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●「パパはニュースキャスター」最終回(1)

□ “ニュースチャンネル”・オープニング
竜太郎「今晩は、鏡竜太郎です」
みゆき「米崎みゆきです」
竜太郎が最初のニュースを読み始める。
と――ニュース速報の時のようなキャッチ音がして、大多記者が竜太郎を遮るように登場する。
大多記者「突然ですが、この時間はニュースの予定を変更してドラマをお送りします。こちらから御覧下さいッ!」
大多記者の後ろで、竜太郎が「聞いてないぞ!」と怒っている。
□ 前回までの粗筋
ニュースキャスターの顔の竜太郎。
「鏡竜太郎。41歳、独身。職業、ニュースキャスター。ジャーナリストとして正義感に燃える彼にも、欠点がある」
酒を飲んで女を口説く竜太郎。
「唯一と言っていい彼の欠点は、酒。飲むと記憶をなくすほど酔い、女を口説くのである」
回想――西尾麻里を口説く竜太郎。
「12年前、彼は3人の女を口説いた。そのことが、やがて思いがけない悲劇となって彼の身に襲いかかろうとは夢にも思わずに........」
「パパ、初めまして」と登場する西尾愛。
「パパ!」と登場する大塚愛。
「お父さん........」と登場する鈴木愛。
3人の愛たちに囲まれて「パパ」を連発され、ブ然となっている竜太郎。
「このドラマは、ある日突然3人の娘の父親になった独身主義者の悲劇........ではなく、喜劇である」
再び登場する大多記者。
大多記者「そして、先週は大塚愛の父親と名乗る男が登場。しかも二人も!」
大塚愛を取り合う五十嵐と日向。
出てゆく大塚愛を見送る竜太郎、西尾愛、鈴木愛。
大多記者、その“現場”に登場して――
大多記者「果たして大塚愛は五十嵐の家で幸せに暮らすのでありましょうか。鏡竜太郎、西尾愛、鈴木愛らと共に暮らすことはないのでありましょうか!」
玄関のチャイムが鳴る。
玄関の扉を開けると――西尾愛の妹・千恵子。
大多記者「土壇場で登場した西尾愛の妹! 彼女はいかなる波瀾を巻き起こすのでありましょうか! テレビを御覧の皆様、どうか、ハンカチの御用意を! 『パパはニュースキャスター』堂々の最終回、存分にお泣きくださいッ!」
□ タイトル
□ 鏡家・LDK(朝)
千恵子、トーストを頬張っている。
竜太郎と西尾愛、困惑して千恵子を見ている。
鈴木愛は感心して――
鈴木愛「可愛いですねえ........ホントに西尾さんの妹ですか?」
西尾愛「(ムッと)どういう意味よ、鈴木愛」
千恵子「(ケロッと)よく言われるんです」
西尾愛「千恵子! どうして家出なんかしてきたの」
千恵子「お姉ちゃん、どうして帰ってこないの?」
西尾愛「........」
竜太郎、電話を引き寄せる。
竜太郎「電話番号は?」
千恵子「ヤダ」
竜太郎「お母さん、心配してるだろう?」
西尾愛「0........(静岡の市外局番を言いかける)」
千恵子、わーッと大声を出して遮る。
西尾愛「千恵子........」
竜太郎、ウンザリ顔。
と――玄関のチャイムが鳴る。
□ 同・玄関
竜太郎が扉を開けると――
立っていたのは、タクシーの運転手。
竜太郎、怪訝。
運転手「女の子乗せたんだけどね、お金取りに行って帰ってこないんですよね。お宅でしょ?」
竜太郎「あ........幾らですか?」
運転手「□万円」
竜太郎「え?」
運転手「静岡から。高速プラスしてその値段」
竜太郎「ちょ、ちょっと待ってください」
と、LDKへ急いで戻る。
□ 同・LDK
竜太郎「千恵子くん、あのタクシーに乗って帰りなさい」
千恵子「お姉ちゃんも一緒に帰ろ」
西尾愛「お姉ちゃんはダメなの」
千恵子「じゃ、あたしもイヤ!」
竜太郎、ため息。
□ TBS・報道局
竜太郎が入ってくる。
みゆき、竜太郎に気づくが、冷たく一瞥。
竜太郎、気にするが、西尾麻里の電話番号を書いたメモを見ながら電話をかける。
――話し中である。
竜太郎、ため息。みゆきと目が合う。
ソッポを向くみゆき。
竜太郎「(近付いて、小声で)どうしたの、何怒ってるの」
みゆき「別に。親に棄てられた子供のことを考えてたの。大塚愛って名前の........」
竜太郎「だから、棄てたんじゃないって........」
弁解しようとすると、目の前の電話が鳴る。
みゆき「(竜太郎を無視して)はい、TBS! ........あ、ちょっとお待ちください」
竜太郎に受話器を突き出す。
みゆき「女性からですよ、独身の鏡さん」
竜太郎、恨めしそうにみゆきを見て、電話に出る。
竜太郎「もしもし........(アッとなり)ちょ、ちょっと待ってください」
と、電話を“保留”にして会議室に入ってゆく。
みゆき、怪訝に竜太郎を見送る。
□ 同・会議室
竜太郎、怒りの表情で受話器を握りしめて――
竜太郎「どういうことだ!」
西尾麻里の声「怒鳴らないで。千恵子、愛のことが大好きでね、ずっと淋しがってたのよ。『お姉ちゃんどこに行ったの?』って。私とあなたの関係、あの子に説明しても判らないでしょ? だからずっと誤魔化してたんだけど........」
竜太郎「(ムカムカ)そんなことはいい! いつ迎えにくるんだ」
西尾麻里の声「........やっぱり姉妹(きょうだい)一緒に暮らしたほうがいいと思うの」
竜太郎「(カッとなって)私に二人とも面倒見ろってことか!」
叩きつけるように電話を切ってしまう。
竜太郎「(怒り冷めず)冗談じゃないよ、一人いなくなったと思ったら........どうして他人の子供の面倒をみなくちゃいけないんだ!」
みゆきがガラス越しに竜太郎を窺っていた。
□ 鏡家・玄関(夜)
竜太郎がブ然と帰ってくる。
□ 同・LDK
竜太郎、入ってくるが、愛たちはいない。
竜太郎「........?」
と――玄関のチャイムが鳴る。
□ 同・玄関
竜太郎が扉を開けると――
立っていたのは、ニコニコ顔の文子。
□ 松本家・LDK
竜太郎が文子と一緒に入ってくる。
愛たち、食後のデザートを食べている。
愛たち「おかえりなさーい」
竜太郎「(保に)今晩は」
悠 作「(竜太郎の口調を真似て)今晩は、鏡竜太郎です」
竜太郎、ムッ。
西尾愛と鈴木愛は『またか』という顔だが、千恵子は喜ぶ。
悠作、千恵子を意識してニコッ。
「西尾さんの妹ですって?」
竜太郎「はあ........」
文 子「大塚さんいなくなって淋しくなると思いましたけど、また賑やかになりますね」
竜太郎「........」
悠 作「いやあ、千恵子ちゃん、お姉さんに似なくてホントよかったね」
西尾愛、ジロッと悠作を睨む。
悠 作「千恵子ちゃん、アイスクリームもっと食べる?」
千恵子「(ニコニコ)悠作さんって親切なんですね」
悠 作「悠作さんなんて........照れるなあ」
西尾愛と鈴木愛、バカにして悠作を見ている。
「鏡さん、食事は?」
竜太郎「いえ、もう........(と、遠慮して)帰るぞ」
文 子「あらあ、ゆっくりしていらっしゃれば........」
竜太郎「今度また........」
と、愛たちを促す。
愛たち「ごちそうさまでした」
と、玄関へ向かう。
送りにゆく保と文子。
西尾愛、悠作を掴まえ、ドスを効かせて――
西尾愛「あたしの妹に手を出したら承知しないからね!」
悠 作「(トボけて)は?」
西尾愛、悠作の足を思いっ切り踏んづけて出てゆく。
□ 鏡家・LDK
入ってくる竜太郎、愛たち。
西尾愛「千恵子、隣の悠作なんか相手にしたらダメよ」
千恵子「どうして? 素敵じゃない」
鈴木愛「(呆れて)妹さん、どういう趣味してンの!?」
千恵子「(ニコッと)冗談です。安心して、お姉ちゃんの恋人取ったりしないから」
西尾愛「――誰が恋人なのよォ!」
鈴木愛、クックと笑っている。
西尾愛「パパァ、違うって説明してやってよ」
竜太郎「(ムカムカして)ウルサイ!」
ビックリする愛たち。
鈴木愛「........どうして機嫌が悪いんですか」
竜太郎「(西尾愛と千恵子に)キミたちのお母さんは........」
怒りにまかせて言おうとして........躊躇する。
西尾愛「(窺って)電話したの?」
竜太郎「(思い留まって)いや........なんでもない」
西尾愛「........」
千恵子「あー、ビックリした。鏡さんも怒鳴ったりするんだ」
鈴木愛「酒グセも悪いんですよ」
竜太郎「(ムッと)鈴木くん!」
千恵子「ウソーッ、静岡に帰ったらみんなに喋っちゃお!」
竜太郎「喋ってもいいから、帰ってほしいよ」
ブツブツ言いながら洗面所に入ってゆく。
千恵子「トイレ?」
竜太郎「風呂だ」
千恵子「一緒に入るゥ!」
竜太郎「――!? 冗談じゃない」
西尾愛「(面白がって)いーじゃない、パパ。千恵子は小さいんだから」
竜太郎「何を言ってるんだ」
千恵子「ねえ、入ろう?」
竜太郎「ダメ」
鈴木愛「お父さんって、案外恥ずかしがり屋さんなんですよ」
千恵子「(邪気なく)どうしてお風呂入るの恥ずかしいの?」
竜太郎「........」
洗面所に入って扉を閉める。
□ 同・洗面所
竜太郎、ため息。
千恵子の声「お姉ちゃん、どうして鏡さんをパパって言うの?」
竜太郎、ドキッと耳を澄ます。
□ 同・LDK
西尾愛、絶句している。鈴木愛も困った顔。
千恵子、? と西尾愛を見ている。
西尾愛「(誤魔化し笑いで)ゲームよ、ゲーム」
千恵子「親子ゲーム?」
西尾愛「そうそう、それよ」
千恵子「じゃあ、千恵子も鏡さんのことパパって呼んでいいのね」
西尾愛「い、いいわよ」
□ 同・洗面所
竜太郎「(愚痴っぽく)冗談じゃないよ」
竜太郎、服を脱ぎかけ........危険を感じて鍵をかけた。
□ 東京の街
――遅い朝の情景。
□ 鏡家・LDK(数日後)
起きたばかりの竜太郎がガウン姿で入ってくる。
千恵子が一人テレビを見ている。
千恵子「(竜太郎に気づいて)お早うございます」
竜太郎「ン........」
千恵子、またテレビに戻る。
竜太郎、新聞を広げながら――
竜太郎「つまらなくないかい、お姉ちゃんが学校に行ってる間ずっとテレビ見てるんだろ」
千恵子「........」
竜太郎「おうちに帰れば?」
千恵子「お姉ちゃんと一緒がいい」
竜太郎「........お母さんは、可愛がってくれないのか? キミのこと」
千恵子「........可愛がってくれる。でも、ママもパパも、お姉ちゃんのこと嫌いみたい」
竜太郎「........」
千恵子、おとなしくテレビを見ている。
竜太郎「........お姉ちゃんがいないとおとなしいんだな」
玄関の扉が開く音がして――
「ただいま!」
と、愛たちがバタバタと雪崩込んでくる。
竜太郎、ウルサそうに顔をしかめる。
千恵子「(パッと明るくなり)お帰ンなさーい!」
西尾愛「(竜太郎に気づいて)あれ!? パパ今日休み? だったら上野動物園連れてって!」
竜太郎「........仕事だよ」
鈴木愛「今日は土曜日ですよ。“ニュースチャンネル”はないじゃないですか」
竜太郎「(面倒臭そうに)会社に用事があるんだ」
西尾愛「せっかく千恵子が来てるんだからトントン見に行こ!」
竜太郎「(ウンザリ顔で)せっかく、ってねえ........」
鈴木愛「行きましょうよ、お父さん」
千恵子「トントン見たい!」
愛たち、竜太郎の袖を引っ張ったりしてワイワイせがむ。
竜太郎「(一喝)ウルサイ!」
と――玄関のチャイムが鳴る。
□ 同・玄関
竜太郎が扉を開けると――
立っていたのは、バツの悪そうな顔をした大塚愛。
竜太郎「(ア然と)大塚くん!?」
大塚愛「(照れ笑いで)........帰って来ちゃった」
LDKからドタドタと出てくる愛たち。
西尾愛
鈴木愛
「(驚いて)大塚さん!」
大塚愛「(千恵子を見て)誰? この子........」
鈴木愛「(驚きの中で)........西尾さんの妹」
大塚愛「へえ、可愛い。全然似てないじゃない」
西尾愛、驚きの中で、ムッとしている。
竜太郎「........大塚くん、どうしたんだ」
□ 鏡家・LDK
竜太郎と大塚愛、愛たち。
西尾愛「いじめられたの!?」
大塚愛「(考えて)........そうね、一種のいじめかも」
鈴木愛「そんな、五十嵐さんって子供を虐待するような人には見えなかったのに........」
大塚愛「そういうんじゃないのよね。五十嵐さん、愛子ちゃんの話ばっかりするんだもん」
竜太郎「........愛子?」
大塚愛「死んじゃった五十嵐さんの子供。(西尾愛と鈴木愛に)写真あったでしょ? あたしそっくりの女の子の........」
西尾愛と鈴木愛、コックリ頷く。
大塚愛「似すぎてるのがいけなかったのかなあ........あたしが何かするたびに『愛子が生き返ったみたいだ』なんて涙ぐんじゃうの。あたしはゾンビじゃない、って」
竜太郎「........」
大塚愛「それだけならいいんだけど........ワガママ何でも聞いてくれちゃうのよね。欲しいものは何でも買ってくれるし、行きたいところ、どこでも連れてってくれるの。東山動物園にコアラとか........」
西尾愛、鈴木愛、千恵子、竜太郎をジロッ。
竜太郎「........」
鈴木愛「大塚さん、それがイヤで帰って来たんですか!?」
大塚愛「(頷く)」
西尾愛「どうして!? 居心地よさそうじゃない」
大塚愛「(ため息で)よすぎてダメなのよね」
鈴木愛「ぜいたくです!」
西尾愛「大塚さんの場合は、逆境で育ってるから、怒鳴られたりするほうがいいんだ」
大塚愛「いきなりお嬢様だもん、参ったよ」
竜太郎「(呆れ顔で)大塚くん........」
鈴木愛「(遮って)ひどいわ、大塚さん! 五十嵐さん、大塚さんのこと大切にしてくれてるのに飛び出してきて!」
鈴木愛、泣きながら怒っている。
大塚愛「(首をすくめ)鈴木さんが五十嵐さんの子供だったらねえ。気が合うわよ、お互い涙もろいから」
竜太郎「五十嵐さんは知ってるのか?」
大塚愛「一応置き手紙してきたけど........」
竜太郎「しょうがないなあ」
電話をかけようとする。
と――玄関のチャイムが鳴る。
□ 同・玄関
竜太郎が扉を開けると――
立っていたのは、タクシーの運転手。
竜太郎「........」
運転手「女の子乗せてきたんだけど........」
竜太郎「........幾らですか」
運転手「○万円」
竜太郎「え!」
運転手「名古屋から高速飛ばしてきたんだよ」
竜太郎「(ため息で)――」
□ 同・LDK
竜太郎が戻ってくる。
竜太郎「大塚くん、名古屋からタクシーでくることないだろ!?」
大塚愛「だって........」
西尾愛「........大塚さん、本当はパパが好きだから帰ってきたんでしょ?」
竜太郎「――」
大塚愛「好きとか嫌いじゃなくて、あたし、やっぱりパパの子だと思うの」
竜太郎「自分で決めたんじゃないか、五十嵐さんのところへ行くって」
大塚愛「性格の不一致。夫婦だったら離婚認めてくれるでしょ?」
竜太郎「........」
鈴木愛「五十嵐さんが可哀相!(と、泣く)」
西尾愛「いいじゃない、また三人愛がそろったんだから。パパ、大塚さんの面倒、見てくれるでしょ?」
竜太郎「しかし........」
大塚愛「あれ? パパ、あたしが出ていく時言わなかったっけ?『残ってもいいぞ』って」
西尾愛「言った言った(と、援護射撃)」
大塚愛「すっごく嬉しかったんだ、パパのセリフ。まさか、心にもないこと言ったわけじゃないでしょ?」
西尾愛「(ワイワイと)大塚さん、パパはそんな人じゃないわよ」
大塚愛「そうよねえ」
竜太郎、愛たちの言い方が憎たらしくムカムカ!
鈴木愛「(涙ぐんで)でも、五十嵐さんが........」
竜太郎「(爆発して)ウルサイ!」
大塚愛「(うっとりして)快感!」
竜太郎「――」
西尾愛と大塚愛、全然メゲずにワイワイと竜太郎にセマる。
□ 同・洗面所
竜太郎、扉を乱暴に閉め、ブ然と呟く。
竜太郎「........先週の盛り上がりは一体なんだったんだ!?」
□ ――C・M――
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