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| □ 都心の道 | |
| 喪服姿の矢島がやってくる。 | |
| 矢 島 | 「........」 |
| 厳しい表情で歩いてゆく。 | |
| その行く手に、葬儀場がある。 | |
| □ 葬儀場・内 | |
| 矢島、入ってくる。 | |
| 紀子他、出席している。 | |
| 紀 子 | 「(矢島に気づき)........」 |
| 矢島、祭壇の前に立つ。 | |
| ――花に飾られた相沢の遺影。 | |
| 矢 島 | 「(耐えて)........」 |
| 矢島、合掌する。 | |
| 園田副社長、林政経部長も参列している。 | |
| 矢島、踵を返し――気づく。 | |
| 園田副社長と林政経部長、視線を合わせない。 | |
| 矢 島 | 「........」 |
| 矢島、無言のまま、会場を出てゆく。 | |
| 紀 子 | 「(気にして)........」 |
| □ テレビ・ジャパン・報道局フロア | |
| ――空席になった相沢の席。(花が供えられている) | |
| みんな、沈んでいる。 | |
| 坂本、ため息で―― | |
| 坂 本 | 「相沢部長が自殺なんて........私と局長がいない間に一体なにがあったの」 |
| 村 岡 | 「自殺の原因は判ってません」 |
| 田 村 | 「やっぱりあの事件絡みだろうな?」 |
| 紀 子 | 「坂本さんは15年前に起きた一家惨殺事件をご存知ですか?」 |
| 坂 本 | 「........知ってるわ。私が入社した年で、別の部署にいた時........」 |
| 村 岡 | 「矢島さんと私の夫は、その事件が冤罪の可能性があると考え、調べていたんです。その結果、警察が目撃者の証言が曖昧だったにも関わらず、大川俊行という男性を容疑者として逮捕、起訴したことが判りました」 |
| はるか | 「元捜査員のコメントが取れ、それを『ストレートニュース』で流そうとした時、“上”からストップがかかりました」 |
| 田 村 | 「で、その夜、相沢部長が屋上から飛び降りた」 |
| 坂 本 | 「........」 |
| 大 野 | 「(泣き腫らして目が真っ赤)相沢さん、なんで死んじゃったのー」 |
| 襟、ハンカチを差し出したりして慰めている。 | |
| みんな | 「........」 |
| 紀 子 | 「(無念で)........坂本さん、これ........」 |
| と、夕刊紙の記事を見せる。 | |
| ――矢島が殺人犯の娘を養女にしているという記事。 | |
| 坂 本 | 「――」 |
| そこへ、森田局長と林政経部長がやってくる。 | |
| 森田局長 | 「突然だが、『ストレートニュース』は年内一杯で終了する」 |
| みんな | 「――!」 |
| 坂 本 | 「どういうことですか」 |
| 林政経部長 | 「聞こえなかったか? 『ストレートニュース』は打ち切りだ」 |
| 坂 本 | 「聞きたいのは理由です」 |
| 林政経部長、自分の席へ行ってしまう。 | |
| 森田局長 | 「以前からニュース編成の見直し作業はやっていた」 |
| 紀 子 | 「相沢部長が亡くなったからですか」 |
| 田 村 | 「俺たちが15年前の事件でチョロチョロしてるからでしょ」 |
| 森田局長 | 「(不機嫌に)関係ない」 |
| 林政経部長、自分のデスクで薄く笑っている。 | |
| 紀 子 | 「........」 |
| □ 警視庁・記者クラブ | |
| 紀子、パソコンに向かってニュース原稿を書いている。 | |
| しかし、集中できない。 | |
| 紀 子 | 「........」 |
| □ フラッシュ | |
| ――15年前の事件。 | |
| 所轄署に連行される大川。報道陣の中を引き回される。 | |
| 井上の声 | 「........あれが、矢島の原点だ」 |
| □ 元の記者クラブ | |
| 紀 子 | 「........」 |
| 紀子、ため息で、デスクの上の原稿を整理する。 | |
| 紀子、落ちた広報発表文を拾い上げようとして、!? | |
| 紀 子 | 「........被害者、矢島ひとみ?」 |
| 紀子の目、広報発表文に釘付けになる。 | |
| □ ××病院・全景 | |
| □ 同・廊下 | |
| 紀子がやってくる。 | |
| 理恵がいた。 | |
| 紀子、会釈する。 | |
| × × | |
| 紀子、驚いている。 | |
| 理 恵 | 「........ダンプの運転手はひとみが飛び込んできたって言うけど(信じたくない、と首を振る)」 |
| 紀 子 | 「........まだ、意識が戻らないんですか」 |
| 理恵、心配そうに頷く。 | |
| □ 同・病室 | |
| 紀子と理恵、入ってくる。 | |
| ベッドで昏睡するひとみ。 | |
| 矢島、付き添い、ひとみの手をじっと握っている。 | |
| 紀 子 | 「........(声が掛けられない)」 |
| 矢島、静かにひとみに語りかける。 | |
| 矢 島 | 「........ひとみ、白雪姫が好きだったな........ベッドに入るといつもママにせがんで読んでもらってたよな........」 |
| 紀 子 | 「........」 |
| 理 恵 | 「........」 |
| 矢 島 | 「ひとみはいつも幸せそうな顔で眠る........王子様のキスで目覚めることを夢見てた........」 |
| 眠るひとみ。 | |
| 矢 島 | 「........目、覚まさなくていいよ」 |
| 紀子、理恵、! | |
| 矢 島 | 「目を覚ましたって、つらい現実しかない........目が覚めた時、最初に目にするのは王子様じゃない。........両親を殺した男だ」 |
| 紀 子 | 「――」 |
| 理 恵 | 「(辛く)........」 |
| 矢 島 | 「........ずっと眠ってていい。夢の中で、ずっと生きててくれてれば........」 |
| 紀 子 | 「........」 |
| □ バー“シャコンヌ”・店内 | |
| 矢島と紀子、カウンターで飲んでいる。 | |
| したたかに酔った矢島、煽るように酒を飲む。 | |
| 紀 子 | 「矢島さん、飲み過ぎです」 |
| 矢 島 | 「........」 |
| 紀 子 | 「........」 |
| 矢 島 | 「........相沢とは同期だった」 |
| 紀 子 | 「(矢島を見る)........」 |
| 矢 島 | 「あいつは雑誌からの途中入社だった。社会部と政経部、仕事は違ったが、馬が合ってよく飲んだし、議論もした........あいつが会社側の人間になるまでは........」 |
| 紀 子 | 「........」 |
| 矢 島 | 「死に方の話もした。報道マンらしい死に方は何か、ってね」 |
| 紀 子 | 「!」 |
| 矢 島 | 「戦場で流れ弾に当たって死ぬ........乗ってる取材ヘリの墜落........虎に食われる........組織に潜入して見つかり、壮絶なリンチで絶命........」 |
| 紀 子 | 「........」 |
| 矢 島 | 「(紀子を見て)俺と相沢が一番気に入った死に方、なんだと思う?」 |
| 紀 子 | 「(辛く)........いえ」 |
| 矢 島 | 「豆腐の角に頭ぶつけて死ぬ」 |
| 紀 子 | 「――」 |
| 矢 島 | 「(笑って)局長が部長だった時の口癖でね。『こんな取材しか出来ないヤツは豆腐の角に頭ぶつけて死ね!』てね」 |
| 紀 子 | 「........」 |
| 矢 島 | 「........白石」 |
| 紀 子 | 「........はい」 |
| 矢 島 | 「........俺の報道は間違ってたのか?」 |
| 紀 子 | 「!」 |
| 矢 島 | 「........報道で人が救える。そう信じてた」 |
| 紀 子 | 「........」 |
| 矢 島 | 「救えない。それどころか不幸にするだけだ」 |
| 紀 子 | 「........」 |
| 矢 島 | 「15年前もそう、今もそうだ。俺が取材しなきゃ........ひとみの本当の親は、兄弟は死ななかった。会社に逆らわなかったら........相沢は自殺しなくて済んだ........」 |
| 紀 子 | 「........」 |
| 矢 島 | 「........」 |
| 紀 子 | 「........」 |
| 矢 島 | 「........行こうか」 |
| 紀 子 | 「! どこへ」 |
| 矢 島 | 「ホテル」 |
| 紀 子 | 「――」 |
| □ 同・表 | |
| 矢島と紀子、出てくる。 | |
| 矢島、フラつき、紀子に支えられる。 | |
| 紀 子 | 「........矢島さん、もう一度15年前の事件を調べましょう」 |
| 矢 島 | 「(フラフラ)........白石、よく見ると可愛い顔してるな」 |
| 紀 子 | 「矢島さん!」 |
| と、矢島を突き放す。 | |
| 矢島、ストンと尻餅をついてしまう。 | |
| 紀 子 | 「冗談じゃない! 矢島俊介ってその程度の男だったんですか!」 |
| 矢 島 | 「その通りだ」 |
| 紀 子 | 「よっく判りました。矢島さんは相沢部長と一緒に死んだんですよね」 |
| 矢 島 | 「........」 |
| 紀 子 | 「でも、責任だけは取って下さい」 |
| 矢 島 | 「責任?」 |
| 紀 子 | 「矢島さんが私を記者にしたんですよ! キャスターをクビにして! 現場の苦労も知らないで偉そうにコメントしてれば済んでたのに、寒風吹きすさぶ現場に引っ張り出されて! 怪我だってしました。全部矢島さんのせいです」 |
| 矢 島 | 「........」 |
| 紀 子 | 「そう、全部矢島さんのせい! 15年前のことだって! 警察が悪いんじゃない、検察が悪いんじゃない。容疑者の一人にすぎなかったのに、大川さんを犯人扱いして報道した矢島さんが悪い!」 |
| 紀子、怒りながら涙が溢れてくる。 | |
| 矢 島 | 「(も泣いて)........」 |
| 紀 子 | 「責任取って下さい! みんなを元に戻して下さい!」 |
| 矢 島 | 「........悪かった」 |
| 紀 子 | 「『ストレートニュース』、年内で打ち切られるんですよ!」 |
| 矢 島 | 「――!」 |
| 紀 子 | 「矢島さんは報道マンじゃないんですか」 |
| 矢 島 | 「........報道マン」 |
| 紀 子 | 「報道マンなら、明日、局に来て下さい」 |
| 矢 島 | 「ひとみが........」 |
| 紀 子 | 「矢島さんが付き添っていようといまいと、ひとみちゃんは死ぬ時は死ぬ、助かる時は助かります」 |
| 矢 島 | 「――」 |
| 紀子、去ってゆく。 | |
| 矢島、ポツリ、夜の道に残される。 | |
| 矢 島 | 「........」 |
| □ フラッシュ | |
| 矢 島 | 「報道の一番大切な目的は権力の監視だ。公人の本当の姿を知らせるためには、友情もルールも関係ないんだよ」 |
| × × | |
| 矢 島 | 「いいか、お前たちが感じたことがニュースなんだ。事実の羅列なんて“報道”じゃない、ただの“報告”だ」 |
| × × | |
| などなど、第一回からの矢島の“吠え”を見せて―― | |
| 最後に―― | |
| 相 沢 | 「いいか、お前はやり続けろ。バカみたいに正論言い続けろ」 |
| □ 元の路上 | |
| 矢 島 | 「――」 |
| □ タイトル | |
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