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| □ 川沿いの道(早朝) | |
| サッカーボールを抱えた少年(北村健太)が駈けてゆく。 | |
| □ 近くの住宅街 | |
| 健太、走ってくる。 | |
| 北村家がある。 | |
| 健太、新聞受けからはみ出した朝刊を取る。 | |
| □ 同・リビングダイニング | |
| 健太の母・紀子が台所で朝食の用意をしている。 | |
| 健太の父・耕平、テーブルにいて、ボンヤリとしている。 | |
| 健太が入ってくる。 | |
| 紀 子 | 「(咎めるではなく)ノンビリしてたら遅刻しちゃうわよ」 |
| 健 太 | 「判ってる」 |
| と、朝刊を耕平の前に置くと、洗面所へ。 | |
| 耕平、朝刊を広げようとして――やめる。 | |
| 耕 平 | 「........」 |
| 料理を運んできた紀子、その様子を見ていた。 | |
| 紀 子 | 「........」 |
| 耕平、元気なくため息をつく。 | |
| □ 雑居ビル・楷メンタルクリニック・診察室 | |
| 楷の前に座る耕平、ため息をつく。 | |
| 耕 平 | 「........体がダルいんです」 |
| 楷 | 「それはいつもですか?」 |
| 耕 平 | 「(考えて)........」 |
| 楷 | 「(見守って)........」 |
| 耕 平 | 「森先生に紹介されたんです........息子がよく診てもらってるんです」 |
| 楷 | 「そうですか」 |
| 耕 平 | 「........えーと、何の話でしたっけ?」 |
| 楷 | 「朝起きるのが辛かったりしますか?」 |
| 耕 平 | 「........そうですね」 |
| 楷 | 「(問診票を見ながら)銀行にお勤めなんですね」 |
| 耕 平 | 「........」 |
| 楷 | 「........」 |
| 耕 平 | 「........はい」 |
| 楷 | 「銀行には付属の診療所があると思うのですが、相談に行かれたことはありませんか?」 |
| 耕 平 | 「........人事に筒抜けでしょ?」 |
| 楷 | 「(首を振り)医者には守秘義務がありますし、ちゃんとした会社ならその重要性も判ってるはずです」 |
| 耕 平 | 「(ため息で)........」 |
| 楷 | 「症状が出たのはいつ頃からですか?」 |
| 耕 平 | 「........」 |
| 楷 | 「きっかけで思い当たることはありませんか?」 |
| 耕 平 | 「(考え)........」 |
| □ 同・待合室 | |
| あずさ、マガジンラックの雑誌を整理している。 | |
| □ 同・診察室 | |
| 楷 | 「森診療所での血液検査の結果と今お話を伺って........おそらく感情障害、うつ病だと思います」 |
| 耕 平 | 「........病気、なんですか?」 |
| 楷 | 「(瞶めて)でも、うつ病は必ず治ります」 |
| 耕 平 | 「........」 |
| 楷 | 「北村さんに今必要なのは、適切な薬と、なによりストレスから解放された生活です。それから治療にはご家族の協力が不可欠........」 |
| 耕 平 | 「ストレス........仕事のことですか」 |
| 楷 | 「北村さんがそう思っていらっしゃるのなら」 |
| 耕 平 | 「休めませんよ。こんな時期に休んでなんか居られませんよ」 |
| 楷 | 「........」 |
| 耕 平 | 「でも、会社に行っても仕事にならない。集中出来ない........」 |
| 楷 | 「だったら思い切って休まれたほうが........」 |
| 耕 平 | 「休めませんよ、こんな時期に........」 |
| 楷 | 「........」 |
| 耕 平 | 「でも、会社に行っても仕事が出来ない(と、頭を抱える)」 |
| 楷 | 「........」 |
| 耕 平 | 「(苛立ち)どうすりゃいいんだ。なんで私がうつ病なんかにならなきゃいけないんだ。原因はなんですか。トラウマですか」 |
| 楷 | 「(首を振り)心の病気と言われていますが、実は脳内物質、脳の中の物質ですね、そのバランスが崩れることが原因の一つなんです」 |
| 耕 平 | 「カウンセリングで治して下さい」 |
| 楷 | 「今の北村さんの状態ではカウンセリングは危険です」 |
| 耕 平 | 「危険?」 |
| 楷 | 「うつのためにエネルギーがなくなっているし、混乱されているように思います」 |
| 耕 平 | 「混乱、って........」 |
| 楷 | 「先ほどから同じことを繰り返されたり、言葉が出ないこともありましたよね?」 |
| 耕 平 | 「........」 |
| 楷 | 「まず休養を取り、薬で治療して、薬で効果がなければ他の方法を考えましょう」 |
| 耕 平 | 「........」 |
| 楷 | 「うつ病は“心の風邪”と言われています。誰でもかかる可能性があるんです。6人に1人の割合で」 |
| 耕 平 | 「薬は嫌なんです。風邪の時はいつも卵酒とかビタミンCを摂ったり........」 |
| 楷 | 「北村さん、風邪はこじらせると肺炎になったり死に至ることもありますよね? うつ病も同じなんです。うつ病イコール死ではありませんが、適切な治療をしなければ、大変なことになります」 |
| 耕 平 | 「――」 |
| 楷 | 「(耕平を見据えて)うつ病を治しましょう」 |
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