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●喰いタン 最終回 (2)

□ みなと署・表
バイクを停めた涼介、署に駈け込んでいく。
□ 同・刑事課フロア
山内署長が電話を受けている。
山内署長「(沈痛)……そうか、見つからんのか」
山内署長の横に、結城が心配そうな表情で立っている。
そこへ、涼介が入ってくる。
山内署長「あ、野田くん……」
涼介、入ってきた勢いのまま、結城に迫り、胸倉を掴む。
涼 介「お前が高野さんを殺した」
結 城「(気圧されて)……私は関係ない」
涼介、結城を殴ろうとする。
山内署長「(割って入り)やめなさい」
涼 介「(結城を見据えて)お前が倉庫に呼び出したんじゃないか」
結 城「あの呼び出しメールは偽装されたものだ。結城取締官が発信したものじゃない」
涼 介「!? ウソだ」
結 城「本当だ。なぜ私がキミたちを殺さなきゃいけないんだ」
涼 介「お前が組織と繋がってるからだ!」
結 城「誤解するのもいい加減にしろ!」
涼 介「――」
山内署長「今は、喰いタンの無事を祈ろう」
涼 介「……」
□ ホームズ・エージェンシー・全景(数日後)
□ 同・社内
涼介と京子、脱け殻のようにいる。
涼 介「……なんか、静かだね」
京 子「……うちの事務所って、こんなに広かったっけ?」
涼 介「……金田一もいないからな」
二人、社内を見回す。
『いただきます』の掛け軸。
チェロの前で昼寝をする美雪。
京 子「……もう、二度と、会えないの?」
涼 介「……」
京子、涙が溢れる。
涼 介「(励まそうと)高野聖也だぜ、喰いタンだぜ、フラッと帰って来るかも……」
二人、入口を見る。
と――桃と五十嵐刑事が入って来る。
涼 介「高野さん、見つかったんですか!?」
桃  「(首を振り)見つかったのは……」
五十嵐刑事「これだけです」
と、持参した金の箸一本と白いコートを渡す。
涼 介「――」
京 子「どうしてこんなことに……」
桃  「……麻薬組織にとって、喰いタンは厄介な存在だ。平凡な夫婦間の事件に終わらせようとした殺人を、密売人の犯罪と見抜いたんだからな。それにあの倉庫は麻薬取締部が翌日捜査する予定だった。組織は、喰いタンと一緒に倉庫を爆破して証拠を隠滅しようとした」
涼 介「やっぱり警察情報が洩れてたんだ」
桃  「否定は出来ない」
涼 介「(怒りで)結城……」
桃  「……確証はない」
涼 介「桃ちゃんも疑ってるんですね?」
桃  「……」
五十嵐刑事「……喰いタンは麻薬組織を追い詰めるつもりなんかなかったんだろうな。食べ物にしか興味がなくて、舌が冴えてた。だから……(涙を堪えている)」
涼 介「……」
そこへ、いかにもなアメリカンファッションの金田一少年が現れる。
金田一少年「ハロー、エブリワン! アイム・ホーム!」
みんな、ジロッと振り返る。
金田一少年「みなさんにお土産買ってきましたよ……(みんなの様子に)はい?」
□ みなと署・刑事課フロア
桃、五十嵐刑事、戻って来る。
山内署長と話していた結城が振り返る。
桃  「(厳しい目で)……」
結 城「(悲しそうに)高野さんのこと、残念です」
桃、黙って頭を下げ、自分の席へ――
結 城「……(山内署長に)じゃ、麻薬取締部に戻ります」
と、一礼して出て行く。
桃、見送る。
山内署長、そんな桃を見ている。
□ 横浜の街
結城が歩いている。
少し離れて、涼介、尾行している。
結城、あるラーメン屋に入っていく。
涼 介「……」
     ×     ×
涼介、怪訝に時計を見る。
涼 介「食べるの遅!」
涼介、ラーメン屋の店内が見えるところまで移動し、!
結城の姿がない。
涼介、ラーメン屋に飛び込み――
涼 介「すみません、スーツ着た背の高い男は!」
店主「奥から出たけど?」
もう一つ出口があった。
涼介、!
□ 同・路地
涼介、ラーメン屋のもう一つの出口から出てきて左右を見る。
結城の姿はない。
涼 介「チクショウ」
涼介、細い路地を抜けていく。
いくつかの店舗の裏口がある。
□ 同・表通り
涼介、路地を抜けて来る。
そこは、繁華街。
見回すが、結城の姿はない。
メイド服姿の女の子がチラシを配っている。
涼介、しかし、眼中になく、結城を探す。
すぐ近くに、グランドキャバレー“パリー”がある。
□ グランドキャバレー“パリー”・店内
フラメンコ音楽が始まる。
舞台上にスポットライトが当たり、煽情的な衣裳の女性が踊り始める。
――“カルメン”。
そして、相手役の男が登場。
闘牛士(マタドール)の衣裳を着たその男は――聖也。
聖也、“カルメン”役の女性と情熱的な踊りを展開する。
□ 同・オーナーの部屋〜楽屋
――ダンサーたちの楽屋の奥にある。
結城が、この店のオーナー・アイリンに会っている。
世話係の男・林がアイリンに奉仕している。
アイリン、結城に札束を放る。
結城、自嘲気味の笑いを浮かべながら札束を見る。
結 城「約束と違うんじゃないですか?」
アイリン「イヤならやめれば?」
結 城「私はあなたを逮捕することもできるんですよ」
アイリン「ふうん、自分が薄汚いモグラだって白状する気?」
結 城「もみ消しは得意ですから」
アイリン「こっちはいくつも罠を仕掛けてあるわ。モグラちゃん」
結 城「(口を歪ませ)ま、そんな気はありませんけどね」
と、札束を拾う。
アイリン「(笑って)仲良くやりましょう」
結 城「次の取引はいつ?」
アイリン「警察は何か掴んでる?」
結 城「近々動きがありそうだとは睨んでる。それで……」
アイリン「(厳しい口調で)余計な質問はしないで」
結 城「……」
結城、部屋を出る。
と――聖也とパートナーが楽屋に入って来る。
結城、思わぬ鉢合わせに、愕然。
聖也、結城を見る。
結 城「――」
聖也、さして気にする様子もなく、結城に会釈して鏡の前に座る。
結 城「(訳が判らず)……」
聖也、結城はまったく気にせず、汗を拭っている。
結 城「(呟く)……どういうことだ」
――C・M――
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