| □ TBS |
| その、威風堂々たる社屋。 |
| テレビ玄関への坂を一台の黒塗りの乗用車が上ってゆく。 |
| □ 同・テレビ玄関〜廊下 |
| 入口の掲示板に新番組のポスターを貼っている若手番組宣伝部員たち。 |
| 先輩の宣伝部員・平川が怒鳴りつけている。 |
| 平 川 | 「バカ、曲がってるだろ、ポスター一枚もロクに貼れンのか、お前らは!」 |
| 玄関に横づけされる黒塗りの車。 |
| 運転手が扉を開け、降り立ったのは―― |
| 田村正和。コートを小粋に肩に引っ掛け、マフラーも決まっている。 |
| 田村に気づいた平川、満面笑みで飛んでくる。 |
| 平 川 | 「おはようございますッ、田村先生」 |
| 田 村 | 「先生はやめてくれないか」 |
| 平 川 | 「あ、失礼しました、田村、さん」 |
| 田村、平川を無視してテレビ玄関を入ってゆく。 |
| 平 川 | 「(揉み手でついてゆき)いやあ、田村さん、いつもビシッと決まってカッコいいですねえ」 |
| 田 村 | 「........」 |
| 平 川 | 「カッコいいと言えば、あれ、“子供が見てるでしょ!”の田村さん、ホント、カッコよかったァ、田村正和はああじゃなくちゃいけません、女にモテて、ハードボイルドで、メスを握れば日本一、いや、世界一!」 |
| 田 村 | 「(ジロッと見て)君、誰だっけ」 |
| 平 川 | 「あッ、失礼しました、番組宣伝部の平川です」 |
| 田 村 | 「ホントにあれ、よかったと思う?」 |
| 平 川 | 「思います思います」 |
| 田 村 | 「(無表情に歩いてゆく)」 |
| 平 川 | 「“子供が見てるでしょ!”のパート2なんて話、ないんですかね、是非やるべきだと思いますです、はい」 |
| 田 村 | 「........そお?」 |
| 平 川 | 「(田村の顔色を窺い)田村さんは女と絡まなくっちゃ、女と、“うちの子にかぎって........”でしたっけ? 子供相手の田村正和なんて面白くないですよね、ご本人もやっぱりそうなんじゃないですか? アハハハハ」 |
| 田 村 | 「(無表情)........」 |
| 平 川 | 「(笑いが続かず)で、今日はなんのお仕事で?」 |
| 田 村 | 「(ボソッと)リハーサル。“うちの子にかぎって........・スペシャル”」 |
| 平 川 | 「あ!?(一瞬絶句するが、すぐに揉み手を再開し)そうでしょ、やっぱりそうでしょ、あれは面白い、あの番組の田村さん最高ですよ、石橋先生、カッコよくないところが実にカッコよくって........田村さんって凄い役者だなあって思いましたよ、いつも女に囲まれてるだけじゃ、ただの二枚目ですもんね、いやあ、そうですか、また田村さんの石橋先生が見られるんだ、アハハハハ。失礼しましたーッ」 |
| と、Uターンしてゆく。 |
| 田村、我関せず、歩いてゆく。 |
| □ 同・リハーサル室・前 |
| “うちの子にかぎって........”のプロデューサー、ディレクター以下スタッフが田村を迎える。 |
| 「お早うございます!」 |
| 「おはよう」 |
| 田村、カッコよく扉を開ける。 |
| と、そこは―― |
| □ 吉祥寺本町小学校・五年三組の教室 |
| 田村、いや、石橋先生が入ってくる。 |
| 子供たち、騷ぎまくっている。 |
| 石橋先生 | 「おいおい、授業のチャイム鳴ってンだぞ、静かにしろ」 |
| 全然効目がない。好き勝手に騒いでいる子供たち。 |
| 石橋先生、出席簿でバシッと教卓を叩く。 |
| 石橋先生 | 「聞こえなかったか!」 |
| 一瞬シンとなる子供たち。しかし、それはまさに一瞬だけ。 |
| なんとか静かにさせようとする石橋先生。 |
| その必死の顔がSTOPして―― |
| □ タイトル |