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●喰いタン・スペシャル 香港全部食べちゃうぞ編(2)

□ 香港ホームズ・エージェンシー・社内
五十嵐刑事、聖也に捜査資料を渡す。
「殺されたのは早瀬というジャーナリストだ。その足取りを追うと、香港からの帰国直後に殺されたこと、最後に食事をしたのがここ香港であることが判った」
聖 也「(捜査資料を見て)胃の内容物から店を特定しろ、と?」
「(頷き)彼の家は荒らされ、パソコンやメモ類はすべて奪われている。この香港でなんのネタを追っていたのか知りたい」
捜査資料を覗き込んでいた金田一少年、思わず声を上げてしまう。
涼 介「どうした、金田一」
金田一少年「……何でもないです」
金田一少年が見ていたのは、捜査資料に添付された写真。
――被害者が握りしめている、豚の携帯ストラップ。
ケリー「(広。見て)この人、香港の人ですか?」
聖 也「(広)どうして?」
ラ ウ「(広)豚は香港では幸運と金運を呼ぶって言われてるんです」
聖 也「(広)なるほど……」
涼 介「なんだって?」
聖 也「判りました、被害者が最後に食べた店を探せばいいんですね」
「そうだ」
聖 也「久しぶりに食べまくりましょう!」
京 子「ずっと食べまくってたんじゃないですか?」
聖 也「否定はしません」
涼 介「それでなんでこっちはこんなにいい事務所?」
聖 也「それはスタッフの違いですね」
ラウ、ケリー、頷く。
涼 介「(ムッと)俺たちが無能みたいじゃない」
聖 也「そんなにハッキリ言えません」
涼 介「言ってるようなもんじゃない」
聖 也「じゃ、優秀ですか?」
涼 介「……」
ラ ウ「(桃に、英)捜査協力費について話したいのですが」
京 子「(見ていて)あそこが違うのね」
「(ラウに、英)終わってからだ。(聖也に)喰いタン、行くぞ」
聖 也「はい」
涼 介「(やる気満々で)行くぞ、金田一」
金田一少年「(蒼褪めていて)僕、父と待ち合わせてるので……」
ラ ウ「(広)私は事務所に残ります」
京 子「私ちょっと買い物に行きたいので……」
涼 介「(一転)あ、そうだね。どうせ俺たち食べるの関係ないし」
桃、聖也を連れて五十嵐刑事と出て行く。
ケリー「(京子に)買い物だったら私が付き合います」
京 子「ホント!? 助かります。(何か言おうとする涼介を制して)女の子だけで行くから」
涼 介「――」
京子とケリー、出て行く。
チャン少年「(金田一少年に)お父さんとはどこで会うの? 僕が案内してあげるよ」
金田一少年「……大丈夫だから」
と、出て行こうとする。
涼 介「待てよ、金田一」
チャン少年「キンダイチ? 一じゃないの?」
涼 介「カネダハジメだから、金田一」
金田一少年、黙って出て行く。
涼 介「金田一……」
と、チャン少年と追いかける。
□ イートンホテル・表
金田一少年、涼介、チャン少年がやってくる。
涼 介「ここで待ち合わせ?」
金田一少年、頷く。
涼 介「なんで酒屋で待ち合わせるの?」
チャン少年「ここ、ホテルです」
涼 介「ほら……」
「逸東酒店」のプレート。
チャン少年「酒店って、ホテルの意味なんです」
涼 介「へえ」
□ 同・中華レストラン・店内
金田一少年、見回すが、父親らしき人物の姿はない。
金田一少年「……」
チャン少年「何時に待ち合わせ?」
金田一少年「……もう過ぎてます」
涼 介「じゃ、電話してみろよ」
金田一少年、涼介たちに背中を向け、携帯を取り出す。
その携帯に付いているストラップ――現場写真に写っていたものと同じ、豚のストラップである。
金田一少年「(見て)……」
涼 介「(その様子に)どうした?」
金田一少年「いえ……」
急いでメールを打つ。
“香港に着いてます”
涼 介「女の子に電話するんじゃないだろ? なんで背中向けるんだよ」
金田一少年、メールを送信すると携帯をポケットにねじ込んで振り向く。
金田一少年「終わりました」
涼 介「って、電話してないじゃないか」
金田一少年「メールしました」
チャン少年「メール? なんで電話しないの?」
金田一少年「だって、仕事中だったら迷惑じゃないですか」
涼 介「会う約束してて遅れてるんだろ?」
金田一少年「……すぐに返事は来ると思います」
金田一少年、ポケットの中でストラップを握りしめる。
□ あるレストラン・店内
テーブルに並んだ豚肉料理の数々。
聖也、精力的に食べている。
聖 也「美味しいー!」
桃、五十嵐刑事が見守っている。
五十嵐刑事「いやあ、喰いタンの喰いっぷり、久しぶりに見ると気持ちいいですね」
「(捜査資料を見て)野菜、穀物……肉類は豚肉しか食べてないな」
聖 也「豚肉は疲労回復にいいし、コレステロールを下げる脂肪酸もたくさん含まれています。カロリーも高くありませんからね」
「しかし、他の牛肉や鶏肉を食べてもおかしくないだろう」
五十嵐刑事「人間、好き嫌いがありますからねぇ」
聖 也「被害者が追いかけていたネタは全然判らないんですか?」
「彼は企業犯罪に関するルポを何冊か出している。ただし、今回追いかけていたのも企業犯罪と決めつけることはできない。フリーのジャーナリストはネタが命だから、取材が固まるまでは担当の編集者にも全容を話さない」
五十嵐刑事「どうなんだ、この店なのか?」
聖 也「うーん、もう少し食べなきゃ判りませんね」
と、食べまくる。
□ イートンホテル・中華レストラン・店内
涼介、金田一少年、チャン少年がいる。
涼 介「(時計を見て)いくらなんでも遅すぎないか? 金田一パパ」
金田一少年「(不安で)……」
□ ショッピングモール・中
京子とケリーが長いエスカレーターを上がっていく。
京 子「凄い……お洒落な店がたくさん」
ケリー「香港は宝石が安いわ」
ケリーのネックレス、ダイヤモンドが輝いている。
京 子「(見て)……ホントに儲かってるんだ、香港ホームズ・エージェンシー」
ケリー「(微笑で)高野さんは食べることにしか興味ないけど、うまくコントロールすればお金を生みだしてくれます」
京 子「色々教えて下さい」
ケリー「OK」
□ ジュエリーショップ・店内
ショーウィンドウに飾られた宝石類。
京子ー、目を輝かせてダイヤモンドを見ている。
ケリー「ね、これ、京子に似合うと思うわ」
京子、ケリーが進めるダイヤの値段を見てビックリ。
京 子「無理無理。あ……私、六月生まれだから……」
と、真珠売り場へ移動する。
ショーウィンドウを覗くが――高い。
京子、安いほうへ移動していく。
ケリー「真珠もピンキリですねえ」
京 子「(ブツブツ)……キリでいい、キリで……」
□ 帝国興産香港支社・表
涼介、金田一少年、チャン少年に案内されてやってくる。
チャン少年「あそこだよ、帝国興産」
と、通りの向こうのビルを指差す。
金田一少年「……」
□ 同・社内
涼介、金田一少年、チャン少年、社員に案内されてやってくる。
社員、チャン少年に中国語で話している。
チャン少年「(金田一少年に)キンダイチのパパは二日前から休みを取ってるんだって」
金田一少年「昨日からじゃなくて?」
チャン少年、通訳する。
チャン少年「一昨日からだって」
金田一少年「……?」
三人、あるデスクに案内される。
チャン少年「ここがパパのデスクだって」
金田一少年「……」
引き出しの中を開けてみる。
書類や筆記用具などで、特別なものは入っていない。
金田一少年「……」
□ 別のレストラン・店内
聖也、食べまくっている。
「(ため息で)どうなんだ、喰いタン」
聖 也「もう一度胃の内容物のリストを見せて下さい」
五十嵐刑事、聖也にリストを渡す。
聖 也「被害者は、高血圧じゃありませんか?」
「確かに高血圧の薬を常用していた」
五十嵐刑事「何故判った、喰いタン」
聖 也「ワカメ、ニンニク、ニラ……これらはどれも血圧を下げる作用がある食材です」
五十嵐刑事「なるほど」
聖 也「それに、酢にも同じ効果があります。ニンジン、タマネギ、豚肉……これは酢豚じゃないでしょうか?」
五十嵐刑事「酢豚じゃないだろ。リストにパイナップルはないぞ」
聖 也「梨はありますよね?」
五十嵐刑事「(確かめ)たしかにあるが……」
「どういうことだ」
聖 也「酢豚にパイナップルを入れるのは何故かご存知ですか?」
五十嵐刑事「いやあ、私はあれが苦手でいつも避けて食べてるんですよ」
聖 也「パイナップルは味を整える以上に大きな役割があります。パイナップルに含まれるブロメリンという消化酵素が、肉を柔らかくし、タンパク質を分解するんです」
五十嵐刑事「あれを食べれば酢豚は胃に凭れないんですか」
聖 也「(頷き)梨にも同じ酵素があります」
「! じゃ、被害者が食べたのは、梨で作った酢豚!?」
五十嵐刑事「だとすれば、店は絞り込めますね! 梨酢豚をメニューに載せている店!」
聖 也「美味しそうです、梨酢豚」
□ ――C・M――

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