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| □ 飛行機が滑走路に舞い降りる | |
| 機体にカンガルーのマーク。 | |
| ――カンタス航空。 | |
| テロップ――“オーストラリア・パース空港” | |
| □ 同・到着ロビー | |
| クレームバゲージから吐き出されてくる旅行客。 | |
| その中に、朗がいる。 | |
| 朗 | 「........」 |
| ――迷いと戸惑いの表情。 | |
| 朗、レンタカーのカウンターに向かいかけ、フト立ち止まる。 | |
| 待合いの椅子。 | |
| 朗 | 「........」 |
| □ 同(回想) | |
| 朗、紙コップを手に取り、飲もうとして、!? | |
| 紙コップの縁に、淡い色の口紅がついていたのだ。 | |
| 朗 | 「――」 |
| × × | |
| 黎 子 | 「(恐縮して)ご、ごめんなさい」 |
| と、飲みかけたジュースを元に戻す。 | |
| が――その紙コップにも淡い色の口紅がついていた。 | |
| 黎 子 | 「(戸惑い)........」 |
| 朗 | 「(も戸惑い)........」 |
| □ 元の到着ロビー | |
| 朗 | 「........」 |
| □ 夜の公園(回想) | |
| 朗 | 「俺たち........」 |
| 黎 子 | 「私たち........」 |
| 黎子、朗にキスする。 | |
| 朗、黎子を抱きしめようとして、躊躇う。 | |
| 黎子、唇を離す。 | |
| 黎子の頬を涙が伝う。 | |
| 朗 | 「........」 |
| 黎 子 | 「........」 |
| 二人が同時に口にする。 | |
| 「さようなら」 | |
| □ 元の到着ロビー〜外 | |
| 朗 | 「........」 |
| 朗のN | 「(自分に言い聞かせるように)........あれでよかったんだ」 |
| 吹っ切るように出口に向かう。 | |
| 一歩外へ出ると、強烈な日射し。 | |
| 朗、眩しそうに目を細める。 | |
| 朗 | 「........」 |
| □ パース市街地への道 | |
| 朗の運転する四駆が走ってゆく。 | |
| □ 走る四駆・車内 | |
| 朗、運転している。 | |
| 朗 | 「........」 |
| □ 中村設計事務所・応接ブース(回想) | |
| 朗と野口。 | |
| ――営業時間内だが絵里花はいない。 | |
| 野口、ムッとなって―― | |
| 野 口 | 「おりたいだと!?」 |
| 朗 | 「すいません(と、頭を下げる)」 |
| 野 口 | 「朗、俺がどうして“JOY COOK”の仕事をお前に回したか、判ってるよな」 |
| 朗 | 「........はい」 |
| 野 口 | 「現実から逃げない。そういう決意で引き受けたよな、朗」 |
| 朗 | 「........辻谷黎子とは、別れました」 |
| 野 口 | 「ったく、いつまで死んだ恋人に縛られてんだよ」 |
| 朗 | 「........」 |
| 朗、野口に頭を下げ、自分のデスクに戻ろうとする。 | |
| 野 口 | 「(強い口調で)ダメだ」 |
| 朗、振り向く。 | |
| 野 口 | 「(朗の気持ちは理解できるが)仕事だぞ。責任ってもんがあるだろ!?」 |
| 朗 | 「........責任」 |
| 野 口 | 「(厳しく)プロとしての責任だよ」 |
| 朗 | 「――」 |
| □ パースの街・キングスパーク | |
| 色とりどりのワイルドフラワーが咲き乱れている。 | |
| 朗、夕暮れ色に染まっていくパースの街を眺める。 | |
| 朗 | 「........」 |
| □ 同(回想) | |
| 朗 | 「試験二次まであるし、ああいうのは一級建築士の資格がないとダメなの。俺は大学出てないから、二級取って職歴積まないと一級の試験も受けられない」 |
| ひとみ | 「ふうん、そうなんだ」 |
| 朗 | 「(呆れ顔で)あのなあ、俺何回も話したぜ」 |
| ひとみ | 「何回でも聞きたい。夢話してる朗、好きだから」 |
| 朗 | 「――。お前、そうやって人の話聞いてないこと誤魔化してないか?」 |
| ひとみ | 「(舌を出し)バレた?」 |
| 朗、ひとみのおでこをつつく。 | |
| □ 元のキングスパーク | |
| 朗 | 「........」 |
| 朗、微かに表情が歪む。 | |
| 野村の声 | 「高野さんは、亡くなったひとみさんにずっと罪悪感を持っていた」 |
| □ 野村メンタルクリニック・カウンセリングルーム(回想) | |
| 朗と野村。 | |
| 野 村 | 「(続いて)辻谷さんは、ひとみさんの名前を名乗ることで罪の意識を持ち続けようとした。そうやって自分の責任を引き受けたんです」 |
| 朗 | 「........」 |
| 野 村 | 「高野さんは、そんな辻谷さんに惹かれたんじゃないですか?」 |
| 朗 | 「........そうかもしれません」 |
| 野 村 | 「でも、辻谷さんと別れた」 |
| 朗 | 「(頷き)........一生ひとみから抜け出せない気がして........」 |
| 野 村 | 「ひとみさんを忘れなくても、辻谷さんを愛することは出来ると思いますよ」 |
| 朗 | 「........そうでしょうか」 |
| 野 村 | 「人間はみな、過去を背負いながら生きなければなりません」 |
| 朗 | 「........」 |
| 野 村 | 「........あなたも........私も........辻谷さんも........」 |
| 朗 | 「――!」 |
| □ パース・□□ホテル・表 | |
| 朗、四駆から降り、ホテルを見る。 | |
| 朗 | 「........」 |
| 朗のN | 「........ひとみが死んだホテル」 |
| □ 中村設計事務所・フロア | |
| ――終業後。 | |
| 朗、絵里花に頭を下げている。 | |
| 朗 | 「絵里花にものを頼める立場じゃないかもしれない。でも、頼む」 |
| 絵里花 | 「(褪めた目で)........“JOY COOK”の仕事下りてどうするの?」 |
| 朗 | 「オーストラリアに行きたいんだ」 |
| 絵里花 | 「(意外で)え!?」 |
| 朗 | 「野口さんに無責任だって言われた。自分でもそう思う。今のままだと、また同じこと繰り返すと思う。だからちゃんとひとみのことを考えたいんだ」 |
| 絵里花 | 「........信じられない」 |
| 朗 | 「眠れない時に、眠ろうと考えるんじゃなくて、いつまでも起きてようと思う。そうすると眠れる........そういう心理療法もあるんだ」 |
| 絵里花 | 「(首を振り)あの女と行くんだ」 |
| 朗 | 「........彼女とは別れた」 |
| 絵里花、!? | |
| 朗 | 「もう........彼女は、関係ない」 |
| 絵里花 | 「一人で行くのね」 |
| 朗 | 「ああ。一人じゃなきゃ意味がない」 |
| 絵里花 | 「........」 |
| 朗 | 「........」 |
| □ □□ホテル・廊下〜室内 | |
| 朗、部屋の鍵を開ける。 | |
| 朗 | 「........」 |
| 朗、部屋に入ってゆく。 | |
| 奥へ行く。 | |
| あの、ベッドがある。 | |
| □ 同(回想) | |
| ひとみ | 「朗、私のこと、好き?」 |
| 朗 | 「え?」 |
| ひとみ | 「(瞶めて)愛してる?」 |
| 朗 | 「(瞶めて)だからこうしてるんだ」 |
| ひとみ | 「ずっと、好き? 永遠に愛してる?」 |
| 朗 | 「(真顔で)今が、永遠に続けばいいと思ってるよ」 |
| ひとみ、朗を引き寄せ、体勢を入れ替えてキスする。 | |
| □ 元の室内 | |
| 朗 | 「――」 |
| 朗、やはり言葉を失ってしまう。 | |
| 朗、ベッドを前に立ちつくす。 | |
| □ ――C・M―― | |
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(2)へ続く |
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