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●喰いタン2 第5回 (1)

□ ホームズ・エージェンシー・全景
チェロの音色が流れている。
“おなかのへるうた”
□ 同・社内
涼介、台所でゴソゴソやっている。
聖也、演奏を中断し、二階から降りてくる。
聖 也「涼介くん、お腹空きましたね」
涼 介「冷蔵庫も冷凍庫も空っぽ。たしか炒飯が残ってたはずなんだけど……」
聖 也「あ、それは昨日いただきました」
涼 介「じゃ、もうないじゃん、作り置き」
聖 也「涼介くん……」
涼 介「俺じゃなくて高野さんでしょ!? 京子ちゃん、一ヶ月は持つって量作ってくれてたんだよ。それを一週間で食べちゃうなんて……」
聖 也「だって美味しかったんだもん」
涼 介「どーすんのよ、今日から」
聖 也「外に食べに行きましょう!」
涼 介「お金がありません」
聖 也「あ、京子ちゃんの台詞言ってる」
涼 介「(ため息で)言いたかないよ」
ドアが開閉する音。
聖也、涼介、!
涼 介「京子ちゃん、帰って来た!?」
が――入ってきたのは、山内署長と段ボール箱を持った桃。
山内署長「やあ、喰いタン。元気かい?」
聖 也「はい。多分あと数時間は」
涼 介「食べ物がないんです」
山内署長、ニッと段ボール箱を開ける。
中には野菜がたくさん入っている。
聖也、涼介、!
聖也・涼介「! 差し入れ、ありがとうございます!」
桃  「(山内署長に)私、行きます」
山内署長「桃ちゃん、警察手帳貸して」
桃  「え……」
戸惑うが、渡す。
山内署長「最近手品を覚えてね……」
山内署長、♪オリーブの首飾り♪を口ずさみながら、桃の警察手帳を両手に挟んでこする。
すると、警察手帳が消えてしまう。
聖 也「(驚いて)凄いですね、署長!」
涼介、桃も驚いている。
山内署長「喰いタン、差し入れの代わりにやってもらいたいことがある」
聖 也「はい、なんでもやります!」
山内署長「桃ちゃんをしばらく預かってくれ」
聖也、涼介、!
桃  「署長!」
山内署長「もう何年も有休取ってないだろ?」
桃  「いりません、そんなもの」
山内署長「ちょくちょく点滴を打ちに行ってることは知ってるよ」
桃  「――。だから大丈夫です」
山内署長「疲れると判断力が鈍る。捜査にミスは許されない。京子ちゃんの料理を食べて元気になって復帰してほしい」
涼 介「あのう……」
桃  「(涼介は無視で)しかし、捜査中の事件が……」
涼 介「ちょっと……」
山内署長「(涼介は無視)五十嵐刑事も他の捜査員も頑張ってるんだ。休みなさい」
桃  「嫌です!」
山内署長「(厳しい表情で)これは命令だ」
桃  「――」
聖 也「署長!」
山内署長「なんですか?」
聖 也「京子ちゃん、オーナーと一緒にフランスです」
山内署長「え……聞いてなかった。ま、いい。取り敢えず桃ちゃんを頼む」
聖 也「判りました」
桃、みんなに背中を向けている。
山内署長、出て行く。
聖 也「桃ちゃん……」
桃  「(背中を向けたまま)緒方だ。桃と呼ぶな」
聖 也「お腹空きませんか?」
桃  「(背中を向けたまま)空かない」
聖 也「これ(差し入れ野菜)で何か作って下さい」
桃  「料理なんか時間の無駄だ」
聖 也「だって、食べないと……」
桃  「時間の無駄だ」
聖 也「無駄に出来る時間、出来たじゃないですか」
桃  「――」
聖 也「せっかくだからお腹一杯食べてのんびりしましょう」
桃  「ウルサイ! 勝手に食え!」
聖 也「言われなくても食べますけどね」
と、差し入れの野菜を齧る。
聖 也「美味しーい!」
□ 横浜の街
桃、ズンズン歩いていく。
涼介、追ってくる。
涼 介「桃ちゃん、いいの? 署長の命令無視して」
桃  「(キッと)桃と呼ぶな!」
涼 介「え……もう桃ちゃんって定着してるじゃない」
桃  「ついてくるな!」
涼 介「桃ちゃんが追っかけてる事件は俺たちが解決しますって」
桃  「お前らには無理だ」
言い捨てて歩いていく。
□ 住宅街
涼介、桃を追いかけてやってくる。
と――前から金田一少年がやってくる。
金田一少年「あれ? 涼介くんに桃ちゃん」
涼 介「涼介さん、だろ!?」
桃  「緒方警部、だろ!?」
涼 介「金田一、こんなとこで何してるんだよ」
金田一少年「うち、すぐそこですよ」
涼 介「あ、そうだったな。黎ちゃんは? 振られたか?」
金田一少年「風邪で休んでます。涼介くんは振られる相手もいませんもんね」
涼 介「ウルサイな、さんだろ、さん」
そこへ、聖也が追いかけてくる。
聖 也「一くん、涼介くんたちヒドイんですよ。私を置いて二人だけで食べに行こうと……」
涼 介「(遮って)してません、って」
聖 也「あれ? 桃ちゃんは?」
桃、さっさと行ってしまっている。
聖也たち、桃が行った方向へ――
角を曲がり、ドキリとなる。
そこには、ほぼ全焼した一軒家がある。
桃、厳しい表情で焼け跡を見ている。
涼 介「……連続放火事件追いかけてるんですか」
桃  「(怒りの表情で)……一家四人が犠牲になった。下の子はまだ三つだった」
涼 介「……」
金田一少年「ここ一ヶ月で十軒以上狙われてるんです。たいていは小火(ぼや)で終わってるんですけど……」
桃  「……犯人はまたやる。(強い決意で)その前に必ず捕まえる」
涼 介「……」
金田一少年「でも、どうしてまたここに来たんですか? もう何度も現場検証してるんでしょ?」
桃  「現場百回。捜査に行き詰まったら現場に戻れという教訓だ。何か見落としていることがあるはずだ」
聖 也「桃ちゃん!」
見ると、聖也は焼け跡に踏み入って何かを見つけた様子。
桃、! 
みんな、聖也のところへやってくる。
聖也が立っているのは台所だった場所。焼け焦げたコンロの上には、大鍋がかかったまま。
聖也、蓋を取るが、黒こげである。
聖 也「……夕飯はカレーだったんですね」
桃  「……」
聖 也「……食べられなかったカレー、悲しいです」
桃  「――」
聖 也「カレーを燃やすなんて、許せません!」
□ タイトル
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(2)へ続く

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