NAVI

●うちの子にかぎって........2 第十一回(1)

□ テレビ画面
森本キャスター「毎週このコーナーでは、先生たちの意外な素顔を紹介しています。校長先生の趣味といえば、すぐにゲートボールが思い浮かびますが、実はもう一つ、凝りに凝っているものがあるんです。これです」
画面、切り替わり――
益田校長が、エプロン姿で登場する。
益田校長「それは料理です。今日は夏バテしない元気な体を作る料理を紹介しましょう。栄養たっぷりの鯨のステーキです。みなさんもお母さんに作ってもらって下さい。メモの用意はいいですか?」
材料を書いた紙を見せ、作り方を説明し始める。
□ 吉祥寺本町小学校・五年三組の教室
給食を食べながらそのテレビを見ている子供たち。
麻由美「史恵ちゃんちの店にもあったわよね、鯨のステーキ」
史 恵「うちじゃ、1000円よ」
「ボロい商売やってるな」
史 恵「なに言ってるの、出血大サービス。鯨は高いんだから。ね、先生」
石橋先生「そうだなあ、もうすぐ食べられなくなるからな」
鈴木元「なんで?」
「知らないの? 捕鯨禁止になるんだよ」
「どうして?」
「アメリカなんかが言い出したんだ、鯨は知能の高い哺乳類だから殺すなって。食べたりしちゃ可哀相だ、って」
「え!? 鯨って魚じゃないの?」
石橋先生「おいおい、習ったはずたろ」
「常識だよ、鈴木」
「じ、冗談、冗談に決まってるじゃないか........」
子供たち、ワイワイ。
「でも、おかしいよな、なんで鯨だけ特別なんだよ」
「そうよ、牛とか豚、立場ないよな」
「あいつらは可哀相じゃないのか、って」
石橋先生「(苦笑して見ている)」
千枝子「鶏とか。一生懸命卵産んでも、みんな人間に食べられちゃうんだから」
「可哀相に........」
え? と、元を見る千枝子。
元、沈んだ顔でおかずを見ている。
「鯨も、牛も、豚も、鶏も........みんな可哀相だよな、俺たちのためにこんな姿になっちゃって........」
千枝子「........」
他の子供たちも、急にしんみりなってしまう。
「なんだか、食欲なくなっちゃった」
「........あたしも........」
みんな、食べるのをやめてしまう。
益田校長の声「ウン、うまい!」
テレビ画面――益田校長が自分の作った鯨のステーキを食べている。
恨めしげに見る子供たち。
石橋先生「(少し困って)おいおい、そんなこと言ってたら何も食べられないぞ。人間だって動物だ。他の動物を食べて生きるというのはしかたないことなんだ。........食べる目的以外のことで動物を殺すのはよくないと思うけど........」
石橋先生の話に頷く子供が多い。
「そうだな........」
「もう死んじゃってるんだもん、俺たちが食べなくても、豚さんが生き返るわけでもないし」
千枝子「........」
史 恵「食べてやらないと、逆に可哀相なんじゃない?」
麻由美「それは言える。せめてもの供養に」
と、おかずを食べる。
「ナンマイダ、ナンマイダ」
麻由美「食べなきゃソンソン!」
子供たち、いつものようにワイワイ食べ始めた。
石橋先生、苦笑している。
しかし、千枝子、食べられなくて........。
□ タイトル
番組データへ
(2)へ続く

(C)Copyright 1998 Kazuhiko Ban. All rights reserved.