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●パパは年中苦労する 最終回 (1)

□ 前回までのあらすじ
ナレーション「巽耕作、41歳。新進気鋭の作曲家。10年前に結婚し4人の子供を設けたが、離婚。子供たちは別れた妻が引き取り、彼は優雅な独身生活を送っている」
ナレーション「ある日、離婚した妻が突然蒸発、彼は置き去りにされた子供たちの面倒をみなければならなくなった」
ナレーション「このドラマは、噂のプレイボーイが子育てに悪戦苦闘する、聞くも涙語るも涙の........喜劇である」
□ タイトル
□ 耕作の元の家・LDK(夕)
電話が鳴る。
美加が出て――
美 加「もしもし........あ、パパ?」
学校から帰ってきてファミコンをやったり宿題をしたりしていた涼たち、美加を見る。
美 加「えーッ、ヤダー(と、ダダをこねる)」
涼たち、? と、電話口に寄ってくる。
□ 音楽スタジオ・廊下
耕作が電話している。
耕 作「(ウンザリ)ヤダじゃないの」
涼の声「パパ? 涼だけど」
耕 作「ああ。夕飯の買物、頼むよ」
涼の声「今日も私たちだけで食べるの?」
耕 作「御飯はパパが帰ってから作るから」
涼の声「(嬉しそうに)じゃ、帰ってくるの、早いんだ」
耕 作「ン........じゃあ、頼んだぞ」
涼の声「判った。バイバイ!」
耕作、電話を切る。
と、通り掛かったミュージシャンが声をかける。
ミュージシャン「先生、彼女ですか?」
耕 作「(笑って誤魔化して)まあね」
ミュージシャン「羨ましいですねえ、その歳で独身」
耕 作「そうかね? 奥さんがいた方が便利だと思うけどな」
ミュージシャン「え?」
耕 作「(曖昧に)いや」
他のミュージシャンたちも休憩から戻ってくる。
耕 作「さ、今度は一回でビシッと決めよう!」
などとみんなを急かしてスタジオに入ってゆく。
□ 同・スタジオ内
――レコーディング風景。
ヘッドホンをつけた耕作、小編成のバンドをカッコよく指揮している。
□ 商店街
――買物の主婦たちでごった返している。
その中に混じって子供たち、買物をしている。
一方を見た克麻が涼をつつく。
  涼「なによ、お兄ちゃん」
克 麻「あれ........」
涼たち、克麻が指差した方向を見て、!
黎と日高がいる。
買物途中の黎は哲也を連れて怪訝な表情で、日高は緊張しきった様子で、喫茶店に入ってゆく。
□ 喫茶店・店内
モジモジしている日高。
黎、ヤバそうな雰囲気は感じていて、明るく――
  黎「哲也、せっかくだからご馳走になっちゃお!」
哲 也「アイスクリーム!」
  黎「私、マロンパフェ。日高さんは?」
日 高「........コーヒー」
ウェイターが去る。
入口――レジの陰から、二人の様子を窺っている子供たち。
日高、真剣な顔で黎の前に何かを差し出す。
――自分の名前を書き入れた婚姻届である。
  黎「(ポカンと)なんですか? これ........」
日 高「佐藤さんッ、ボクと結婚してください!」
黎、ア然!
子供たちもビックリ顔を見合わせる。
日高の大声に、まわりの客たちも二人に注目。
  黎「(小声でたしなめる)そういうことを大声で........」
日高、黎に額を寄せる。
黎、? つられて額を寄せる。
日 高「(小声で)佐藤さん、結婚してください」
  黎「――」
日高、じっと黎を瞶めている。
  黎「(ため息で)日高さん........お断りしたはずでしょ?」
日 高「でも........」
額を寄せ合って話す黎と日高。
離れてその様子を見ている子供たちには、二人は親密に語り合っているように見える。
克 麻「あーあ、いけないんだ」
涼、克麻の口を押さえる。
と――子供たちの前に立ちはだかり、恐い顔で睨みつけるウェイター。
子供たち、無視するが、ウェイターにつまみ出されてしまう。
黎、その騒ぎに目をやりかけるが――
日 高「佐藤さんのこと、本当は先生にお譲りするつもりでした」
  黎「譲るって、私はモノじゃ........」
日 高「しかし、佐藤さんにプロポーズした、その舌の根も乾かぬうちに他の女と........先生が不実な人と判った以上、私は先生からあなたを奪い、幸せにしなければならない、それが私の使命だと悟ったんですッ」
  黎「まあまあ、日高さん」
と、のらりくらりかわそうとする。
日高、セマるセマる。
哲也、二人の攻防戦をキョトンと見ていた。
□ 耕作の元の家・LDK
「ただいま」
帰ってくる耕作。
「パパ、大変大変!」
と、子供たちが飛んでくる。
耕 作「(ドキッと)どうした!」
  涼「哲也くんのママ、日高さんに取られちゃうよ!」
耕 作「あ?」
静 華「日高さん、哲也くんのママにプロポーズしてた」
耕 作「(ガクッと)なんだ........」
静 華「パパ、いいの!」
耕 作「(気がなく)いいんじゃないか?」
克 麻「いい加減だね、パパも哲也くんのママも」
耕 作「え?」
克 麻「キスまでしといてさ」
耕 作「――」
「ねえ、パパ」
と、耕作を追求しようとする子供たち。
耕 作「あー、お腹ペコペコだ、お前たちも手伝ってくれよ」
と、エプロンをつけ、台所に立って腕まくり。
子供たち、ブスッ。
耕 作「(料理の準備をしながら、ブツブツ)いくらなんでも、日高なんか相手にするわけないだろ........」
    ×      ×
――食卓に並んだ夕飯のおかず。
耕 作「ようし、出来たぞ!」
と、台所から振り返ると――
子供たちはいない。
耕作、?
□ 同・子供部屋
子供たち、額を寄せ合ってヒソヒソ話をしている。
「おーい、ごはん出来たぞ!」
と、耕作が入ってくる。
子供たち、慌てて何もないふうを装う。
耕 作「(ニコニコと)なに内緒話してたんだ?」
  涼「なんでもない」
静 華「なんでもないよ」
美 加「なんでもないなんでもない」
みんな、笑って誤魔化し、部屋を出てゆく。
耕作、なんとなく変な感じで見送る。
□ 耕作の元の家・全景
――朝。
□ 同・和室
耕作、まだ夢の中。
涼と静華が抜き足差し足入ってくる。
耕作の枕許に座って――
  涼「(小声で)しーちゃん、どれぐらい?」
静 華「(小声で)これぐらいでいいんじゃない?」
と、耕作の髪の毛を一掴みする。
涼、持参した鋏でジョキッ! と切り落とす。
耕作、まだ眠っている。
静 華「(切り落とした髪の毛を見て)足りないかなあ........」
  涼「じゃ、もう少し........」
と、また耕作の髪に鋏を近づける。
耕作、目を覚ました。
眼前に迫る刃に、ギョッ!
耕 作「(思わず)人殺し!」
と、叫んで飛び起きた。
涼と静華、ビックリ。
耕作、涼たちだと判って、ホッとなるが――
耕 作「お、お前たち、な、なにしたんだ!」
□ 同・玄関
耕作、学校へゆく涼たちを美加とお見送り。
耕作、一部だけ極端に短くなった髪の毛を気にしている。
克 麻「いってきまーす!」
と、飛び出してゆく。
静 華「みかりん」
と、美加を呼び寄せ、何事か耳打ちする。
耕作、?
静 華「お願いね、みかりん」
美 加「わかった。てつやくんにたのんどく」
耕 作「なんの話だ?」
美 加「あのね........」
と、喋ろうとする。
  涼「ダメよ、みかりん」
美 加「どーして?」
  涼「秘密なの!」
美 加「(ブスッと)........」
耕 作「(疑惑で)お前たち........なんか変だぞ」
  涼「いってきまーす!」
と、出ていこうとする。
静 華「(止めて)涼ちゃん、あれ」
  涼「あ、そうか........」
涼と静華、声を合わせて――

静華
「エル・メルバノス・トリタス・グランデ・アスタルテ・オルソバノス・エルバノス・トリタス・コラソン・エ・コラソン・エル・アモル・ビイダ」
耕 作「(キョトンと)なんだ、それ........」
  涼「なんでもないなんでもない」
静 華「みかりん、頼んだよ」
二人、飛び出してゆく。
耕作、訳が判らない。
□ 幼稚園・表
――登園時間。
耕作が美加を送ってやってくる。
と――同じく黎が哲也を送ってきた。
二人、目が合い、黙礼する。
美 加「てつやくん」
と、哲也を呼び、耳打ちする。
耕作、?
  黎「(耕作は無視して)じゃあね、哲也」
哲 也「ウン、バイバイ!」
美 加「バイバイ!」
と、二人に手を振り、幼稚園に入ってゆく。
黎、行きかけ――面白そうに笑っている耕作に気付く。
  黎「........なによ」
耕 作「日高くんにまたプロポーズされたんだって?」
  黎「――。関係ないでしょ」
耕 作「........確かにね」
と、行きかける。
  黎「(ムカッと)日高さん、いい人よ、誰かさんと違って。浮気モンでもないし........」
耕作、立ち止まって振り向く。
  黎「(身構えて)........」
耕 作「........温泉抜け出して女に会いに行ったことか?」
  黎「別に。私には関係ありませんけど」
耕 作「(ボソッと)あいつらの母親だよ」
  黎「(意外で)え?」
耕 作「元・奥さん。アメリカから一時帰国してね。だから........きっぱりカタをつけるために会ったんだ」
  黎「........」
耕 作「(フッ切るように)そういうこと」
  黎「(窺って)私のために?」
耕 作「――。子供たちのためだよ」
  黎「........」
耕 作「まあ、母親なんていなけりゃいないでなんとかなるもんさ」
  黎「父親だって同じよ」
一瞬瞶め合う耕作と黎。
耕 作「じゃ、そういうことで」
  黎「じゃ、そういうことで」
二人、左右に別れてゆく。
□ 耕作の元の家・仕事部屋
耕作、ピアノを弾きながら楽譜を書いている。
「ただいま!」
と、飛び込んでくる涼と静華。
耕 作「(書きながら)仕事中だぞ」
静 華「ねえねえパパパパ! 今日哲也くんのママに会わなかった?」
耕 作「? 会ったよ」
静 華「やった!」
涼と静華、飛び上がって喜ぶ。
耕作、そんな二人を、? と見る。
□ 耕作の元の家・子供部屋(夜)
美加のキョトンとした顔。
神妙な顔をした静華が、テーブルに用意した赤と白のローソクに火をつける。
神妙な顔をした涼が明かりを消す。
ローソクの炎に照らし出される静華の顔。
――謎めいた雰囲気。
美加が脅えて声を上げる。
シッ! 静かにしろ、と美加を睨む涼と静華。
そんな二人を呆れ顔で見ている克麻。
  涼「(静華に)道具はこれだけ?」
静 華「(頷き)パパの髪の毛と........みかりんが持ってきてくれた、哲也くんのママの髪の毛........金の太陽と銀の月、それに、赤い糸」
“太陽”と“月”は、厚手の紙に色紙を貼ったもの。それらがテーブルの上に置かれてある。
克 麻「(呆れ顔で)もっとまともな方法がいいんじゃない? パパと哲也くんのママ、結婚させるんだったら」
静 華「これが一番いいの」
克 麻「効くわけないだろ? おまじないなんて」
静 華「朝静華たちが呪文かけたら、パパと哲也くんのママ、会ったもん」
克 麻「そりゃ会うんじゃないの? 二人とも幼稚園に送りに行くんだから」
  涼「だって、哲也くん、おばあちゃんが送ることが多いじゃない」
克麻、首を竦める。
静 華「それでは始めます」
涼と静華、『恋のおまじない』といった本をみながら、“儀式”を始める。
――“儀式”は適当に創作して。例えば、赤い糸で二人の髪の毛を結び合わせてローソクの炎であぶったり、呪文を唱えて太陽と月をくっつけたり離したり。ちょっと神秘的に、滑稽に見せて――
静 華「........二人は愛し合っています。結婚させてください」
と、涼と一緒に祈り........“儀式”は終わる。
克 麻「(疑って)それで結婚すンのかよ」
静 華「絶対する!」
美加、紙の“太陽”をローソクの炎にかざして遊びながら――
美 加「でも、パパたち、けんかしてたよ」
  涼「ホントに!」
美 加「ホント」
克 麻「(首をひねって)相性悪いんじゃない? あの二人」
静 華「そうかなァ」
と――美加のかざしていた紙にローソクの火が!
美加がビックリして手を離したため、絨毯に散らかっていた紙屑などに燃え移ってしまう。
子供たち、パニック!
美 加「パパ!」
克 麻「火事だ!」
耕作が飛び込んでくる。
耕作、必死に座布団などで炎を叩いて消し止める。
子供たち、ホッとなる。
耕作、状況を見て――
耕 作「(息荒く)お前たち、ローソクなんか持ち出して何やってたんだ!」
子供たち「........」
耕 作「答えなさいッ!」
子供たち、答えない。
耕作、ブ然。
□ 同・全景
――翌日。
□ 同・ベランダ
耕作、作曲中の歌を口ずさみながら洗濯物を干している。
克麻がやって来る。
克 麻「パパ、聞きたいことがあるんだけど」
耕 作「(作業をしながら)なんだ?」
克 麻「初対面の人でも抵抗なくフランクに話せる方だと思う」
耕 作「ン?」
克 麻「イエスかノーか」
耕 作「........イエス」
克 麻「スリムな女性とグラマーな女性、どっちが好きか?」
耕 作「なんだ? 一体」
克 麻「いいから、どっち」
耕 作「(考えて)........」
克 麻「あ、両方か」
と、勝手に納得して、答えを紙に書き込む。
耕 作「克麻」
克 麻「(答えを書き込んだ紙に質問が書いてあって)異性と一緒にいるとドキドキあがってしまう........そんなわけないか」
と、紙に“ノー”と書き込む。
耕作、? と、紙を覗き込もうとする。
克麻、慌てて後ろ手に隠す。
その紙――“相性診断テスト”と書かれてある。
□ 相性診断の結果を打ち出すコンピューターのプリンター
子供たち、興味津々覗き込んでいる。
――そこは、街のコンピューター占いのコーナーである。
子供たち、打ち出された診断結果を見る。
克 麻「(読んで)巽耕作、佐藤黎、二人の相性は........恋愛度80%、結婚度20%........二人ともプライドが高く意地っぱりなので、どちらかが我慢しなければ二人の関係は長続きしないでしょう。結婚は諦めた方がいいでしょう」
顔を見合わせる子供たち。
  涼「(ガッカリ)最悪じゃない」
克 麻「これ(診断用紙)、見せられないよ」
ため息の子供たち。
□ 耕作の元の家・子供部屋
腕組みをして考えている子供たち。
  涼「(閃いて)いいこと思いついた!」
美 加「なになに?」
子供たち、額を寄せ合い、ヒソヒソ離し。
顔を上げて――
静 華「いいね、賛成!」
  涼「絶対うまくいくよ」
と、自分の机から貯金箱を持ってくる。
克 麻「なに?」
  涼「だって、お金かかるじゃない」
静 華「あ、そうか」
と、自分の貯金箱を持ってくる。
美加は部屋を出てゆく。
涼と静華、貯金箱を割る。
――中身はあまり入ってない。
  涼「これで足りるかなあ........」
首を傾げる静華。
美加が貯金箱を持って入って来て、涼たちに差し出す。
  涼「みかりんはいいよ」
美 加「だって、パパとてつやくんのママに結婚してほしいもん」
克麻、ソッポを向いている。
  涼「お兄ちゃん、出しなさいよ」
克 麻「ヤダよ、俺........」
静華、克麻の貯金箱を持ってくる。
克 麻「あ、ダメだよ」
と、取り戻そうとするが、涼たち、渡さない。
揉み合っているうちに、克麻の貯金箱が落ちて割れてしまう。
――中身、たっぷり入っていた。
美 加「(目を丸くして)おにいちゃんすごーい」
静 華「(冷たい目で)セコく貯め込んでたのねえ」
涼と顔を見合わせて頷き合う。
克麻、散らばった金をセコセコ集めている。
□ 黎のマンション・表の廊下
外から帰ってきた黎、ビックリして目を丸くする。
作業員が、結婚式や開店記念などに飾る巨大な造花の“花輪”を黎の家の前に飾ろうとしている。
  黎「ちょっと、なにしてるんですか!」
作業員「巽耕作さんからのお届け物です」
  黎「!」
玄関からツヤ子と哲也も顔を出し、ポカンと“花輪”を眺める。
――エレベーターホールから、ソッとその様子を見ていた子供たち。首を傾げている。
□ 同・LDK
黎たち、入ってくる。
ツヤ子「巽さんも何考えてンだろうね」
  黎「嫌がらせよ」
ツヤ子「まさか」
黎、電話をかけようとする。
ツヤ子「あ、そういえば手紙も来てたわよ」
と、黎に封筒を渡す。
黎、! 開けて見ると――ワープロで打った文面。
“哲也くんのママへ
  好きです
   結婚してください
          巽耕作”
黎、ア然。
ツヤ子「あら........本気かしら」
  黎「(半分嬉しく半分怒って)どういうつもりなのよ!」
□ 耕作の元の家・玄関
耕 作「(恐い顔で)どういうつもりだ!」
外から帰ってきた子供たち、ビックリ。
耕 作「今、哲也くんのママから電話があったぞ」
子供たち「........」
耕 作「なんなんだ、お前たちは。最近おかしいぞ? パパの髪の毛切ったり、ローソクで遊んだり、それに今日の悪戯だ。どうして哲也くんのママに“花輪”なんか送ったんだ」
静 華「あれ、間違い」
耕 作「?」
  涼「花束贈るつもりだったんだけど、お兄ちゃんが間違えて注文しちゃって........」
克麻、頭ポリポリ。
耕 作「(絶句して)花束にしてもだ。それにラブレター!」
静 華「だって........」
耕 作「だって、なんだ」
静 華「パパに哲也くんのママと結婚してほしいんだもん」
耕 作「――」
  涼「パパ、お願い」
美 加「パパ、おねがい」
克 麻「俺からも頼むよ」
必死に訴える。
耕作、そんな子供たちを見る。
耕 作「........そんなに、パパに結婚してほしいのか?」
子供たち、頷く。
耕 作「........」
耕作、ため息で考えた。
□ ――C・M――

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