| □ ホームズ・エージェンシー・全景 |
| □ 同・社内 |
| 聖也、ソファに元気なく座っている。 |
| 聖 也 | 「京子ちゃん、まだ帰ってこないんですか?」 |
| 涼 介 | 「さあ、オーナーの付き合いは大変だね」 |
| 涼介は心京子にあらず。ウキウキ気分で髪を整えたりしている。 |
| 聖 也 | 「涼介くん、ご飯食べてないのに元気じゃないですか」 |
| 涼 介 | 「今日依頼者が来るんじゃないですか、大阪から」 |
| 聖 也 | 「聞いてませんよ」 |
| 涼介、聖也に絵葉書を渡し―― |
| 涼 介 | 「『私、困ってます。ホームズ・エージェンシーのみなさまのお力をお借りしたいです。ハートマーク』 ギャル文字、名前は園田くらら。可愛いに決まってます!」 |
| 聖 也 | 「(見て)イマドキ、絵葉書ですか?(裏を見て)しかも『韓流スター』……」 |
| 涼 介 | 「高野さん、手伝わなくていいからね。一緒に調査に歩くうち、二人の間に芽生える淡い恋……くぅ、たまらん」 |
| 女性の声 | 「こんにちは」 |
| 涼 介 | 「! あ、どうぞ!」 |
| 涼介、ワクワク見ると―― |
| 入ってたのは、豹柄の洋服にくるくるパーマのおばちゃんである。 |
| 両手には大量の荷物をもち、背中にも何か背負っている。 |
| 涼 介 | 「(ゲッ)あの、うち、何も買うつもりないですから」 |
| おばちゃん | 「ここ、ホームズ・エージェンシー、でっしゃろ?」 |
| 涼 介 | 「そうですけど……」 |
| 聖 也 | 「(ン?)関西弁?」 |
| おばちゃん | 「(ホッとなり)なんや汚い倉庫かと思うたわ。それになんやのあの看板。気取って英語なんかで書かんでも『ホームズ・エージェンシー』ってカタカナで書いたらええやん」 |
| 涼 介 | 「(圧倒されて)はあ……」 |
| 聖 也 | 「もしかして、園田くららさんですか?」 |
| くらら | 「そうや。ちゃんと葉書届いたんやな」 |
| 涼介、ゲッ! |
| 聖 也 | 「涼介くん、私お手伝いしなくていいんですよね? 頑張って下さい」 |
| 涼 介 | 「ちょっとちょっと」 |
| 聖 也 | 「この野田涼介くんはホームズ・エージェンシーを背負って立つ名探偵です」 |
| くらら | 「ふうん、人は見かけによらんもんやな」 |
| 涼 介 | 「(泣きそう)高野さん……」 |
| 聖 也 | 「涼介くん、よーく話を聞いて差し上げて」 |
| 涼 介 | 「……はい」 |
| くらら、一枚の写真を取り出してテーブルに置く。 |
| 20代後半、スーツ姿の真面目そうな男が写っている。 |
| くらら | 「帝国エレクトロニクス技術部勤務の亀山良彦。28歳。住所はここ。うちが知ってることは全部書いてある(と、メモも置く)この男の素行調査を一週間、いや、三日やってほしいんや」 |
| 涼 介 | 「素行調査……」 |
| くらら | 「そうや。こいつがどんな仕事してんのか、どんな男や女と付き合ってんのかとか。色々や」 |
| 涼 介 | 「(圧倒されて)判りました」 |
| 聖 也 | 「くららさん、何故大阪の方がホームズ・エージェンシーをご存知なんですか? もしや、喰いタン、大阪でも大人気?」 |
| くらら | 「うちが知ったんはソウルでや」 |
| 涼 介 | 「ソウル!?」 |
| くらら | 「『韓流スターツアー』の仲間がええ探偵がおるいうて教えてくれたんや」 |
| 聖 也 | 「なるほど。マシソヨ。涼介くん、さっそく調査に着手して下さい」 |
| 涼 介 | 「(ため息で)判りました」 |
| と、出て行く。 |
| くらら | 「(聖也に)あんたは行かへんの?」 |
| 聖 也 | 「私は美味しい事件担当です」 |
| くらら | 「美味しい事件?」 |
| 聖 也 | 「はい、いろんな意味で」 |
| くらら | 「(社内を見回し)あ、ここ、使わせてもらうで」 |
| と、和室に荷物を置く。 |
| 聖 也 | 「そこは私の部屋です」 |
| くらら | 「一緒でもかまへんで。調査が終わるまでいさせてもらうわ」 |
| 聖 也 | 「しかし……」 |
| くらら、背中に背負ったたこ焼き器を降ろす。 |
| 聖 也 | 「! 大阪の家には必ずあるというたこ焼き器!」 |
| くらら | 「そうや。うちは嬉しいことがあるとたこ焼きパーティするねん」 |
| 聖也のお腹が鳴る。 |
| くらら | 「(笑って)なんや、お腹空いてんのか?」 |
| 聖 也 | 「はい……」 |
| くらら | 「ものは相談なんやけどな、調査料、体で払わせてもらえへんか?」 |
| 聖 也 | 「体で!?」 |
| くらら | 「美味しいもん、ぎょうさん作ったる」 |
| 聖 也 | 「! それは、私が喰いタンと知っての提案ですか?」 |
| くらら | 「そうや、食い倒れ担当、略して喰いタンやろ?」 |
| 聖 也 | 「(ガクッ)ちょっと違います」 |
| シャキーンと箸を取り出し―― |
| 聖 也 | 「喰いしんぼう探偵、略して喰いタン!」 |
| ポーズが決まって―― |
| □ タイトル――大阪“たこ焼き”を喰い尽くす! |