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●喰いタン2 第1回 (1)

□ 横浜の街
空からの眺望。
テロップ――横浜。
ナレーション「2006年、一人の男が横浜の街に現れた」
スーツをビシッと着こなした男が走っていてる。
肉まんを奪った男を追いかけているのだ。
ナレーション「高野聖也。生まれも育ちも謎に包まれた彼だったが――」
□ 活躍する聖也
――前シリーズ・第七回から。
聖也、懐から金の箸を取り出すと――シャキーン! と構える。
聖 也「食いしん坊探偵、略して喰いタン!」
ナレーション「“喰いタン”を名乗り、横浜ホームズ・エージェンシーの仲間たちと様々な事件を解決した」
各回のクライマックスシーンを繋ぎ――
□ 香港での活躍(スペシャルから)
ナレーション「オーナーの命令で香港に行った喰いタンはここでも活躍。偽装豚肉の輸入に絡んで香港マフィアと日本のやくざを一網打尽にした」
ブルース・リーとなって悪人を退治する聖也。
□ 横浜の街
チャイナ服姿の聖也、歩いていく。
ナレーション「しかし、喰いタンはフラリと姿を消してしまう」
聖也の姿が雑踏に消えていく。
□ 世界各国の喰いタン
――韓国。
テーブルにズラリと並んだ韓定食。
韓国の民族衣裳姿の喰いタンが、シャキーン! と箸を構える。
聖也、食欲旺盛に食べる。
聖 也「(韓国語)美味しーい!」
韓国桃と韓国五十嵐刑事が見守っている。
韓国五十嵐刑事「(韓国語)犯人は誰だ!」
聖也の前に四人の容疑者が並んでいる。
聖 也「(その中の一人を指差し、韓国語)あの人です」
韓国桃「(韓国語)確保!」
     ×     ×
――パリ。
セーヌ川の流れとエッフェル塔が見えるオープンエアのレストラン。
聖也、フランス美女とフォアグラや牡蠣を食べている。
聖也、フォアグラを口に入れ、ン? となる。
フランス美女「(フランス語で)どうしたの? 喰いタン」
聖 也「(フランス語で)トリックが判りました!」
     ×     ×
――アラブの砂漠。
アラブの民族衣裳姿の聖也が、羊の丸焼きを食べている。
ベリーダンスが始まる。
王 様「(アラビア語)喰いタン、羊とラクダは丸々一頭用意してあるからな」
聖 也「(アラビア語)大丈夫かな」
王 様「(アラビア語)ははは、無理して全部食べなくてもいいぞ」
聖 也「いえ、一頭ずつで足りるかどうか」
王様、豪快に笑う。
聖也、それ以上に豪快に食べている。
     ×     ×
――ロシア。
ボルシチ、ピロシキ、キャビアなとが並ぶテーブル。
ロシアの民族衣裳姿の聖也がまたまた食欲旺盛に食べている。
いかにもロシアマフィアという男たちとの食事。
握り寿司が運ばれてくる。
聖 也「お!?」
ロシアマフィア「(ロシア語)ロシアでも日本の寿司は人気なんだ」
聖也、懐に手を入れる。
ロシアマフィアたち、! 一斉に拳銃やらマシンガンやらを構える。
聖也が取り出したのは、マイ箸。
ロシアマフィアたち、ホッとなる。
聖也、シャキーンと構えて寿司を食べる。
聖 也「(ロシア語)美味しーい!」
□ ホームズ・エージェンシー・全景
――ひっそりと佇む建物。
ナレーション「その頃、横浜ではとんでもない事が起きていた。しかし、喰いタンはまだ知らない」
□ イタリア・ベネチアのレストラン・店内
聖也、食べまくっている。
そこへ、子供がやってきて、聖也に封筒を渡す。
聖 也「(現地語で)ありがとう」
聖也、封を開ける。
中に入っていたのは――横浜・ラーメン“あかつき”の特別半額券。
聖也、ムムッ。
改めて封筒を見るが、差出人の名前はない。
聖也、券を見て――
聖 也「食べたーい!」
□ 船内
聖也、食欲旺盛に機内食(ラーメン)を食べている。
“あかつき”の半額券を見ながら。
聖 也「うーん、“あかつき”のラーメン、楽しみです」
と、ニコニコ顔。
乗務員「そろそろ横浜上空です」
聖也、ん? と、窓の外を見る。
聖也が乗っているのは――
□ ノンビリと空を行く飛行船
“喰いタン号”
□ 同・船内
下を見ていた聖也、
聖 也「あッ、ホームズ・エージェンシーです! 降りて下さい!」
乗務員「ここには降りられません」
聖 也「えーッ」
と――小さな旋風が起き、聖也の手から半額券が舞い上がる。
聖也、!
半額券、窓のわずかな隙間から外に吸い出されてしまう。
聖 也「は、半額券が……」
半額券は窓に張りついてはためいている。
聖也、隙間から箸を差し出してなんとか取ろうとする。
が――
聖 也「あっ……」
半額券は風とともに雲の彼方へ消えて行く。
聖也、窓に顔をへばりつけて悲しそうに見送る。
□ 飛行船発着場
着陸した飛行船から、聖也が降りてくる。
聖 也「(ガックリして)私、何のために横浜に帰ってきたんでしょう……」
□ ホームズ・エージェンシー・表
聖也がため息でやってくる。
看板、錆びてビスが外れ、今にも落ちそうに風に吹かれている。
聖也、気づかずに中へ入っていく。
□ 同・出入口
聖也、ドアを開けようとするが、開かない。
聖 也「あれ? 留守ですか? 京子ちゃん」
と、ドアの小窓から中を覗き込む。
誰もいなくてガランとしている。
ソファには埃避けの布まで被せられている。
聖 也「誰もいない……え? 潰れた? ホームズ・エージェンシー、解散!?」
□ タイトル
□ 商店街
聖也が考えながらやってくる。
聖 也「本当にどうしちゃったんでしょう」
ラーメン“あかつき”がある。
店の前に人だかりが出来ている。
聖 也「(ニコニコ)“あかつき”、相変わらず人気ですねぇ。何時間待ちなんでしょうか?」
が、パトカーも数台停まっていることに気づき、!
□ ラーメン“あかつき”・表
店の周りには立入禁止のテープが張られている。
聖也、野次馬をかき分けてやってきて――
聖 也「(制服警官に)ご苦労様」
と、入っていこうとする。
制服警官「(立ち塞がって)ダメダメ」
聖 也「私のこと、知らないんですか!?」
その時、店の中から――
五十嵐刑事「喰いタン!」
□ 同・店内
聖也、入ってきて――
聖 也「(五十嵐刑事に)あの人、私のこと知りませんでした。もう、ぷんぷんですよ」
現場検証していた桃が――
桃  「五十嵐ぃ!」
聖 也「あ、桃ちゃん! 相変わらずですね」
桃  「(睨んで)捜査の邪魔だ」
聖 也「(五十嵐刑事に)桃ちゃん、ますます男らしくなってますね」
五十嵐刑事「(小声で)そうなんだよ」
そこへ、深海刑事が従業員を連れてやってくる。
深海刑事「第一発見者です。出勤してきて店長の死体を発見したそうです」
従業員「スープの仕込みは従業員交替でやるんですが、店長は朝一番に来て味をチェック。それから自宅で作ってきた秘伝のタレを足して“あかつき”の味を作りあげるんです」
聖 也「店長が殺されたということは、もう二度とあの味は食べられないんですか?」
従業員「……ええ」
聖 也「せめて最後のタレでラーメンを作っていただけますか?」
従業員「秘伝のタレの容器が見当たらないんです」
聖也、!
従業員「いつも入れて運んでくる鞄ごとないんです」
五十嵐刑事「じゃ、そのタレを盗むために殺した!? となると犯人はライバルラーメン店」
桃  「決めつけるのは早い」
聖 也「判りました。(従業員に)じゃあ、秘伝のタレ抜きでいいですから食べさせて下さい」
桃  「何故だ、喰いタン」
聖 也「お腹が空きました」
桃  「五十嵐! つまみ出せ!」
五十嵐刑事「桃ちゃん、久しぶりに会ったんですから……」
聖 也「そうですよ」
桃  「(突慳貪に)半年も音信不通のヤツが何言ってる。私がどれだけ心配したか……」
聖 也「(笑顔で)桃ちゃん、僕のこと、思っていてくれたんですね!」
桃  「(ムカムカ)深海! つまみ出せ!」
聖也、深海刑事たちに両脇を抱えられて店の外へ出されてしまう。
□ 同・表(商店街)
五十嵐刑事が出てくる。
聖也、惣菜屋の店先で物欲しそうな顔でいる。
五十嵐刑事「喰いタン、金ないのか?」
聖 也「ユーロならあります」
と、ユーロ札を惣菜屋のおばちゃんに渡そうとするが――
おばちゃん「こども銀行券は使えないよ」
聖 也「違いますって」
五十嵐刑事「ホームズ・エージェンシーに行っ……てもしかたないか」
聖 也「やっぱり……」
五十嵐刑事「(頷き)ホームズ・エージェンシーは解散した」
聖 也「……京子ちゃんと涼介くんはどこにいるんですか?」
五十嵐刑事「さあ……どこで何をしてるのか……」
聖 也「……」
□ 横浜の街
学校帰りの金田一少年と黎が歩いている。
二人、問題の出しっこをしている。
金田一少年「1192年は?」
黎  「鎌倉幕府が出来た年」
金田一少年「ピンポン」
黎  「じゃあ、鳥羽・伏見の戦いは?」
金田一少年「慶応4年、1868年!」
黎、前方を見て、!
黎  「一くん……」
金田一少年「え?」
黎の視線の先に、聖也。
金田一少年、!
聖 也「(笑顔で)やあ、一くん。黎ちゃん」
黎  「(屈託なく)こんにちは」
金田一少年、思わず笑顔になるが――
金田一少年「……黎ちゃん、行こう」
と、聖也を無視して行こうとする。
聖 也「一くん?」
金田一少年「(ムッと)何してたんですか。香港から帰って来たと思ったらまたすぐにいなくなって。もう半年ですよ」
聖 也「色々とあったんですよ」
金田一少年「色々ってなんですか?」
聖 也「喋ると三時間ほどかかりますけど……」
金田一少年「僕たち六年生になったんです。中学受験で忙しいんです。塾に遅れますから」
と、黎の手を引っ張って行く。
聖也、淋しそうに見送る。
金田一少年、ズンズン歩いていく。
黎  「一くん、いいの?」
金田一少年「……」
金田一少年、徐々に歩くスピードが遅くなる。
金田一少年、立ちどまり、振り返る。
□ ある一軒家・表
玄関からアタッシュケースを持ったスーツ姿の男が出てくる。
涼介である。髭を剃り、髪を七三に分け、健康そうに日焼けして、別人のようである。
涼 介「(家の中へ、笑顔で)ありがとうございました! またよろしくお願いします」
と、頭を下げ、ドアを閉める。
涼 介「よっしゃ!」
と、ガッツポーズ。
が――ドキッとなる。
聖也が立っていたのだ。
聖 也「やあ、涼介くん」
涼 介「(一瞬笑顔になりかけるが、真顔で)高野さん……」
聖 也「何を売ってるんですか? ゴム紐? 百科事典? ミシン?」
涼 介「(慇懃に)そんなものは販売しておりません」
聖 也「食べられるものですか?(と、アタッシュケースに興味津々)」
涼 介「(隠して)関係ないじゃないですか」
聖 也「しかし見違えましたよ、涼介くん。髭剃って、顔色もいいし、スーツ着ちゃって。似合ってるかどうかは微妙ですけど」
涼 介「大きなお世話です」
聖 也「言葉遣いも変です」
涼 介「これまでがおかしかったんです」
聖 也「変ですよ、久々に会ったんですよ。もっと喜びましょうよ」
涼 介「私はもうホームズ・エージェンシーやめた人間ですから」
聖 也「で、訪問販売ですか?」
涼 介「(ムッと)なにか問題がありますか?」
聖 也「ありません。でも、涼介くん、楽しそうじゃないです」
涼 介「(呆れて)楽しそうに見えませんか!? 今五万円の契約が取れたですよ。よっしゃ! ってガッツポーズもしましたでしょ?」
聖 也「はい。してました」
涼 介「もう、ガンガン売れて、このまま行けば年収五倍になります。ホームズ・エージェンシーにいる時の五倍ですよ。探偵なんかやってられません」
聖 也「凄いですね。やめて正解です。よかったよかった。頑張って下さい」
と、涼介の背中をポンポン叩く。
涼 介 「(顔を顰めて)痛いって。や、やめてくれるぅ」
聖 也「(笑顔で)あ、いつもの涼介くんに戻りました」
涼 介「(いつもの言い方で)戻ってねえって」
聖 也「じゃ、ラーメンご馳走して下さい」
涼 介「なんでだよ」
聖 也「儲かってるんでしょ? それに今日は頭の中がラーメンです」
涼 介「(ハッとなって)もしかして、“あかつき”の店長が殺された事件!?」
聖 也「(ニッと)涼介くん、血が騒ぎますか?」
涼 介「――。全然。俺、忙しいから」
聖 也「なんでホームズ・エージェンシー、解散しちゃったんですか?」
涼 介「……」
聖 也「京子ちゃんと喧嘩したんですか?」
涼 介「……(肯定の沈黙)」
聖 也「食べ物を横取りされたんなら判りますが」
涼 介「そんなんじゃないよ。じゃ!」
聖 也「あ、京子ちゃんの居場所を教えて下さい」
涼 介「知らないって!」
聖 也「……判りました。じゃ、お元気で……」
と、肩を落として歩き出す。
涼 介「高野さん」
聖 也「(笑顔で振り返り)ラーメン行きますか?」
涼介、アタッシュケースを広げる。
聖也、覗き込む。
中には、健康飲料などが入っている。
聖 也「健康食品ですか」
涼 介「……体にいいから」
と、ドリンクを一本聖也に渡す。
聖 也「(見て)オリゴ糖入りですか。美味しそう。もう一本いただけますか?」
涼介、もう一本渡す。
聖 也「ありがとう、涼介くん」
涼 介「じゃあな」
と、去っていく。
聖 也「はい、お元気で」
聖也、去っていく涼介の後ろ姿を見ながら、早速オリゴ糖入りドリンクを取り出して飲む。
聖也、ン? となり、改めてドリンクを見る。
聖 也「……」
――C・M――
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(2)へ続く

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