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| □ 都心の道路 | |
| 楷の車が赤信号で停止する。 | |
| □ 楷の車・車内 | |
| 楷、何気なく窓外に目をやる。 | |
| 楷 | 「........」 |
| 幼稚園がある。 | |
| 音楽が流れている。 | |
| 印象的なメロディ。(「おもいでのアルバム」) | |
| 楷、無意識にそのメロディを口ずさんでいる。 | |
| 楷、そんな自分に違和感を感じる。 | |
| 信号が青に変わる。 | |
| しかし、楷は車を発進させない。 | |
| メロディ、サビの部分へ―― | |
| 楷の顔色が変わる。 | |
| リフレインされるサビのメロディ。 | |
| 楷、蒼褪め、震え出す。 | |
| 恐怖に駆られて―― | |
| □ 楷メンタルクリニック・洗面所 | |
| 飛び込んで来る楷、激しく手を洗う。 | |
| 楷 | 「........」 |
| 楷、震えている。 | |
| 楷 | 「........何だ........何なんだ........」 |
| 楷、一旦洗うのをやめ、セーターの袖をまくり上げ、腕時計を外す。 | |
| そして、肘から洗い始める。 | |
| 楷、顔を歪めて―― | |
| □ 同・待合室 | |
| 楷が憔悴した様子で洗面所から出て来る。 | |
| あずさ | 「(心配して)大丈夫ですか?」 |
| 楷 | 「.......」 |
| 楷、あずさを無視して診察室へ―― | |
| □ 同・診察室 | |
| あずさ、楷を追いかけて入って来る。 | |
| あずさ | 「楷先生が15歳の時に診て下さった先生はどこにいらっしゃるんですか?」 |
| 楷 | 「........え?」 |
| あずさ | 「その先生なら、楷先生の気持ち、判ってくれるんじゃないですか!?」 |
| 楷 | 「........」 |
| □ フラッシュ(楷の回想) | |
| ――楷家の焼け跡。 | |
| 15歳の楷、混乱を精神科医にぶつける。 | |
| 精神科医、泥まみれになりながら楷を抱き留める。 | |
| □ 元の診察室 | |
| 楷 | 「........先生は、日本にはいない。研究のためにアメリカに移り住まれてる」 |
| あずさ | 「だったら他の........」 |
| 楷 | 「(苦しく)他の精神科医の治療を受ける時は精神科医をやめる時だ。........まだ自分をコントロール出来てる........」 |
| あずさ | 「........」 |
| □ 森診療所・全景 | |
| ――別の日。 | |
| □ 同・診察室 | |
| 三七子が電話をかけている。 | |
| ――表情が暗い。 | |
| 三七子 | 「(繋がって)もしもし、楷くん?」 |
| □ 楷メンタルクリニック・診察室 | |
| 楷が電話に出ている。 | |
| 楷 | 「どうした?」 |
| ――以下カットバック(あるいは画面分割)で。 | |
| 三七子 | 「もうすぐうちの母がそっちに行くわ」 |
| 楷 | 「!? 」 |
| 三七子 | 「迷惑だからやめなさいって言ったんだけど........」 |
| 楷 | 「??」 |
| 三七子 | 「最近様子がおかしいの。ちょっと話してみてくれない?」 |
| 楷 | 「それは構わないけど........」 |
| その時、ドアにノックがあり、あずさが顔を出す。 | |
| あずさ | 「三七子先生のお母さんがいらっしゃいました」 |
| 三七子 | 「聞こえた。楷くん、お願いね」 |
| 楷 | 「ちょっと........」 |
| 三七子、ため息で電話を切る。 | |
| 診察室へ三七子の母・洋子が入って来る。 | |
| ――品のいい初老の女性である。 | |
| 楷 | 「じゃ........(と、電話を切り)こんにちは。お久しぶりです」 |
| 洋 子 | 「(ニコニコ)お元気そうね」 |
| 楷 | 「お蔭様で」 |
| 洋 子 | 「健康には気をつけて下さいね。昔から医者の不養生って言うでしょ?」 |
| 楷 | 「(微苦笑)そうですね」 |
| あずさ | 「あのう、これ、いただきました」 |
| あずさ、野菜が溢れそうな段ボール箱を抱えている。 | |
| 楷、驚く。 | |
| 洋 子 | 「お裾分けよ」 |
| 楷 | 「........ありがとうございます」 |
| 洋 子 | 「ここのお野菜ね、とっても美味しくて体にいいの。騙されたと思って試してみて。一口齧った瞬間、太陽と大地のエネルギーを感じるから」 |
| 楷 | 「(微笑で)じゃあ、いただいてみます。あずさくん、コーヒー」 |
| あずさ | 「はい」 |
| 洋 子 | 「ごめんなさい、私、特製ジュースしかいただきませんの」 |
| と、バッグの中からペットボトルに入れた野菜ジュースを見せる。 | |
| 楷 | 「それは?」 |
| 洋 子 | 「“実りの家族”の野菜で作ったの。一本差し上げるわ」 |
| 楷 | 「........ありがとうございます。野菜がお母さんの健康の秘訣なんですね」 |
| 洋 子 | 「そうなの」 |
| と、ニコニコ話し続ける。 | |
| □ カフェ“バナナムーン”・店内 | |
| 楷、考えている。 | |
| あずさが野菜の入った段ボール箱を忍に渡す。 | |
| 力 石 | 「ありがとう。忍ちゃん、何か作ってあげて」 |
| 忍 | 「はい」 |
| 力 石 | 「あら、ちょっと。“実りの家族”じゃない」 |
| 段ボール箱に、“実りの家族自然農園”の文字。 | |
| 楷 | 「有名なの?」 |
| 力 石 | 「楷くん、知らないの? 被害者の会も出来てるのよ」 |
| 楷 | 「被害者?」 |
| 力 石 | 「自分たちの農園で作って格安なの。でもね、年契約を結べとか、出資者にならないかとか、寄付しろとか、かなり強引なのよね。結局高くついちゃうのよ」 |
| 楷 | 「........」 |
| 力 石 | 「それにお料理教室とか講習会、ヨガ教室、人生相談、いろんなことやって会員を集めてるの」 |
| あずさ | 「会員集めてどうするんですか?」 |
| 力 石 | 「目的はお金。“実りの家族”に全財産寄付した人もいるらしいわ」 |
| 楷 | 「宗教じゃないの?」 |
| 力 石 | 「違うの。教祖はいないしね。でもね、カルト宗教みたいに洗脳してるんじゃないかって噂なの」 |
| 楷 | 「........」 |
| 力 石 | 「楷くんのクリニックに洗脳されたって人、来ない?」 |
| 楷 | 「........洗脳の恐いところは、本人が洗脳されたと気づかないところなんだ」 |
| 力 石 | 「ヤダ、そうなの? 恐いわ」 |
| 楷、考えながら、席を立つ。 | |
| 力 石 | 「あれ? 楷くん? 食事しないの?」 |
| 楷、耳に入らない様子で店を出て行く。 | |
| あずさ | 「私、先生の分までいただきます」 |
| 力 石 | 「(ジロッ)あんた、食欲だけは旺盛ね」 |
| □ 楷メンタルクリニック・診察室 | |
| デスクの上に山積みになった“実りの家族”の資料(書籍や雑誌など)。 | |
| 楷、厳しい表情で目を通している。 | |
| 楷 | 「........」 |
| 楷、電話をかける。 | |
| □ 森診療所(森家)・リビング | |
| 三七子が電話に出て―― | |
| 三七子 | 「楷くん........どうだった、うちの母」 |
| ――以下、カットバック(あるいは画面分割)で。 | |
| 楷 | 「“実りの家族”とはいつから関わってるの?」 |
| 三七子 | 「“実りの家族”?」 |
| 楷 | 「野菜の........」 |
| 三七子 | 「ああ。いつだったかしら」 |
| 楷 | 「“実りの家族”はかなり怪しい、いや、危険な団体なんだ」 |
| 三七子 | 「! 危険って........」 |
| 楷 | 「お母さんは、洗脳されている可能性がある」 |
| □ タイトル | |
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