないし、水に溶かした小麦粉じゃないとあんなつき方はしません」
涼 介「ふうん、食べることには敏感だねえ」
その時、チャイムが鳴り、桃が結城と一緒に入ってくる。
聖 也「あ、桃ちゃん」
京子、結城を見て、怪訝。
聖 也「麻薬取締官の結城さん」
京 子「こんばんは。出水です」
結 城「よろしく」
桃  「例のお好み焼き屋の店員、手塚が死んだ」
聖也、涼介、!
桃、ホットプレートのお好み焼きが気になる。
桃  「彼は麻薬の密売人だった」
結 城「うちの別の班が追っていた人物でした」
聖 也「もしかして、殺されたんですか?」
桃  「いや、自殺だ」
涼 介「自殺!?」
桃  「遺書が残っていた。今野さんを麻薬絡みのトラブルで殺したと書いてあった」
涼 介「怪しすぎるじゃないですか」
結 城「彼は客のリストを持っていました。しかし、我々が知りたいのは麻薬の入手先です。手がかりが失われて残念です」
聖 也「自殺に見せかけて殺されたんじゃないですか? 麻薬組織に」
桃  「自殺に間違いない」
涼 介「自殺しなきゃいけないようにプレッシャーかけたんだよ、家族を皆殺しにするとか」
桃  「麻薬には莫大な金が動く。その可能性は大いにある」
結 城「しかし、証拠は何もない」
聖 也「組織も証拠を残すような真似はしないでしょ」
桃  「どうでもいいが、お好み焼き、焦げてるぞ」
みんな、!?
京 子「あ、ホントだ」
と、慌ててお好み焼きを皿に移す。
桃  「だいたい作り方がなってない。貸せ」
と、小麦粉を溶かした生地を奪い、慣れた手付きで作り始める。
結 城「(呆れて)じゃ、私はお先に……」
京 子「一緒に食べませんか?」
結 城「まだ仕事が残ってますから」
と、去る。
聖 也「桃ちゃんはいいんですか?」
桃  「よくない。しかし見てられない」
聖 也「桃ちゃん、もしかして広島出身ですか?」
桃  「(広島弁で)じゃかあしい、悪いんか、こら」
みんな、ブルブル首を振る。
     ×     ×
出来上がった広島風お好み焼き。
涼 介「広島風じゃん」
桃  「(広島弁で)広島風も何も、これがお好み焼きじゃ」
聖 也「風って言っちゃいけないんだ」
桃  「だいたいお好み焼きは焼き方がぶちくそ難しいんじゃ」
聖也・涼子・涼介「ぶちくそ?」
桃  「(ジロッ)凄いって意味じゃ。それぐらい文脈で判るじゃろが」
聖也・涼子・涼介「すいません」
聖 也「桃ちゃん、美味しそうですね」
桃  「うまいに決まっとるじゃろが。よし、後はソースとマヨネーズかけて、食え」
聖 也「桃ちゃんは食べないんですか?」
桃  「うちはいい。ぶちうまじゃけん、楽しんで食いんさい」
と、立ち上がり、出て行く。
京 子「ありがとうございます」
涼 介「美味しい」
聖也、食べながら桃を見送って――
□ ホームズ・エージェンシー・全景(夕方)
チェロの演奏。
“春よ来い”
□ 同・社内
聖也、中二階でチェロを弾いている。
美雪、傍の座布団の上で気持ちよさそうに眠っている。
京子、いそいそと出かける準備をしている。
涼 介「どこ行くの?」
京 子「結城さんとディナー」
涼 介「なんで!?」
京 子「なんで、って……お誘いいただいたから」
涼 介「(焦って)なんで結城さんが京子ちゃん誘うの!?」
京 子「なんか聞きたいことあるみたい。じゃ、今日はこのまま帰ります。後よろしく」
と、出て行く。
涼 介「(不安)京子ちゃん……」
聖也、思いっきりロマンチックな曲を弾き始める。
涼介、! ますます不安になって――
□ 高級フレンチレストラン・全景
――一軒家レストラン。
聖也の弾くロマンチックな曲、続いて――
□ 同・店内
緊張の京子、ギャルソンに案内されてやってくる。
奥の席で待っていた結城が立ち上がって迎える。
結 城「(微笑で)こんばんは」
京 子「こんばんは。なんか雰囲気よすぎて緊張しちゃって……」
結 城「大丈夫。すぐに居心地のいい空間になりますよ」
京 子「(微笑で)……」
□ 同・外
涼介が、物陰から店内を窺っている。
京子と結城が楽しそうに食事をしている。
涼 介「(心配そうに)……」
京子と涼介、時折顔を近づけて話をする。
涼 介「近すぎるって」
と、持参したおにぎりを頬張る。
□ ホームズ・エージェンシー・社内
ホットプレートで焼ける広島風お好み焼き。
聖 也「(手を合わせて)いただきます」
聖也、食べ始めるが、いつもの勢いはない。
聖 也「……ひとり飯侘しさ感じる部屋の広さかな。字余り」
□ 高級フレンチレストラン・表
涼介、寒さに震えながらレストランを窺っている。
京子にコートを着せる結城が見える。
涼 介「くぅ……」
二人、出て来る。
涼介、慌てて物陰に隠れる。
涼 介「まさか、テイクアウト!?」
結城、待たせてあるタクシーに京子を乗せ、運転手に金を渡す。
京子、遠慮するが、結城は受け取らず、発車を促す。
タクシー、走り去る。
涼介、ホッとなって座り込む。
誰かが涼介の前に立つ。
涼介、見上げて、!
結城である。
涼 介「……こんばんは」
結 城「(微苦笑で)張り込みの下手な探偵さんだな」
涼 介「――」
□ バー(例えば)・店内
涼介と結城。
結 城「残念ながら、キミの心配するようなことはない」
涼 介「……本当ですか?」
結 城「私は女性には興味がない」
涼 介「え……(ちょっと後ずさり)」
結 城「(微苦笑で)誤解しないでほしいな。男にも興味はないよ」
涼 介「(疑心暗鬼)じゃあ何に興味が……」
結 城「(厳しい表情で)一切の麻薬をこの世の中からなくすことだけだ」
涼 介「!」
結 城「麻薬は人間を破壊する。一時の快楽に溺れ、廃人になった人間を何人も見てきた」
涼 介「……」
結 城「(静かに、熱く)人間は弱い生き物だ。そんな弱さにつけ込んで商売する連中は許せない」
涼 介「(頷く)……」
結 城「……高野聖也」
涼 介「え?」
結 城「(涼介を見て)彼はどういう男なんだ」
涼 介「(戸惑い)どう、って……食いしん坊の大食いですけど」
結 城「素性は? どこの大学を出ているの?」
涼 介「……聞いてません。フランスから帰って来たところで、中国にもいたことがあり……」
結 城「経歴を知らない? そんな男の下で働いてるの」
涼 介「オーナーの知り合いなので……」
結 城「オーナーはどういう人間なんだ?」
涼 介「いや……まだ会ったことなくて」
結 城「一年以上働いてるんだろ?」
涼 介「……」
結 城「自殺したお好み焼き屋の店員は、我々が店に行く少し前に姿を消している。情報が洩れたとしか思えないのだ」
涼介、!
結 城「あの時、我々が店に行くことを知っていたのは、捜査員の他はキミと、高野聖也」
涼 介「――!」
――C・M――
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(2)へ続く

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