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●七瀬ふたたび 第7回 (1)

1 前回までのダイジェスト
2 どこかの路上(高村刑事のイメージ)
暗闇の中、石畳の上を高村刑事が走っている。背後から何者かの気配。やがて−−−行き止まり。高村刑事が振り向く。七瀬が高村刑事を見つめている。
高村刑事「……!」
七 瀬「(微笑)そんなに怖いの? 私が」
高村刑事「……」
七 瀬「そう……あなたにはわからない……何も解決できない」
周りを見る高村刑事。
七 瀬「誰も助けてくれないわ」
高村刑事「……やめろ!」
七瀬の姿、消える。いつの間にか、恒介が高村刑事の背後に立っていて。
恒 介「あんたは崖崩れで死ぬ」
高村刑事「!?」
恒 介「見えたんだよ、俺には……ほら」
恒介が上空を指す。高村刑事が見上げると、岩のような塊が落ちてくる。
高村刑事「!」
駆け出す高村刑事。が、突然、前に進めなくなる。
高村刑事が足元を見ると、地面から浮いている。
ヘンリーの声「捕まえた」
高村刑事、振り向く。ヘンリーが立っている。
ヘンリー「西尾と同じ落とし方でいい?(笑顔)」
高村刑事「……」
気付くと七瀬、恒介、ヘンリー、朗に取り囲まれている。
朗  「……(無邪気に)何も知らなければよかったのにね」
高村刑事「!」
高村刑事、暗闇に吸い込まれていく−−−
高村刑事「(絶叫)」
3 北品川警察署・刑事課フロア(早朝)
デスクに突っ伏して寝ていた高村刑事。
ガバッと飛び起きる。目の前に江藤刑事。
江藤刑事「大丈夫ですか? えらくうなされてましたけど」
高村刑事「……ああ」
江藤刑事、高村刑事のデスクを見る。
天星電機について書かれた記事の切り抜きなど。
江藤刑事「……まだ引っかかってるんですか、火田七瀬のこと。いい加減、忘れた方がいいと思いますよ。ここんとこ高村さん、家にもロクに帰ってないじゃないですか。はい、これ、昨日の強盗事件の資料。九時から捜査会議です」
高村刑事「ああ……」
江藤刑事、自分のデスクに戻る。
高村刑事、強盗事件の資料を手に取るが、またすぐに天星電機の記事に目を落として。
高村刑事「……」
 ×     ×     ×
フラッシュ(高村刑事の回想)
七 瀬「(微笑)そんなに怖いの? 私が」
4 瑠璃のマンション・室内
窓辺に座って、ぼんやりと外を見ている七瀬。
精一郎の声「待っている/七瀬」
七瀬の心の声「……お父さん」
朗と瑠璃、その様子を後ろで見ながら、低く会話。
瑠 璃「どう思う? 昨夜から、ずっとあの調子」
朗  「瑠璃お姉ちゃん、ヘンなもの食べさせたんじゃないの」
瑠 璃「失礼ね。そんなこと言うと、出入り禁止にするわよ」
朗  「……七瀬お姉ちゃん? 僕たち、もう行くよ」
七 瀬「……(聞いていない)」
瑠 璃「七瀬、聞いて聞いて! 私、一晩で20キロ痩せちゃった!」
七 瀬「……(やはり聞いてなくて)ああ、うん。よかったね」
瑠 璃「……ダメだわ、こりゃ。行こう、朗くん」
朗  「うん……」
朗、七瀬を気にしながらも、出かけていく。
七瀬、やはり外を見ていて。
七瀬の心の声「明後日……お父さんに会える……」
○タイトル
5 東泉大学・キャンパス
高村刑事が入っていく。
6 同・人間工学研究室
高村刑事、藤子に天星電機の記事を見せている。
高村刑事「これを書いた男から、あなたも火田精一郎と同じ天星電機の研究所に籍を置いていたと聞きました」
藤 子「ええ……」
高村刑事「個人的な付き合いはあったんですか」
藤 子「火田先生とですか? いいえ、まったく」
高村刑事「では、なぜ火田七瀬と□□島へ行ったんです?」
藤 子「ちょっと待ってください。これって取り調べですか?」
高村刑事「……いや、そういうわけじゃないんです」
藤 子「じゃ、どういう……」
高村刑事「フェリーの中で、あなた方の様子を見て……あなたなら、私の個人的な疑問に対する答えを持っているかもしれないと」
藤 子「……個人的な疑問?」
高村刑事「……今朝、おかしな夢を見ました」
藤 子「……?」
高村刑事「火田七瀬、岩渕恒介、ヘンリー、広瀬朗。あの四人に追い詰められる夢です。自分でも驚いたが……私は……彼らが怖いんですよ」
藤 子「……」
高村刑事「……私は自分の目で見たものしか信じない。自分の目で見て、自分の耳で聞いたものの中に、いつも必ず事件解決の鍵があったからです。でも、今回は違う……」
藤 子「……」
高村刑事「火田七瀬たちの周りで、確かに事件が起こっている。彼らに関わりはありそうだ。だが、説明がつかない。何も立証できない。結局、犯人ではないこともわかり、捜査は終了。上司からは、もういい加減に手を引けと言われています。でも、どうしても、ここ(と胸を指し)に引っかかる……」
藤 子「……ええ。よくわかります」
高村刑事「……?」
藤 子「……私も七瀬さんと知り合ってから、本来の研究がおろそかになっていて、学内では肩身の狭い思いをしています……それでも、七瀬さんたちのことがここ(と胸を指し)に引っかかって、彼らの研究がやめられません」
高村刑事「……彼らの研究というのは」
藤 子「……火田先生の研究を追いかけているんです」
高村刑事「超能力を……」
藤 子「私たちは、未知能力、と呼んでいます」
高村刑事「未知能力……」
藤 子「新しい力ではなく、人間が本来持っている可能性の一つだと考えているんです」
高村刑事「どういうことですか」
藤 子「背後に視線を感じて、振り向いたら後ろの人と目が合った。そんな経験、ありませんか」
高村刑事「ええ……ありますね」
藤 子「見られていると、なぜわかったか説明できますか」
高村刑事「……いや……それも未知能力だと?」
藤 子「まだ解明はされていません。しかし、人間同士のコミュニケーションで、言葉が担っている部分は、5%から15%程度だという研究結果があります。つまり私たちは、ほとんど非言語……表情や態度で会話をしている。人の心を直に感じ取るテレパシーは、その延長線上にある能力だと考えられませんか」
高村刑事「……高度なコミュニケーション能力……」
藤 子「そうです。恐らくテレパス同士の会話に、言葉の壁はありません。誤解も生まれません。互いの思考や感情が、直接、読み取れるんですから」
高村刑事「……本音しか通用しない……見せたくない気持ちまで覗かれるってことですか」
藤 子「……そういうことになりますね」
高村刑事「……」
7 瑠璃のマンション・室内
相変わらず、窓辺でぼんやりしている七瀬。
朗がやってきて。
朗  「お姉ちゃん? 大丈夫?」
七 瀬「……どうしたの、朗くん。学校は」
朗  「とっくに終わった。もう三時だよ」
七 瀬「え、ホント?」
朗  「しっかりしなよ。舞い上がる気持ちはわかるけど」
七 瀬「……どういう意味?」
朗  「話せたんでしょう? お父さんと」
七 瀬「読んだの?」
朗  「お姉ちゃん、全開になってるから」
七 瀬「あ……」
朗  「よかったね。お父さん、生きてたんだね」
七 瀬「……うん」
朗  「僕も会いたいな。お姉ちゃんのお父さんに。会って、いろんなことが聞きたい」
七 瀬「……でも……」
朗  「わかってるよ。一人で来いって言われたんでしょ」
七 瀬「……ごめんね」
朗  「僕はいいけど。コースケさんたちにも黙って行くの?」
七 瀬「……うん」
朗  「瑠璃お姉ちゃんにも?」
七 瀬「……話したいけど。能力のことまで話さないといけなくなるから……」
朗  「……ずっと、このままなのかな」
七 瀬「え?」
朗  「どんなに大事な友達でも……ずっと黙ってなくちゃいけないのかな」
七 瀬「……」
8 東泉大学・人間工学研究室
高村刑事「……そんなにいろいろな能力が……」
藤 子「ええ、私が見た限りですが」
高村刑事「……正直なところ、まだ信じられない」
藤 子「自然な反応だと思いますよ。能力を持っている人間たちも、それはわかっています。だから力を隠そうとします。でも、それは自分を偽ることになる。だから苦しんでいるんです」
高村刑事「……」
そこへ、神崎がやってきて。
神 崎「漁先生、学部長が呼んでますけど……」
藤 子「今、行く。(高村刑事に)たぶん、説教です」
高村刑事「(時計を見て)すっかり長居してしまいました」
藤 子「いえ、いいんです……高村さん」
高村刑事「はい」
藤 子「きっと、常識が邪魔をしているだけです」
高村刑事「……?」
藤 子「見たもの、聞いたもの、信じてくださいね」
高村刑事「……」
藤 子「あなたの、その信念は間違ってないと思います」
高村刑事「……」
神 崎「(促す)漁先生。あまり待たせない方が」
藤 子「(高村刑事に)失礼します」
藤子と神崎、出ていく。見送る高村刑事。
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(2)へ続く

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